認定看護師に聞く〜彼女たちの目指すところ〜

密着取材「ナースステーション」第2回でも取材した認定看護師。
関西労災病院に勤務する認定看護師3名と看護部長を交え、
兵庫県内でも多くの認定看護師が在籍する病院で、彼女たちが認定看護師を目指したきっかけや、悩み、
またリソースナースとしての役割と病院が目指す看護などについてお話していただきました。

【リソースナースとは】

常に変化する医療現場の最前線で働く看護師たちを専門知識や技能で支援する看護師です。

【認定看護師とは】

社団法人 日本看護協会より抜粋)

社団法人 日本看護協会認定看護師認定審査に合格し、ある特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を有することを認められた者をいい、次の各項の役割を果たす。

  • [実践]特定の看護分野において、個人、家族及び集団に対して、熟練した看護技術を用いて水準の高い看護を実践する。
  • [指導]特定の看護分野において、看護実践を通して看護者に対し指導を行う。
  • [相談]特定の看護分野において、看護者に対しコンサルテーションを行う。

※関西労災病院では、専門看護師、認定看護師が中心となりリソースナースとしての役割を果たしています。

プロフィール

布谷さん
・糖尿病看護認定看護師
・専門分野・・・糖尿病全般・フットケア
・所属勤務場所・・・内科病棟
弘岡さん
・がん化学療法看護認定看護師
・専門分野・・・がん化学療法
・所属勤務場所・・・外来中央処置センター
﨑園さん
・救急看護認定看護師
・専門分野・・・救急・災害
・所属勤務場所・・・ICU

認定看護師になったきっかけ

—–今日は、それぞれに専門分野をお持ちの認定看護師3名と看護部長にお集まりいただき、関西労災病院における「リソースナース」としてのお立場から、いろんなお話をお伺いしたいと思います。
皆さんは、看護師としては5年以上のキャリアをお持ちですが、「認定看護師の資格を取ろう」または「チャレンジしよう」と思われたきっかけはどのようなことでしたでしょうか?

﨑園:私は、救急で搬送されてきた患者さんや重症の患者さんを受け入れるICUで働いています。看護師になって数年たち、医師の指示どおりにしか動けない自分自身に対し、看護師も患者さんの状態をアセスメントし、根拠に基づいて、予測して動いていかなければならないと強く感じ始めていました。
もっと自分の知識も深めたいし、その必要があると思っていたときに、当時の師長と師長補佐からの勧めがあり、思い立ちました。

弘岡:以前は外科外来に勤務しており、必然的に化学療法を受ける患者さんと接する機会が大変多くなりました。ただ、外来での業務をつとめながらでは、患者さんへの指導に重きをおくことができなかったり、自身の知識を深めていくことに時間を割くことができなかったりするのが実情でした。
特にこの分野の情報・知識はどんどん変わっていきますし、患者さんがご自身で入手された”巷であふれている情報”に戸惑ったり混乱なさっている様子を見かけることがたびたびあり、看護師として自分にできることを問いかけていた折、当時の師長から資格の話を聞き、決心しました。

布谷:当時から糖尿病の患者さんに指導等をさせていただいておりましたが、私自身の持っている知識を患者さんの治療へより役立たせるために、「総合的に評価できるものさしのようなもの」がない不安を感じていました。そして、患者さんにケアや指導をしていく中で、「もっと他の方法や、良い評価方法を知りたい!もっと幅広いケア・指導方法の知識をつけたい!」という気持ちを持ち始めていた時に、師長からアドバイスを受け、チャレンジしました。

—–ありがとうございます。皆さんから共通して出てきた言葉の根底にあるのが「患者さんのために何ができるか」「患者さんへのより良いサービスのためにもっと知識を増やしたい」という気持ちであったことに感銘いたしました。

病院が求めるリソースナースとしての役割

—–皆さん共通していたのが、きっかけは「師長、師長補佐からのアドバイス」だったということですが、病院として看護師たちをどういう方向に導いていきたいか、また、認定看護師を取得していくことについてのお考えを、部長からお話していただけますか?

看護部長:現代は情報化社会といわれ、患者さんもご自身の病状についてたくさんの情報を手にされます。時には医療関係者以上に情報をお持ちの方もいらっしゃいます。そんな中で、患者さんに接する看護師がより専門的な知識を学習し、その人たちが核となって、他の看護師に情報を提供したり教育していくといった「リソースナースとしての機能を果たしていくことの重要性」を非常に強く感じております。実際のところ認定看護師を取得するために、多額の費用がかかることや6ヶ月間の不在期間ができてしまうという制約などもございますので、全ての希望者にチャンスを与えることはできないのが現状ではございます。しかしながら、病院としても看護部としても「目指したい」という意欲のあるナースには限られた制約の中で、できるだけのサポートはしていきたいと考えております。

