心不全に対するデバイス治療 – 関西ろうさい病院(兵庫県尼崎市)地域医療支援病院・がん診療連携拠点病院
独立行政法人 労働者健康安全機構 関西ろうさい病院循環器内科

心不全に対するデバイス治療

心不全に対するデバイス治療

概要

心臓デバイスとは?

心臓デバイスとは、心臓の動きを見守り、必要に応じて電気でサポートする医療機器です。
ペースメーカや植込み型除細動器(ICD)などがあり、胸の皮膚の下に小型の本体を植え込み、心臓の状態を24時間監視します。心拍が遅くなりすぎた場合や、危険な不整脈が起こった際には、自動的に作動し、心臓の働きを助けます。これらのデバイスは日常生活への影響が少なく、多くの方が安心して使用できるよう設計されています。

植込み型除細動器(ICD) (日本メドトロニック社より提供)

適応

突然死予防について

日本では、突然死の原因の約半分が心臓の病気によるものと報告されています。原因となる病気は、心筋梗塞・心筋症・遺伝性不整脈などさまざまですが、これらの病気による突然死を予防するために効果があるのが「植込み型除細動器(ICD)」です。ICD は致死性の不整脈(心室細動・心室頻拍)が起きたときに、心臓に電気刺激を与えて正常なリズムに戻す装置です。

治療

ICD には「一次予防」と「二次予防」があります

一次予防とは

「将来、致死性不整脈が起こるリスクの高い方に、突然死を未然に防ぐために行う治療」です。
以下のような場合に適応となります:

  • 心筋梗塞や虚血性心疾患があり、心臓のポンプ機能(LVEF)が低い
  • 十分な薬剤治療を行っているにも関わらず、心不全症状が続いている
  • 電気生理学的検査で、致死的な心室性不整脈が記録されている
  • 遺伝性不整脈(Brugada 症候群、QT 延長症候群 等)がある
二次予防とは

「過去に危険な心室性不整脈を起こしたことがある方の再発を予防する治療」です。
以下の場合が目安です:

  • 心室細動、持続性心室頻拍、心停止の既往がある
  • 心臓のポンプ機能が重度に低下している
  • 失神の既往歴があり、電気生理学的検査で危険な不整脈が誘発される

当院で行っている ICD の種類

当院では現在2種類の ICD を扱っています。
① 経静脈植込み型 ICD(TV-ICD)

植込み型除細動器(ICD) (日本メドトロニック社より提供)

特徴:

静脈からリード(細い電線)を心臓の中に入れて使用する、最も一般的なタイプです。

◇メリット

  • 徐脈に対するペースメーカ機能も備えている
  • 危険な不整脈が起きた際、電気ショックの前に「抗頻拍ペーシング(ATP)」で痛みの少ない治療が可能
     → 不快な電気的除細動を避けられる場合があります

◆デメリット

  • 血管内にリードを留置するため、リードのトラブル(脱落・閉塞)や感染のリスクがある
  • 感染が起きた場合、装置とリードの全抜去が必要となる
  • 本体が大きく、植込み部がやや目立ちやすい
②皮下植込み型ICD (S-ICD)

皮下植込み型除細動器(S-ICD) (© 2025 Boston Scientific Corporation. All rights reserved.)

特徴:

心臓の中にリード(電線)を入れず、皮下(皮膚の下)に本体とリードを留置するタイプの ICD です。血管を使わないため、より低侵襲で感染リスクが少ないのが特徴です。

◇メリット

  • リードを血管内に入れないため、リードトラブルが少ない
     (リード断線や血管閉塞などの合併症のリスクが低い)
  • 感染リスクが低く、安全性が高い
     特に、若年の方・長期間の使用が想定される方に適しています。
  • 心臓内に異物を入れないため、将来的な抜去が比較的容易
  • 心血管系の既存の問題(血管が細い・アクセス困難など)があっても植込み可能

◆デメリット

  • 徐脈(脈が遅い)に対するペーシング機能がない
     → 房室ブロックや高度徐脈を有する患者さんには使用できない
  • 抗頻拍ペーシング(ATP)ができない
     → TV-ICD で可能な「痛みの少ない頻拍停止治療」が使えない
     → 不整脈が起きた際、いきなり電気的除細動を行う場合がある
  • 本体が大きく、植込み部がやや目立つ場合がある
  • 体格が非常に小柄な方では適応が限られることがある

当院では患者さんに合わせた最適なデバイスを選択しています

当院では、患者さんの病気の種類、体格、日常生活、不整脈のタイプなどを総合的に判断し、TV-ICD と S-ICD のどちらがより安全で効果的かを個別に検討しています。
また、デバイス治療が必要となる患者さんを見落とさないよう、ガイドラインや最新の文献に基づき独自のスクリーニング基準を用いて評価を行っています。「必要な患者さんに、最適なデバイスを」提供することを目標に、日々診療に取り組んでいます。特に、致死性不整脈で入院された患者さんや、心臓の働きが低下して入院された患者さんには、一時的に 着脱型除細動器(WCD:ウェアラブル・カーディオバージョン・デフィブリレータ) を導入しています。心不全治療やアブレーション治療を進める間も突然死を予防し、その後、心機能の改善度を確認したうえでデバイス植込みの可否を慎重に判断しています。
デバイスとともに生きていく患者さんを最大限支援できるよう、当院では医師・看護師・臨床工学技士など多職種が連携し、長期的なフォローアップを行っています。

