下肢末梢動脈疾患 – 関西ろうさい病院(兵庫県尼崎市)地域医療支援病院・がん診療連携拠点病院
独立行政法人 労働者健康安全機構 関西ろうさい病院循環器内科

下肢末梢動脈疾患

概要

下肢末梢動脈疾患(LEAD)とは

LEAD(Lower Extremity Artery Disease)とは、主に下肢の動脈硬化による血管の狭窄・閉塞により、足への血流が低下する疾患群です。従来「末梢動脈疾患(Peripheral Artery Disease:PAD)」と呼ばれてきましたが、PADには頸動脈や腎動脈なども含まれるため、近年は下肢に限定したLEADという用語が使われます。

LEADは進行すると歩行障害や足の潰瘍・壊疽(えそ)を来たし、重症化した場合はCLTI(包括的高度慢性下肢虚血:Chronic Limb-Threatening Ischemia)と呼ばれます(1)。

CLTIは、以前の「重症下肢虚血(Critical Limb Ischemia:CLI)」という用語から発展した概念であり、従来のCLIは主に虚血のみに焦点を当てていました。しかし糖尿病や腎不全患者の増加に伴い、感染を合併する症例が増えたことから、虚血だけでなく他の因子も包括的に考慮する必要性が認識され、実臨床を反映して「CLTI(包括的高度慢性下肢虚血)」という用語が提唱されています。つまり、CLTIは虚血のみに留まらず、感染、組織欠損、神経障害など複数の因子を包括的に評価することの重要性を反映した概念なのです(1) (下図)。

なぜLEADが重要か?

LEADは下肢だけの病気ではなく、全身の動脈硬化の一部です。実際、LEAD患者さんは冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症)や脳梗塞を合併しやすいとされています。そのためLEADの存在は生命予後にも直結し、全身管理が必要となります。また最重症のCLTIでは下肢切断や死亡に至る率が非常に高く、「1年以内に約30%が下肢の大切断(膝での切断)、25%が死亡する」との報告があります(2)。この予後の悪さは末期がんに匹敵するとされ、LEADを早期発見・早期治療することが患者さんの生命と足を守る上で極めて重要です。

日本では高齢化に伴いLEAD患者さんも年々増えており、有病率は一般住民で約1~3%との調査もあります。特に慢性腎臓病や糖尿病を持つ方で多く、これらの患者さんの足をいかに守るかが重要課題になっています。

症状
典型的な症状

初期のLEADでは間欠性跛行(かんけつせいはこう)が代表的です。

少し歩くとふくらはぎの筋肉が痛んだり痺れたりして歩けなくなりますが、しばらく休むと痛みが和らいでまた歩けるようになる状態です。これは運動に血流が追いつかず筋肉が酸素不足になるためで、上り坂や早歩きで症状が強まりやすいのが特徴です。「年のせいで足がだるい」と見過ごされることもありますが、数百メートルの移動で足が痛くなる場合は要注意です。

病状が進行すると安静時にも足の先(主に足趾)が激しく痛む安静時疼痛が出現します。特に夜間や横になると痛みが強まり、足を垂らす(下げる)と多少楽になるのが特徴です。さらに進行すると足の指先やかかとに潰瘍(治りにくい傷)や壊疽(組織の死んだ状態)が生じます。

壊疽が起こると患部は黒く乾燥したり、感染を伴えばぐずぐずに皮膚が崩れて悪臭を放つこともあります。これらはCLTIの状態であり、一刻も早い専門治療が必要です。実際に専門医までの受診が遅れるほど、その後の経過が悪化するという報告もあります(3)。

症状が出にくいケース

すべてのLEAD患者が典型的な痛みを感じるわけではありません。

糖尿病による末梢神経障害がある方や、透析患者・高齢の方では痛覚が鈍くなり、重度の虚血でも痛みを自覚しにくいことがあります。そのため、「知らない間に足に潰瘍ができていた」「痛みはないのに足趾が黒くなっていた」というケースも少なくありません。実際、糖尿病や透析患者では間欠性跛行の時期を自覚しないまま突然足潰瘍や壊疽を発症することも報告されています(4)。このような方では感染が広がって初めて発熱や腫れで気付くこともあり、「足に痛みがない=大丈夫」ではない点に注意が必要です。特に足の感覚が鈍い方は毎日足を観察し、タコ・さかむけ・乾燥からのひび割れでも悪化しないよう早めに対処することが大切です。

