下肢閉塞性動脈硬化症 – 関西ろうさい病院(兵庫県尼崎市)地域医療支援病院・がん診療連携拠点病院
独立行政法人 労働者健康安全機構 関西ろうさい病院循環器内科

下肢閉塞性動脈硬化症

閉塞性動脈硬化症ってなんですか?

下肢閉塞性動脈硬化症は、足の動脈が細くなり血流が悪くなる病気

下肢閉塞性動脈硬化症は、年齢・タバコ・糖尿病・腎臓病(維持透析)により引き起こされる動脈硬化(血管の老化現象)が原因となって足への血液の通り道である動脈が細くなるために起こる病気です。
下肢閉塞性動脈硬化症について
どんな症状が出ますか?
ふくらはぎのこむら返りから治りにくい足の傷まで幅広く、動脈硬化を引き起こす病気(糖尿病、高血圧、維持透析などの腎臓病)をお持ちなら、その可能性は上がります!

病気が進行すると、下記のような症状が現れます。

  1. 歩いたら、足が痛い、重だるい、ふくらはぎがつっぱる、しびれる、でも休むと楽になる。
  2. 歩かなくても足が痛い、じんじんする、足が冷たい、痛みがあって寝られない、足を下に下げたら痛みが楽になる。
  3. 足に傷があってじゅくじゅくしている、赤く腫れている、黒くなっている。



 

悪くなったら足を切断しないといけないと聞いたのですが?
そうです。特に怖い足の状態は、傷にばい菌感染をしている状態、適切な治療を受けないと膝下もしくは膝上の大きな切断になる可能性があります。
下肢閉塞性動脈の最も病期が進んだ状態が、“壊疽(えそ)や潰瘍(かいよう)”です。このような状況は、ひとたび病状が悪くなり始めると、転がるようにどんどん悪化します。特に怖い状態は、“ばい菌感染を起こしている足”です。足の血の巡りが悪いに関わらず傷があり、そして足がなんとなく暖かい。これは足の中で炎症を起こしており、ばい菌がうじゃうじゃ増えている状況です。この状況が極めて危ない状況です。すぐに専門病院(関西労災病院)を受診してください。

 

症状ないのに血管に対して治療しなくてはいけないのですか??
症状がなければ原則治療の必要性はありません。しかし、糖尿病や腎臓病の方は、症状がなくてもある日突然足に傷ができることがありますので、足を毎日観察しましょう。
足に症状がなければ、血管を広げる治療は必要ありません。また他にご病気を持っていない人が、将来足の壊疽(黒くなって足の切断が必要になる状態)になる可能性は決して高くはありません。ただし、例外的に以下の3つのリスク (1. 糖尿病、 2. 腎臓病(透析)、 3. 歩いていない)をお持ちの場合、症状がない人が突然壊疽や潰瘍ができることがあります。リスクの高い方は症状がない場合でも、ご自身で足に傷ができていないかこまめにチェックすることが大切です。
足の血管が細いだけなのに 他の血管を調べないといけないのですか?
血管の老化(動脈硬化)は全身に起こります!足の血管に動脈硬化を認めた時点で全身血管(特に頭と心臓の血管が重要です!)も病気が進んでいると言っても過言ではありません。
下肢閉塞性動脈硬化症の患者さんの死因は、足の傷が原因でお亡くなりになるのではなく、心臓(心筋梗塞)か脳卒中(脳梗塞か脳出血)が主な原因です。知らず知らずのうちに心臓の血管が細くなっている(狭心症)ことも少なくありません。動いた時に息苦しいといった症状がある場合には、心臓の血管も調べる必要があります。
足の動脈の血流検査にはどんなものがありますか?
足の動脈の血流検査は、下肢血圧と血管エコー検査、負担が少なく血流評価ができます。
下肢動脈の血流検査には、ABI(Ankle brachial index: 足関節上腕血圧比)や血管エコー(超音波)、皮膚還流検査(SPP: Skin perfusion pressure)といった負担の少ない検査から、治療前に造影剤を使用したCT検査やカテーテルを用いた血管造影検査などがあります。カテーテル治療では造影剤の代わりに炭酸ガスでの造影検査・治療も可能です。他院で、腎臓が悪く造影剤を使ったカテーテル治療が無理と言われている方も、治療可能なことが多くあります。
最も一般的な検査はABIで、足と腕で血圧を測るだけの簡単な方法です。ABIが低下している場合は血管エコー検査やSPP検査で詳しく検査して診断します。
閉塞性動脈硬化症に対する治療ってどんなものがありますか?
治療は3本柱、1) 薬治療、2) 手術、3) リハビリテーション(運動療法)です。生涯にわたって大切です。
細くなった血管の治療には、内服薬、リハビリテーション、カテーテル治療、バイパス治療など、さまざまな種類があります。患者さんの病状(進行度)によって最適な治療は異なります。適切な治療時期をのがすと足を切断しなければならなくなる一方で、不必要な治療のせいで体に余計な負担がかかることは避けなくてはいけません。当院の経験豊富な専門医の診察を受けていただき、納得できる治療方法を選択していただけます。
薬治療
リハビリテーション
カテーテル治療
バイパス治療

カテーテル治療の動画

関西労災病院の下肢閉塞性動脈硬化症治療の特徴は何ですか?

関西労災病院は豊富なカテーテル治療実績がありますので、患者さんに自信を持って適切な治療を受けていただけます。お困りでしたらぜひ相談してください!