心不全とデバイス治療
~重症心不全治療に有効とされるCRT(心臓再同期療法)~

CRTとは?
CRTとは、心臓再同期療法(Cardiac Resynchronization Therapy)の略称です。重症心不全の患者さんの場合、両心室がいびつに動いている(同期不全:dyssynchrony)が認められることがあります。これに対し、ペースメーカを用いて心臓全体の動きを“同期”させることで、心不全症状の改善を目指すことを目的としています。CRTは通常の右房と右室に入れたペースメーカ(2本)のリードに加えて、左室にもリードを挿入し、右室と左室の二方向からペーシングを行うことで再同期を可能にしています。
CRTの種類

①CRT-P (心臓再同期療法用ペースメーカ)

通常のペースメーカと同様、ペーシング機能のみ有する機械になります。致死的不整脈の既往がなく、不整脈発症リスクが低い患者さんに適しています。

②CRT-D (両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器)

CRT-Pの機能に加えて、除細動機能も併せ持った機械になります。致死性不整脈の既往がある場合や、不整脈発症リスクが高い患者さんに適しています。

両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D) (日本メドトロニック社より提供)

CRTの適応となるのは?
CRTの適応となるのは、主に以下の場合です。

  • 十分な薬剤加療が行われているにも関わらず、心不全症状が残存している
  • 左室駆出率(LVEF:心臓のポンプ力の指標)≦35%
  • 洞調律で、治療可能な不整脈を有さない
  • 左脚ブロック(LBBB:心臓の電気の通り道の異常で、心室の動きがずれる状態)を認める

上記以外の場合にも、症例に応じてCRTの適応を慎重に判断し、植込みを行っています。近年では、LVEFの低下が軽度であっても(LVEF:40%程度)、早期からCRTを導入することで予後を改善できるとの報告も増えてきており、左脚ブロックを有する症例では積極的に導入を行っています。

CRT植込みにより期待できること
CRTを植え込むことで、同期不全が改善し左室駆出率(LVEF:心臓のポンプ力の指標)が改善するだけでなく、呼吸苦などの自覚症状を軽減したり、将来の心不全入院を減らしたりすることができるとされています。デバイスを植え込むことに対する不安は誰もが抱えるものですが、適切なタイミングでデバイスを導入することで、より生活の質(QOL:Quality of life)の高い人生を送ることができる可能性があります。薬剤加療のみでは十分な症状改善が得られない患者さんに対する選択肢の1つとなりますので、お困りの方はいつでもご相談ください。

患者さんへ

ICD、CRTによる治療を必要とする患者さんへ

生活上の注意

除細動機能を持つデバイスを植え込む場合、通常のペースメーカと同様の注意点に加えて、運転免許制限が生じることがあります。

◎ペースメーカ、CRT-P(除細動機能のないCRT)植込み後に失神既往のない場合
→運転に支障をきたすことが明らかな例を除き原則運転許可

◎ICD、CRT-D、S-ICDの新規植込み後
→一次予防、二次予防で制限期間が異なる (以下の表参照)

◎ICD電池交換、リード交換、リード追加後
→7日間の運転制限

除細動機能付きデバイス手技 自動車運転制限期間
新規植込み (一次予防) 7日
新規植込み (二次予防) 6か月
ICD適切作動後 (ATP含む) 3か月
ICD不適切作動後 意識障害がある場合は3か月
ICD交換後 7日
ICDリード交換・追加後 7日
遠隔モニタリングシステム
遠隔モニタリングシステムとは、ご自宅のベッドサイドなどに通信機器を設置していただき、就寝中などに通信機器と体内のペースメーカが自動的に通信を行う仕組みです。この通信により、電池の残り具合、不整脈の有無、リード(心臓につながる線)の状態など、ペースメーカのさまざまな情報が病院に送信されます。多くの機種では、患者さんご自身で操作していただく必要はありません。定期的に病院と通信を行うことで、外来受診の回数を減らすことができ、通院の負担軽減につながります。また、異常が早期に見つかった場合には、早めに対応できるという大きなメリットがあります。
当院では、この遠隔モニタリングシステムを積極的に活用し、医師・看護師・臨床工学技士などの多職種で連携しながら、患者さんの状態をより正確に把握しています。万一、早めの対応が必要な情報が病院に届いた場合には、お電話などで患者さんのご様子を確認し、必要に応じて早期受診やペースメーカのチェックを行っています。
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