未治療の場合の転帰

LEADを放置すると症状は徐々に進行する傾向があります。間欠性跛行の段階でも生活の質(QOL)は低下しますが、安静時疼痛や潰瘍に至ると日常生活動作(ADL)は著しく障害されます。

潰瘍から細菌感染を起こすと蜂窩織炎(皮膚や皮下組織の感染)、骨髄炎、さらには敗血症へ至る危険があります。重症感染や壊疽が進行すると、足を残すことはできずに下肢の大切断(膝下または膝上での切断手術)を余儀なくされることがあります。膝関節を残す膝下切断(BKA:Below-Knee Amputation)の方が義足で歩行しやすいため可能な限り膝下での切断を目指しますが、感染や虚血の範囲によっては膝上切断(AKA:Above-Knee Amputation)が必要になります。大切断に至ると術後のリハビリや義足装着にも長期の訓練が必要で、患者さんの精神的・肉体的負担は非常に大きくなります。

以上から「足の色が悪い」「足の傷がなかなか治らない」「歩くと足が痛む」といった症状があれば早めに血管専門医を受診することが重要です。特に安静時の足痛や足の指先の黒ずみ・ただれ、傷の悪臭、腫れや発熱は緊急サインであり、一刻を争います。

原因

主な原因は動脈硬化

LEADの圧倒的多数は動脈硬化によるものです。加齢とともに動脈の壁にコレステロールやカルシウムが沈着してプラークが形成され、血管内腔が狭くなります。その結果、足への血流が慢性的に不足して虚血症状を来します。典型的には徐々に進行していく慢性病変ですが、ときにプラークが破綻して血栓が急に詰まり、急性下肢動脈閉塞(血管が急激に詰まることで命にかかわる病気)を起こすこともあります。

なお末梢動脈疾患の原因として、頻度は低いものの膠原病(強皮症や関節リウマチなど)、血管炎(バージャー病、ANCA関連血管炎など)血管奇形(生まれつきの血管の異常)、膝窩動脈捕捉症候群(膝の筋肉の異常で血管が圧迫される病域)などの動脈硬化性以外の疾患も存在します。しかし日本では若年男性の喫煙者に多いバージャー病の頻度は低下傾向にあり、現在はほとんどの下肢虚血が動脈硬化症によるLEADです。本項目では動脈硬化性LEADについて説明します。

危険因子(リスクファクター)

LEADの危険因子は他の動脈硬化疾患と共通しており、喫煙、糖尿病、高血圧、脂質異常症(高コレステロール血症)、加齢などが主な要因です。

中でも喫煙は強力な危険因子で、非喫煙者に比べ発症率がおよそ3倍に達します。喫煙者は若い頃から血管内皮が障害され動脈硬化が加速するため、比較的若年で発症するLEAD患者の多くが喫煙歴を有します。

糖尿病も重要な危険因子で、糖尿病があるとLEAD発症の可能性は2~4倍に増加します。糖尿病では動脈硬化が進みやすいことに加え、細小血管(毛細血管)の障害や感染抵抗力の低下、神経障害による外傷の増加(痛みを感じにくいため)など複合的に重症化しやすい状態といえます。

慢性腎臓病もLEADの危険因子であり、特に透析患者さんでは高度な石灰化を伴う固い動脈硬化が全身に進行します。透析患者のLEAD合併率は一般の数倍にもなり、透析歴が長く糖尿病を有する患者さんほど下肢病変を起こしやすくなります。また透析患者さんでは動脈が石灰化でゴム管のように硬くなりやすいため、後述するABI検査が偽陰性(正常値に見える)となることも多い点に注意が必要です。