リソースナースとしての課題

—–先ほどからのお話で、認定看護師には「指導的な役割」が求められているということが良くわかりましたが、日常業務に加えてリソースナースとしての役割を果たすことは、普通に考えても大変なことだと思います。
皆さんはそのバランスをどのように保っていらっしゃるのでしょうか?
苦労していることや課題と感じていることなどがあれば教えてください。

﨑園:実践力があってこそ初めて指導ができると考えているので、患者さんをケアする中で他の看護師の教育や相談に応えていくことが大切だと思っています。ただ、教育や相談に時間を割けば、患者さんから離れることが多くなり、またその逆もあります。「バランスを保つ」ということが大切だとわかっていながら、それを実行することはとても難しいことだと痛感しています。現在は所属師長に勤務時間帯の調整をしてもらい、患者さんに直接関わることのできる時間と、教育活動に必要な時間を確保する工夫もしています。でもまだまだ、課題は多いですね。

看護部長:そうですね。現場の看護師の業務を見ておりますと、「バランスを保つ」ことはとても大変なことだと思います。認定看護師でありながら、チームの一員という任務もございますので、なかなか割り切れないところはあるでしょう。課せられるものが多いのはやりがいもありますが、私たちが想像するよりも大変だと思います。
今後は、我々サイドが少しでもフォローし、助けになる体制のようなものを考えていく必要性を感じますね。

弘岡:そうしていただけると助かります!(笑)
患者さんへの直接ケアにも携わり、他の看護師の水準も高めていくということが求められていることをわかってやってきましたが、実際には専門的な仕事が自分に集中しているのが現状です。
他に、リソースナースの活用方法がまだ軌道にのっていない部分もあり、がん化学療法に関する知識や看護技術の底上げにいたっていないという懸念があります。院内教育の中で、それを実現していけるよう努力している最中です。

—–現場においてバランスをとっていくことは、本当に大変なことなのですね。患者さんに対してより良いサービスを提供しようとすればするほど、その大変さは増していくのでしょうね。弘岡さんが実現されようと努力されている「院内教育」という言葉に一筋の光を感じましたが、具体的にどういったことをされているのでしょうか?

弘岡:関西労災病院には「院内教育専門コース」という看護師を対象とした教育システムがありまして、ある分野の研修会を企画し、希望者が参加するというものです。
私の場合、認定看護師として行う教育は、そこでしていることが多いですね。

布谷:病棟内での患者さんへの直接ケアについては積極的に関わるようにしています。私の場合は糖尿病が専門ですので、「患者さんの生活」に対してより良い指導をしていくためには、外来でのサポートが大切だと考えているのですが、なかなか外来に行けないといった苦い思いもございます。
ただ外来には糖尿病療養指導士がいるので、その方の力を借りて、一緒に糖尿病の患者さんをサポートしていくよう取り組んでいます。
院内教育に関しては、なかなか思った通りに進まないことに頭を抱えているのですが、専門コースで患者教育を担当しておりますので、その中で「患者さんへの教育指導のあり方」などを指導しています。
今は、日々忙しくしている看護師たちが、「それでも行きたい」「皆が参加したい」と思うような研修会内容や情報提供方法などの工夫をしているところです。

—–今、3名の方々が抱えていらっしゃる問題点や課題などをお話していただきましたが、病院側としては、今後どのようにしていけば良いかといった、具体的な方策はございますか?

看護部長:大変かもしれませんが、業務と専門が一緒になっているからこそ、自分たちが勉強してきたことが皆に浸透し、実際に現場でどう動いているのかがわかる、という点では、やりがいを感じられる部分ではないかと思います。
しかしながら、より良い体制を作っていくためには、普段の業務と教育の部分をセパレートする、というのが現段階では、求められることだと認識しています。
将来的に、もっとリソースナースが増えてくれば、今問題となっていることも解決していくと思いますので、そのように努めてまいりたいと思います。

日々の勉強法、情報収集について

—–ところで、皆さんが他の看護師を指導・教育していくことはお伺いしてきましたが、皆さんご自身の勉強は、お忙しい中どのような方法でなさっているのですか?

﨑園:買う本ももちろん増えましたが、最新の情報を得るために文献を読んだり、専門領域の学会や他の病院での研修に参加したりしています。他には、認定看護師の資格取得期間中にできた横のつながりで、情報交換をしています。

弘岡:私も同じような感じですね。医師や薬剤師と話し合ったり、製薬会社の方から製品についての情報を頂いたり、それぞれの分野のプロフェッショナルと積極的に接することで、最新の情報を得るように心がけています。

—–皆さん、非常にタイトなスケジュールの中で共通しているのは、「積極的に知識を得る」という姿勢なのでしょうね。頭が下がります。これからも、関西労災病院がより良いサービスを患者さんに提供していけるようがんばっていただきたいです!