当院では、日本の中でも早期から下肢閉塞性動脈硬化性疾患に対するカテーテル治療の重要性を認識し、積極的に取り組んできました。現在でも多くのカテーテル治療を行い、また遠方からも困難な病状の患者さんのご紹介をいただいております。
カテーテル治療では造影剤の代わりに炭酸ガスでの造影検査・治療も可能です。他院で、腎臓が悪く造影剤を使ったカテーテル治療が無理と言われている方も、治療可能なことが多くあります。
また足の傷に対する治療では、循環器内科医、形成外科医、看護師や理学療法士など治療に関わる多くの業種で治療チームを作っており、患者さんの生活スタイルや希望に合わせた治療ゴールを設定し、ともに歩む医療を実践しています。他院で治療は難しいと言われた患者さんでも、必ず納得いただけるチーム医療をご提供させていただきます。

チーム医療

坐骨神経ブロック

当院では痛みの緩和にも力を入れております。カテーテル治療では風船型のカテーテルで血管を広げる際に痛みを生じます。治療前に坐骨神経(正座したときにしびれる神経)ブロック注射を行い、特に膝より先の領域の痛みを麻痺させることで、痛みを和らげることができます。当院のデータでは、従来は治療中に62%の患者さんで痛みを感じていましたが、坐骨神経ブロックを行った場合に痛みを感じた患者さんは24%と少なく、痛みを大きく緩和できていました(図)。また、足に傷があり毎日の処置(傷を洗う、軟膏を塗る)に痛みが強い患者さんには持続的に坐骨神経ブロックを行えるようタコ糸ほどのチューブを入れて、入院中の痛みを軽減することができます。
“患者さんを自分の家族だと思って治療する”をモットーに、カテーテル治療による血行の改善だけでなく、治療中・入院中の痛みを和らげる、患者さんに優しい治療をこれからも突き詰めてまいります。

当院でのカテーテル治療中の痛みに関する検討

「下肢閉塞性動脈硬化症」についてのよくある質問

Q1. どんな病気?

足の動脈が細く硬くなり、つまる病気

下肢閉塞性動脈硬化症とは、足の動脈が細く硬くなり、つまる病気です。 糖尿病、高血圧、たばこ、加齢、コレステロールなどが動脈硬化の原因となります。

Q2. なぜ治療が必要なの?

足に十分な血流が届かない≒酸欠

  • 歩くと足が痛い
  • 小さな傷なのに治らない

それでは、なぜ治療が必要なのでしょうか? 足に十分な血流が届かない状態は、いわば酸欠状態といえます。歩くと足が痛い、小さな傷なのに治らないなどの症状が出ます。 最初は痛みのみですが、傷ができ、広がると足を切断しなければいけなくなる場合があります。

Q3. どんな治療?

どんな治療があるのでしょうか? 薬やリハビリなどの保存的治療、局所麻酔で行うカテーテル治療、全身麻酔で行うバイパス手術があります。

保存的治療
カテーテル
バイパス手術

Q4. カテーテル治療って?

切らずに治す治療法

カテーテル治療とは、切らずに治す治療法です。動脈硬化で細くなった血管に細い針金を通し、バルーンという風船で広げたり、ステントという金網を置くことで、血管を広げ、血流を良くします。

バルーン (風船)
ステント (金網)

Q5. カテーテル治療と手術の違いは?

カテーテル治療と手術にはどんな違いがあるのでしょうか? カテーテル治療は局所麻酔で行い、入院期間は短く、体への負担は小さい治療です。一方、バイパス手術は入院が長く、体への負担が多きい一方で治療効果はより長持ちです。それぞれの治療に長所と短所があります。

横にスワイプできます
カテーテル治療 バイパス手術
入院期間 短い 長い
体への負担 小さい 大きい
治療効果 追加治療が必要なことも 長持ち

Q6. カテーテル治療の副作用は?

カテーテル治療に副作用はあるのでしょうか? 代表的なものとして、刺した箇所の血が止まらない出血、カテーテル治療で血管内のゴミを飛ばし、別の血管にごみが詰まる塞栓症、造影剤が腎臓の機能に負担をかけることで起こる腎臓の機能低下などが挙げられます。命や生活の質にかかわる重大な合併症は1%以下と言われています。

出血
刺した箇所の血が止まらない
塞栓症(脳梗塞)
カテーテル治療で血管内のゴミ(プラーク)を飛ばし、別の血管にゴミが詰まる
腎臓の機能低下
造影剤が腎臓に負担をかける

Q7. 関西労災でのカテーテル治療は?

  • 他院では治療困難な病変対する治療
  • 最新の機器を用いた治療
  • より速く、より安全な、患者さんに負担の少ない治療

関西労災病院では他院では治療困難な病変に対する治療、最新の機器を用いた治療を行うことで、より早く、より安全な患者さんに負担の少ない治療を目指しています。

Q8. 関西労災での治療成績は?

  • 2007-2020年まで累計5,000人以上の末梢動脈疾患患者さんの治療に携わってきました。
  • なかでも最重症型である「重症下肢虚血 」(安静時下肢痛・壊疽・潰瘍)に対しては、2007-2017年で 1,630 人の方に対して下肢カテーテル治療を実施
  • 1年での大切断回避率は 90.9 %

他院で大切断を勧められた方でも切断回避のため全力を尽くします。

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