第5回 地域医療と関西労災病院の役割

座談会メンバーの写真

平成20年11月公開
(※ 取材対象者及び内容は公開当時のものです)

前列右から奥院長 天野副院長
後列右からMSW岡本氏 地域医療室川田氏 在宅医療室阪元看護師長補佐

今回は『地域医療と関西労災病院(以下:関労)の役割』と題して、地域の医療提供のなかで関労がどのように連携して機能しているか、をテーマに座談会を開催しました。
病気になればまず開業医の先生方で診察を受け、大病が疑われたり急を要する場合は、より高度な医療を提供できる病院を紹介してもらい、専門的な診療を受けていただくことなります。
医療の質や安全性を高めるには、地域での効率的な医療提供が必要です。国が推し進める「医療機関の機能分化と連携の促進」は、それを具現化するためのものです。
今回の座談会はその流れを充分に理解していただくことを目的としています。

医療機関の連携と紹介システム

病院紹介システム図

医療の機能分化と地域での連携

――医療機関の機能分化がいわれます。具体的には・・・・・。

奥院長:

庭で:医療を受けられる患者さんの立場からすると、「かかりつけのあの先生に治してほしい」というような思いがあったりもします。ところが、医療が高度化してきたことにより、なかなか1つの医療機関だけでは対応できなくなってきました。そこで、国は1997年12月に医療法を改正。医療機関の機能分担を図ることで、各医療施設の特色や規模などにあわせて、適切かつ効率的な医療を提供できるよう制度を改めたわけです。

たとえば病気になったとき、患者さんはまず地域の開業医の先生方に診てもらいます。そこで、緊急の治療が必要とされたり重篤な症状の場合は、高度な医療設備を備え、多くの医療スタッフを抱えた大きな病院へ紹介状(または医療情報提供書)を書くことにより、そこで治療を受けることになります。

――紹介状のメリットは。

奥院長:

庭で紹介状があれば、病院に来られるまでの治療経過がわかります。そのため、同じような検査をあらためて実施する必要がなく、薬剤アレルギーなども事前に知ることができます。関労では開業医の先生を通して予約を取っていただくことで、待ち時間の短縮にもなります。
急性期病院()では緊急を要する治療を行い、その後はご自宅で療養いただくか、あるいは療養型の病院に転院いただいたり、開業医の先生のもとに戻っていただくことになります。いずれの場合でも、当院の治療経過を各医療施設に提供し、スムーズな連携体制をとることができます。
地域連携は患者さんにとってもメリットがあるのはもちろん、医療機関が効率的な医療を行ううえで極めて有効なものです。

急性疾患および慢性疾患急性増悪の治療または根治を目的とし、一定期間の集中的な医療の提供を行う病院をいいます。

地域からの患者さんの受け入れ体制

――紹介から来院までの具体的な流れは

川田:

庭で地域の開業医の先生方が患者さんを診断のうえ、紹介が必要だと判断された場合、まずはファクスによって関労の地域医療室に情報が入ります。その情報をもとに、事前にカルテを作ったり、来院の日程を調整します。来院日時が決まれば、各診療科の予約診療枠に予定を書き込むことになります。
急に飛び込みで来院いただいた場合は、各診療科で予約がすでに入っているケースが多く、待ち時間が長くなってしまいます。また、紹介状がない場合、健康保険法等に基づき、1,500円(消費税込み)を別途お支払いいただくことになります。

――関労では紹介制度はうまく機能していますか。

天野副院長:

庭でかなりうまく機能しています。80点といったところでしょうか。残りの20点は、患者さんにまだ充分この制度をご理解いただくための努力が足りない、という思いがあるからです。患者さんの容態や病状などによって、機能の異なる病院をうまく使い分けていただくのが、紹介制度の特徴です。患者さんを中心に考えた効率的な治療をめざし、国もそれを推奨しているわけです。この点を患者さんにもよりご理解いただく様、一層努めていきたいと思います。

加えて、地域の開業医の先生方との連携を図るため、2000年に「関労クラブ」を組織しました。勉強会などを通じて交流を深め、よりスムーズな連携が実現できるような体制づくりに努めています。
今後の課題としては、紹介制度をもっと活かすために、初診の段階で病状を的確に診断できる総合医としての専門家が必要でしょう。全国的にもまだまだ不足していますが、非常に重要な分野となるでしょう。

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