脂質異常症(高LDLコレステロール血症や低HDL血症)、高血圧、肥満、運動不足などもLEAD発症に関わります。

糖尿病・透析患者で重症化しやすい理由

前述の通り、糖尿病や透析患者さんではLEADが非常に重症化しやすくなります。糖尿病では中~細径の動脈(膝下の動脈)に多発するびまん性狭窄をきたしやすく、十分な側副血行(バイパスとなる血流の迂回路)が形成されにくいことが知られています。加えて細菌に対する免疫力低下や知覚鈍麻のため、軽微な傷から短期間で壊疽・感染が進行してしまう傾向があります。透析患者さんも同様で、全身の動脈硬化が極度に進展し足先まで石灰化病変が及ぶため、再建可能な血管が残らない「No-option CLTI(カテーテルやバイパスといった治療法が選択できない状態)」になる例が少なくありません。予防と早期発見が何より重要であり、日頃から足の観察とフットケアを徹底し、軽微な異常も見逃さないことが重症化予防の鍵となります。

検査

診断の流れ

LEADが疑われる場合、まずは触診と血圧測定によるスクリーニングを行います。
足の動脈の拍動(足背動脈や後脛骨動脈の脈)を触れることが重要です。脈が弱い・左右差がある場合や、足の皮膚が冷たい・色調が悪い(蒼白や紫色)などがあれば要注意です。

続いて、ABI(足関節上腕血圧比)という簡便な検査で下肢の血流を評価します。
ABIは両上腕と足関節の血圧を同時に測定し、その比(足関節の収縮期血圧÷上腕の収縮期血圧)を算出する検査です。
正常な人では足の血圧は腕よりやや高いためABI≒1.0~1.1程度ですが、動脈狭窄があると足への血圧低下が生じABIは低下します。ABIが0.90以下であれば下肢動脈狭窄の存在を強く疑われます(PADの診断基準値)。

一方、0.91~0.99は境界域、1.00~1.40が正常範囲です。注意すべきはABIが異常に高値になる例です。動脈が石灰化で硬くなると血圧計で十分に圧迫できず、ABIが1.40以上の異常高値を示すことがあります。
特に透析患者さんでは約1割にABI>1.3の偽正常例があるとの報告もあります。したがってABIが正常でも症状やリスク因子からLEADが疑わしい場合には他の検査を追加します。
具体的には、足趾の血圧や皮膚灌流圧(SPP)の測定、あるいは運動負荷後のABI再測定などで隠れた虚血を評価します。運動負荷ABIはトレッドミルなどで歩行直後にABIを測定する方法で、軽症LEADでは安静時ABI正常でも運動後に低下が確認されることがあります。

ABIの計測機器

皮膚灌流圧(SPP)

SPP(Skin Perfusion Pressure)は足の皮膚にどれだけ血液が流れているかを調べる検査です。足の皮膚に小さなカフ(血圧計)とセンサーを装着し、皮膚血流が止まる圧力を測定します。
SPPは創治癒(傷の治りやすさ)を予測する指標として有用で、SPPが30~40mmHg未満では創傷治癒は困難とされています。
例えば足の指先や足背でSPPが20mmHg台しかない場合、血行再建なしに潰瘍を治すのは極めて難しい状態です。
逆にSPPが十分高く(例えば50mmHg以上)小さな傷であれば適切な創処置で治癒が期待できます。ただしSPPは測定条件や皮膚状態に影響されるため、他の検査結果と合わせて総合的に判断します。SPPは特にABIが信頼できない石灰化例や、創治癒予測の目的で用いられます。

SPPの計測機器

画像検査

下肢血管の状態を可視化するには血管画像検査が必要です。
まずは超音波検査(エコー)が負担が少なく簡便な第一選択の検査です。
下肢動脈エコー(カラードプラエコー)では血管の狭窄部位や血流速度をリアルタイムに評価できます。侵襲がなくベッドサイドで繰り返し検査できるため、LEADの発見から術後の経過観察まで幅広く用いられています。
ただし高度石灰化で描出困難な場合や、長区間の多発病変ではエコーでは全体像を把握しづらいことがあります。その場合はCTアンギオ(造影CT)MRアンギオ(MRIでの非侵襲的血管造影)が有用です。

