心不全に対するデバイス治療
概要
心臓デバイスとは?
ペースメーカや植込み型除細動器(ICD)などがあり、胸の皮膚の下に小型の本体を植え込み、心臓の状態を24時間監視します。心拍が遅くなりすぎた場合や、危険な不整脈が起こった際には、自動的に作動し、心臓の働きを助けます。これらのデバイスは日常生活への影響が少なく、多くの方が安心して使用できるよう設計されています。


植込み型除細動器(ICD) (日本メドトロニック社より提供)
適応
突然死予防について
治療
ICD には「一次予防」と「二次予防」があります
一次予防とは
「将来、致死性不整脈が起こるリスクの高い方に、突然死を未然に防ぐために行う治療」です。
以下のような場合に適応となります:
- 心筋梗塞や虚血性心疾患があり、心臓のポンプ機能(LVEF)が低い
- 十分な薬剤治療を行っているにも関わらず、心不全症状が続いている
- 電気生理学的検査で、致死的な心室性不整脈が記録されている
- 遺伝性不整脈(Brugada 症候群、QT 延長症候群 等)がある
二次予防とは
「過去に危険な心室性不整脈を起こしたことがある方の再発を予防する治療」です。
以下の場合が目安です:
- 心室細動、持続性心室頻拍、心停止の既往がある
- 心臓のポンプ機能が重度に低下している
- 失神の既往歴があり、電気生理学的検査で危険な不整脈が誘発される
当院で行っている ICD の種類
① 経静脈植込み型 ICD(TV-ICD)


植込み型除細動器(ICD) (日本メドトロニック社より提供)
特徴:
静脈からリード(細い電線)を心臓の中に入れて使用する、最も一般的なタイプです。
◇メリット
- 徐脈に対するペースメーカ機能も備えている
- 危険な不整脈が起きた際、電気ショックの前に「抗頻拍ペーシング(ATP)」で痛みの少ない治療が可能
→ 不快な電気的除細動を避けられる場合があります
◆デメリット
- 血管内にリードを留置するため、リードのトラブル(脱落・閉塞)や感染のリスクがある
- 感染が起きた場合、装置とリードの全抜去が必要となる
- 本体が大きく、植込み部がやや目立ちやすい
②皮下植込み型ICD (S-ICD)


皮下植込み型除細動器(S-ICD) (© 2025 Boston Scientific Corporation. All rights reserved.)
特徴:
心臓の中にリード(電線)を入れず、皮下(皮膚の下)に本体とリードを留置するタイプの ICD です。血管を使わないため、より低侵襲で感染リスクが少ないのが特徴です。
◇メリット
- リードを血管内に入れないため、リードトラブルが少ない
(リード断線や血管閉塞などの合併症のリスクが低い) - 感染リスクが低く、安全性が高い
特に、若年の方・長期間の使用が想定される方に適しています。 - 心臓内に異物を入れないため、将来的な抜去が比較的容易
- 心血管系の既存の問題(血管が細い・アクセス困難など)があっても植込み可能
◆デメリット
- 徐脈(脈が遅い)に対するペーシング機能がない
→ 房室ブロックや高度徐脈を有する患者さんには使用できない - 抗頻拍ペーシング(ATP)ができない
→ TV-ICD で可能な「痛みの少ない頻拍停止治療」が使えない
→ 不整脈が起きた際、いきなり電気的除細動を行う場合がある - 本体が大きく、植込み部がやや目立つ場合がある
- 体格が非常に小柄な方では適応が限られることがある
当院では患者さんに合わせた最適なデバイスを選択しています
また、デバイス治療が必要となる患者さんを見落とさないよう、ガイドラインや最新の文献に基づき独自のスクリーニング基準を用いて評価を行っています。「必要な患者さんに、最適なデバイスを」提供することを目標に、日々診療に取り組んでいます。特に、致死性不整脈で入院された患者さんや、心臓の働きが低下して入院された患者さんには、一時的に 着脱型除細動器(WCD:ウェアラブル・カーディオバージョン・デフィブリレータ) を導入しています。心不全治療やアブレーション治療を進める間も突然死を予防し、その後、心機能の改善度を確認したうえでデバイス植込みの可否を慎重に判断しています。
デバイスとともに生きていく患者さんを最大限支援できるよう、当院では医師・看護師・臨床工学技士など多職種が連携し、長期的なフォローアップを行っています。
心不全とデバイス治療
~重症心不全治療に有効とされるCRT(心臓再同期療法)~
CRTとは?
CRTの種類
①CRT-P (心臓再同期療法用ペースメーカ)
通常のペースメーカと同様、ペーシング機能のみ有する機械になります。致死的不整脈の既往がなく、不整脈発症リスクが低い患者さんに適しています。
②CRT-D (両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器)
CRT-Pの機能に加えて、除細動機能も併せ持った機械になります。致死性不整脈の既往がある場合や、不整脈発症リスクが高い患者さんに適しています。


両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D) (日本メドトロニック社より提供)
CRTの適応となるのは?
- 十分な薬剤加療が行われているにも関わらず、心不全症状が残存している
- 左室駆出率(LVEF:心臓のポンプ力の指標)≦35%
- 洞調律で、治療可能な不整脈を有さない
- 左脚ブロック(LBBB:心臓の電気の通り道の異常で、心室の動きがずれる状態)を認める
上記以外の場合にも、症例に応じてCRTの適応を慎重に判断し、植込みを行っています。近年では、LVEFの低下が軽度であっても(LVEF:40%程度)、早期からCRTを導入することで予後を改善できるとの報告も増えてきており、左脚ブロックを有する症例では積極的に導入を行っています。
CRT植込みにより期待できること
患者さんへ
ICD、CRTによる治療を必要とする患者さんへ
生活上の注意
除細動機能を持つデバイスを植え込む場合、通常のペースメーカと同様の注意点に加えて、運転免許制限が生じることがあります。
◎ペースメーカ、CRT-P(除細動機能のないCRT)植込み後に失神既往のない場合
→運転に支障をきたすことが明らかな例を除き原則運転許可
◎ICD、CRT-D、S-ICDの新規植込み後
→一次予防、二次予防で制限期間が異なる (以下の表参照)
◎ICD電池交換、リード交換、リード追加後
→7日間の運転制限
| 除細動機能付きデバイス手技 | 自動車運転制限期間 |
|---|---|
| 新規植込み (一次予防) | 7日 |
| 新規植込み (二次予防) | 6か月 |
| ICD適切作動後 (ATP含む) | 3か月 |
| ICD不適切作動後 | 意識障害がある場合は3か月 |
| ICD交換後 | 7日 |
| ICDリード交換・追加後 | 7日 |
遠隔モニタリングシステム
当院では、この遠隔モニタリングシステムを積極的に活用し、医師・看護師・臨床工学技士などの多職種で連携しながら、患者さんの状態をより正確に把握しています。万一、早めの対応が必要な情報が病院に届いた場合には、お電話などで患者さんのご様子を確認し、必要に応じて早期受診やペースメーカのチェックを行っています。