医療の質の向上を目指して

—–それでは次に、関西労災病院が目指す「医療の質の向上」に向けて、看護師というお立場から一言ずつお願いいたします。

﨑園:ICUは重症な患者さんに接することが多く、ご自身でどこが辛いのかを訴えることのできない患者さんも多い場所なだけに「患者さんの表情をよく観察し、判断し、応える」ということが求められます。そのため医師をはじめ、他の職種の方たちと連携をとり、看護師の立場から情報を提供しより良い治療につなげていくことが「医療の質の向上」につながるのではないかと考えます。また、患者さんだけでなく、患者さんを思う家族の方々への精神的な支えになることも重要な役割と考えています。

弘岡:私は治療を続ける患者さんの「生活の質」を向上してさしあげたいと常に思っています。
私の専門では、残念ながら悲しい結末を迎えられる患者さんもいらっしゃるわけですが、いつも患者さんご本人・ご家族の方々・ナース・医師と、それぞれの立場から見たそれぞれの「想いのバランス」が大切だと考えます。医師による治療が向かっている方向と、患者さんやご家族が望む方向のズレを埋めるのは、患者さんに一番近い存在であるナースの仕事だと思いますので、できるだけ患者さんが望んでいらっしゃる方向に近づけるお手伝いをしていきたいと思っています。

布谷:私が看護にあたって、大切にしたいと思っているのは、「その人の力を引き出すお手伝いをする」ということです。特に糖尿病の患者さんに関しては、ご自身の生活の中でやっていただくことがメインになりますので、患者さんの力によるところが大きいのです。それを幅広く多面的にサポートしていけるのがナースの仕事の醍醐味とさえ感じています。
もし「質の向上について」私の専門分野を通して考えを語るとすれば、患者さんの生活の質を考慮した疾患のケアをより高いレベルで行うことだと考えています。

看護の質の向上を目指して

—–最後に、病院全体の「看護の質の向上」というものに焦点を当てて、リソースナースのお立場からどういったことを目指していけばいいか、お考えをお聞かせください。

﨑園:「看護全体の質の向上」となりますと、1人の力では無理で、みんなの力が大切だと思います。そのために現在1人でも多くの職員が救急や災害に関心をもつよう教育活動にも積極的に取り組んでいます。私は救急・災害を専門としていますが、昨年のJR事故による人為災害や、各地で起こった自然災害などで、院内全体で災害に対する意識が高まってきているように感じています。現在、災害時に対応できるようにと様々なシミュレーション訓練を院内で企画・運営していますが、今後も自分の習得した知識や経験を職員へ提供し、頭で考えるだけではなく、実際に体を動かしながら体得してほしいと思います。
また私自身も知識や技術に磨きをかけ、根拠を持って伝えていくことができれば、「看護師全体の質」を高めていくことに貢献できるのではないかと考えています。

弘岡:自分自身の看護の質を上げようと思えば、「いろいろなことに疑問を持つ」ということが大切だと思います。医師が行う治療に対して、「なぜ?」という気持ちを持たない限り、自分の知識レベルを上げることはできないし、言われたことだけ言われたとおりにやることしかできなくなってしまうと思うんです。
看護師も他の医療従事者とディスカッションができるくらいに全体として質を上げてきたいですね。
そのための手段として、職種間で共通の言語を持つ、ということも必要ではないでしょうか。

布谷:私は、まず同じ職種のスタッフの知識やサービスの向上を目指したいですね。まずナースは、「生活全般をみている立場の人間である」という自覚を持つことが大切です。いろんな職種の方々とチームを組んで情報を共有し、ディスカッションをしながら、より良い方法を探っていく。そして、患者さんの一番身近にいて、患者さんの生活に携わっているナースがチーム全体をサポートしていく。そんな風にコメディカルの中でナースにしかできない全体の「架け橋」になることが求められているのではないでしょうか。
それぞれのコメディカルが持っている知識を共有し、影響しあって、患者さんに対して最適な看護や情報提供、または指導などが出来るんだと思いますね。
それが質の向上につながると考えています。

看護部長:現時点では、せっかくの個々の力が全体に還元しつくせていないことが問題点としてあげられますが、課題に取り組みながらそれを積み重ねていくことで、より良いシステムを作っていくことが必要ですね。ナースは患者さんに一番近い立場にいるからこそ、「なぜ?」と「気づき」そして「アクションを起こす」ことが大切です。時には患者さんの代弁者にもならなければならないこともあります。感性を高め、患者さんに対してプラスアルファの働きかけをすることで、コミュニケーション能力も高めていってほしいと思います。
常に向上心を持ち、「患者さんのために」という気持ちを忘れず、自己研磨していくスタッフを育てていきたいと思っております。

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