造影CTは血管の3D像を高解像度で得られ、手術・カテーテル治療の詳細な計画に適しています。ただしヨード造影剤の使用により腎障害のリスクがあるため、腎機能の悪い患者では慎重な適応判断が必要です。

MRアンギオ(磁気共鳴血管造影)は放射線被ばくがなく、造影剤も使用しないため、腎機能低下例でも比較的安全に検査可能です。

一方でMRAは撮像に時間がかかり身体を動かすと鮮明な画像が得られない、石灰化描出が不得手といった短所もあります。

下肢動脈エコー
MRA 画像

最終的な血行再建戦略を立てる段階では、カテーテル血管造影(DSA:Digital Subtraction Angiography)が行われます。
DSAは足の動脈に細いカテーテルを挿入し、造影剤を直接流してX線透視下に撮影する検査です。鮮明な血管像が得られ、微細な側副血行路まで評価できる点で画像診断の王道と言えます。
また、検査と同時にカテーテル治療(バルーン拡張やステント留置)を行える利点があります。
反面、局所麻酔下とはいえ侵襲を伴う検査であり、穿刺部の合併症(血腫や仮性動脈瘤)や造影剤による腎障害・アレルギーのリスクがあります。腎機能が悪い方では造影剤量を極力減らした撮影や、二酸化炭素ガスによる造影(CO₂血管造影)を組み合わせることもあります。

いずれにせよDSAは治療方針を決定する最終検査であり、バイパス手術かカテーテル治療か、あるいは切断を検討すべきかといった判断材料となります。

DSAの画像

他臓器のスクリーニング

LEADと診断された場合、全身の動脈硬化チェックも不可欠です。
具体的には虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)や心不全の有無、頸動脈狭窄、大動脈瘤、腎動脈狭窄などの合併を調べます。
とりわけ冠動脈病変の合併頻度は高く、症状がなくても心電図や心エコー、必要に応じ負荷試験や冠動脈CTなどで評価します。
動脈超音波で高度狭窄が見つかれば脳卒中予防の観点で治療を検討します。

これら全身検索は患者さんの予後を左右するため重要です。「LEAD患者を診たら他の心血管疾患もチェック」が鉄則です。
加えて、糖尿病や腎機能、貧血のコントロール状況も確認し、総合的な治療計画を立てます。LEADは全身病として捉え、足だけでなく全身を診る姿勢が大切です。

治療

治療の目的

LEAD治療の基本目標は、「足を温存し、歩行能力と生活の質を維持し、生命予後を改善する」ことです。
症状の軽減(跛行改善や安静時痛の緩和)、潰瘍の治癒、そして何より下肢の救肢(切断回避)が中心となります。
同時にLEADは全身動脈硬化のひとつであるため、心筋梗塞や脳卒中の予防も治療の重要な目標です。
患者さん個々の年齢やADL、併存疾患に応じて何を優先すべきかを判断し、総合的な治療プランを立てます。
例えば、比較的若年で活動的な患者さんでは可能な限り侵襲的治療を行ってでも救肢を目指すべきですが、終末期に近い高齢患者さんでは無理な治療より疼痛緩和と機能的切断で生活の質確保を優先するといった判断も必要になります。治療ゴールを患者さんと共有し、多職種で支えることが大切です。

全身管理と薬物療法

LEAD治療では内科的治療が土台となります。具体的には生活習慣の管理と、薬物治療です。

まず禁煙は必須で、喫煙者にはあらゆる支援を講じて禁煙していただきます。

次に脂質管理です。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)はLEAD患者に必ず投与すべき薬の一つで、心血管イベント抑制と生命予後改善効果が証明されています。国内ガイドラインではLDLコレステロール120mg/dL以上の場合スタチン治療を推奨し、まずはLDL-C 120mg/dL未満を目標としています。欧米ではより厳格にLDL-C 55mg/dL未満への低下を推奨する指針(5)もあり、高リスクな症例では必要に応じてエゼチミブやPCSK9阻害薬の併用も検討します。

高血圧に関しても降圧目標は130/80mmHg未満として管理を行います。高血圧をもつLEAD患者さんへのレニン・アンジオテンシン系阻害薬の投与が心血管イベントリスクを低減したという研究結果もあります。

