冠動脈疾患に対するカテーテル治療~患者さんに応じたTRI・TFIの選択~

はじめに

本稿では冠動脈病変に対するカテーテル治療における穿刺部位について当院での方針をご紹介させて頂きます。

総大腿動脈アプローチと橈骨動脈アプローチ

狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患に対するカテーテル治療である経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention: PCI)は、ステントなどのデバイスの進歩に伴い年々その成績が向上しています。そのPCIのアプローチ法としては橈骨動脈アプローチ(trans-radial intervention: TRI)と総大腿動脈アプローチ(trans-femoral intervention: TFI)があります。TRIは止血が容易であることや術後の安静臥床が不必要という利点がある一方、使用できるカテーテルの太さが限られることや術後の一定の割合での橈骨動脈閉塞のリスクがあります。TFIは総大腿動脈の血管径が比較的大きいことより太いカテーテルを使用することができPCI自体の手技が容易になる半面、出血や血腫を起こしやすいという側面があります。また患者さんは術後数時間のベッド上安静が必要です。

大規模臨床試験での報告

TRIとTFIを比較した近年の報告では、PCIの成功率は同等であるものの出血などの血管合併症の頻度はTRIの方が少ないとする報告が散見されます。1-3 2011年のLancetに掲載された約7000名の急性冠症候群の症例をTRIとTFIに振り分けた無作為割り付けの多施設研究であるRIVAL試験1では、主要評価項目(死亡、心筋梗塞、脳梗塞、術後30日までの大出血の複合エンドポイント)ではTRIとTFIに2群間に差がなかったものの(3.7% versus 4.0%, P=0.50)、術後30日までの大血腫の頻度(1.2% versus 3.0%, P<0.0001)と処置が必要な仮性動脈瘤の頻度(0.2% versus 0.6%, P=0.006)は有意にTFIに多かったと報告されています。

当院での方針

上記大規模試験の結果も踏まえることは重要ですが、治療を合併症なく安全に終えることとより再狭窄を起こしにくい丁寧な治療を行うことが最も大切と考えます。ですので、TRI施行可能な症例はTRIで行い、緊急症例や複雑病変で太いカテーテルが必要と考えられる症例にはTFIを行っています。また慢性腎不全や維持血液透析の患者さんで橈骨動脈閉塞を避ける必要がある症例に対してもTFIを行っています。当院での最近のPCIにおけるTRIとTFIの施行割合は図1のようになります。

図1:TRIとTFIの施行割合

TRIの場合基本的には術後はTR bandという止血器具を用いて止血を行います。TR bandは圧迫用のバルーンに空気を注入することにより圧迫止血を行うことのできる止血器具です。術後数時間ずつ空気を抜き、術翌朝には完全に抜去します。出血がなければその術翌日に退院ができますので、予定された安定狭心症での入院の患者さんは2泊3日の入院期間となります(急性心筋梗塞の患者さんの場合は異なります)。

それに対してTFIの術後は総大腿動脈の血管に問題がなければAngioseal(アンギオシール)やExoseal(エクソシール)などの止血デバイスを用いて止血を行います。術後は4時間の絶対安静が必要です。それ以降は歩行可能となりますが、術後の出血のリスクを考慮し、術翌々日の退院となります。つまり入院期間は3泊4日となります(こちらも急性心筋梗塞の患者さんの場合は異なります)。

当院で施行しましたTRIとTFIのPCIを一例ずつ図2・3にお示しします。

図2:TRIで施行したPCIの一例

左回旋枝中間部の高度狭窄病変(白矢印)。病変長は長いが、比較的治療にシンプルに施行可能と考えられTRIで施行。ステント留置(白点線)にて良好な開大を得ることができた。入院期間は2泊3日であった。

図3:TFIで施行したPCIの一例

左前下行枝中間部からの慢性完全閉塞病変(白矢印)。右冠動脈からの側副血行路を介したPCIが必要となる可能性など治療の難易度は高いことが予想されたためTFIにてPCIを施行。左前下行枝から順行性にワイヤーを通すことができず、右冠動脈を介した逆行性アプローチにてワイヤークロスに成功した。その後ステント留置(白点線)にて良好な開大を得ることができた。入院期間は3泊4日であった。

最後に

患者さんの状態や病変の複雑さに応じてTRIかTFIの選択を行っております。患者さんに満足頂けるPCIを提供できるよう今後も励んで参ります。

参考文献

  1. Jolly SS, et al. Radial versus femoral access for coronary angiography and intervention in patients with acute coronary syndromes (RIVAL): a randomised, parallel group, multicentre trial. Lancet. 2011 ;377:1409-20.
  2. Mehta SR, et al. Effects of radial versus femoral artery access in patients with acute coronary syndromes with or without ST-segment elevation. J Am Coll Cardiol. 2012;60:2490-9.
  3. Romagnoli E, et al. Radial versus femoral randomized investigation in ST-segment elevation acute coronary syndrome: the RIFLE-STEACS (Radial Versus Femoral Randomized Investigation in ST-Elevation Acute Coronary Syndrome) study.J Am Coll Cardiol. 2012;60(24):2481-9.

本当に治療が必要な患者さんへのカテーテル治療

血管内イメージングデバイスの使用

高度石灰化病変に対するRotablatorを用いたカテーテル治療

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