院内がん登録

院内がん登録とは、当院でがんの診断・治療をうけたすべての患者さんについて、がんの情報(部位、組織型など)、治療情報、予後情報を収集し登録する仕組みです。収集された情報を集計・解析することによって、がん診療の実態の把握・がん診療の質の向上、がん患者さんの支援などに役立てることができます。

当院は平成19(2007)年1月地域がん診療連携拠点病院に指定され、院内がん登録は必須事項となりました。平成19(2007)年分から「がん診療拠点病院 院内がん登録 標準登録様式」に則り登録を行っています。登録については、院内がん登録実務者研修を修了した診療情報管理士が複数で行っています。

平成28(2016)年1月から「がん登録等の推進に関する法律」が施行されました。平成28(2016)年診断の症例からは、この法律に基づき「院内がん登録」および「全国がん登録」を行ないます。

がん登録の目的と調査方法

調査の背景と目的

平成19年4月よりがん対策基本法が施行され、その定める、がん診療の均てん化を推進するために、国立がん研究センター2病院を含め、全国で平成19(2007)年288施設、平成27(2015)年では401施設のがん診療連携拠点病院が指定され、拡充されてきた。これらのがん診療連携拠点病院は、各都道府県および地域におけるがん診療の拠点となり、各種医療機関との有機的な連携を図る役割を持つと共に、院内がん登録の体制の整備を通じて施設の実態を把握し、さらに国レベルでのがん対策の進捗を評価するために、そのデータを国立がんセンターがん対策情報センターに提出することが指定要件として定められている。

調査の方法

1)収集範囲

登録の対象となる”がん”は、国際疾病分類-腫瘍学第3版(ICD-O-3)における形態コードが、2(上皮内癌)もしくは3(悪性、原発部位)のものである。 ただし、脳腫瘍に関しては、原則的に良性であっても登録対象とする。また、平成28年(2016年)診断の症例からは、卵巣の境界悪性腫瘍の一部と中枢神経系腫瘍(脊髄腫瘍)、消化管間質腫瘍も登録対象とする。

登録対象は登録を実施する施設での新規の診断症例、または他院で診断された初診症例(初発例・再発例を含む)である。これには治療を行わない経過観察例がふくまれる。セカンドオピニオンのみを目的とした初診に関しては登録対象とするかは各施設の判断に任されている。1腫瘍・1登録の原則に基づき、同一の患者に別のがん腫と判断されるがんが、同時または時間をあけて生じた場合は、複数の登録となる。逆に同じがんについて、当該施設で治療中に再発した症例については登録対象とはならない。同じ患者が同じがんで複数のがん診療連携拠点病院を受診した場合には、同じがんが重複して登録される可能性がある。全国集計のデータにおいては、匿名化後のデータであり重複の整理は行われていない。

2)収集方法

施設においては国立がん研究センターがん対策情報センターの実施する院内がん登録実務者・初級研修を修了した登録実務者の雇用が指定要件となっている。登録実務者は各がん症例を発生後約半年の時点で登録をおこなう。データの品質に関しては各施設内で送付前に国立がん研究センターがん対策情報センター院内がん登録室で配布する品質管理ツールを使ってデータ項目の矛盾の無いデータを提出している。

3)収集項目の内容

「がん診療連携拠点病院 院内がん登録 標準登録様式 登録項目とその定義 2006年度修正版」において定義された標準項目について収集した。項目の詳細について、以下に定義上注意が必要な項目について述べる。

治療前ステージ(臨床病期)

UICCの定めるステージング方法に基づき、何らかの治療が行われる以前につけられた病期を指す。わが国の臨床現場で通常使用される癌取扱い規約に基づくステージとは若干異なる部分がある。前医で治療がなされており、治療前のステージが不明の場合などは、「不明」に分類する。UICC TNM分類において、癌腫のみが分類の対象となっている場合、組織型が肉腫・カルチノイドなどの場合は、「対象外」に分類する。

治療の有無

院内がん登録において登録される治療は登録対象となったがんに対する初回治療である。初回治療とは、治療開始時点で計画された一連の治療のことであり、症状・治療の進行に従って後に追加された治療などは含まれない。以下の場合、初回治療は「なし」となる。

  • 当初経過観察が計画されて、病状が悪化したために治療が行われた場合
  • 他施設において、初回治療が計画され、他施設において治療開始後にその一部を当院で施行する場合
  • 腫瘍に影響のない鎮痛剤や制吐剤などの治療
  • 診断後4か月以上経過して、初回治療が開始された場合

また、初回治療として計画されていても、他院で施行したものは登録されず、登録施設で行われた治療のみが対象となる。

TNM分類とは

悪性腫瘍の病期分類に用いられる指標の1つです。国際的には国際対がん連合(UICC)によって定められたTNM分類があります。わが国においては、癌取扱い規約において定められたTNM分類による病期分類が行われています。

T 原発腫瘍の拡がりを表す
N 所属リンパ節への転移の有無と拡がりを表す
M 遠隔転移の有無を表す

 

院内がん登録とDPC様式1では、UICCのTNM分類を用いています。

院内がん登録情報の利用

国立がん研究センターが実施する全国集計へのデータ提供
兵庫県が実施する地域がん登録へのデータ提供(平成27(2015)年までの診断症例)
全国がん登録へのデータ提供(平成28(2016)年からの診断症例)
院内のがん患者の受療状況の把握
院内がん患者の生存率の算出、予後調査
病院の対がん医療活動の企画・評価の為の資料提供

追跡予後調査へのご協力のお願い

ページの先頭へ