糖尿病では血糖コントロールを強化し、さらにはGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬の使用も考慮します。

抗血小板薬・抗凝固薬による抗血栓療法も重要です。アスピリンクロピドグレルといった抗血小板薬は、症候性LEAD患者さんの心筋梗塞・脳卒中予防のため生涯継続すべきと国内外ガイドラインで推奨されています。抗血小板薬は末梢血行再建術後の閉塞予防にも有用であり、原則1剤(単剤療法)を長期投与します。
なお、心房細動など心原性塞栓のリスクがある場合は、抗凝固療法(ワルファリンやDOAC)を優先します。
近年、低用量リバーロキサバン(DOAC)+低用量アスピリン併用療法(Dual Pathway療法)がLEAD患者で心血管イベントと下肢切断リスクを減らすことが報告され(6)、CLTI患者でも適応が検討されます。ただし出血リスクも増大するため、患者ごとに慎重な判断が必要です。

内科的治療には他にも、血管拡張薬や運動療法、栄養管理、感染予防など多岐にわたります。運動療法は間欠性跛行の患者で特に重要で、歩行トレーニングにより疼痛耐容距離が延長し側副血行路の発達も期待できます。ガイドラインでは監視下運動療法(スーパーバイズドエクササイズ)を強く推奨しています。CLTI患者でも術後のリハビリや筋力維持に運動は欠かせません。CLTIの患者さんは足に潰瘍があるため潰瘍への負荷をフットウェア使用で軽減した上でのリハビリを行います。

栄養状態の改善も創治癒には必須で、低アルブミン血症や貧血があれば補正を行います。

感染対策としては、潰瘍部の積極的な洗浄と必要に応じた抗生物質の全身投与を行います。
糖尿病患者では足の白癬(水虫)治療や爪のケアも感染予防に重要です。

以上のように、LEAD治療は実際のカテーテル治療を含む血行再建以前に内科的治療が行き届いていることで初めてスタート地点に立てます。危険因子管理や薬物療法なくして血行再建の成功はありません。患者さんの全身状態と下肢の虚血、症状とのバランスを見極め、最適な治療組み合わせを提案します。

血行再建(カテーテル治療 vs バイパス手術)

足の血管が高度に狭窄・閉塞している場合、血行再建術による血流改善を検討します。
血行再建には主にカテーテルによる血管内治療(EVT:Endovascular Therapy)外科的バイパス手術の2つの方法があります。それぞれ利点・欠点が異なるため、病変部位の解剖や重症度、患者さんの全身状態を踏まえて最適な手技を選択します。

血管内治療(EVT)

足の付け根や腕の動脈から細いカテーテル(筒)を挿入し、狭窄や閉塞を内側から拡げる治療です。具体的には風船(バルーン)による拡張術やステント留置、アテレクトミー(石灰化プラークの切削)などの手技があります。

EVTの最大の利点は低侵襲で患者負担が少ないことです。局所麻酔で済み、高齢者や他の疾患によりリスクの高い方でも施行しやすく、手術と比べ入院期間も短縮できます。また複数の病変に一度にアプローチでき、再狭窄しても繰り返し治療しやすいという柔軟性もあります。
近年は医療機器の進歩により、大動脈~骨盤部の太い血管から膝下の細い動脈までEVTで治療可能となりました。特に大動脈-腸骨動脈領域の閉塞にはEVTが第一選択であり、高い初回成功率と良好な長期開存成績が報告されています(7)。

一方、EVTの欠点は長期にわたっての開存維持が難しいことです。ステントなどを留置しても年月とともに再び詰まる危険があり、バイパスに比べ長期開存率は劣る場合があります。
特に膝下動脈(下腿動脈)では血管径が細いためEVT後の再狭窄率が高く(8)、ガイドラインでもCLTI症例を除き膝下へのEVT適応は慎重に検討すべきとされています。

EVTは負担が少ない治療ですが、トラブル(合併症)を来してしまうリスクも認識する必要があります。
合併症としては、血管穿孔(血管を傷つけて穴が開いて出血する)や急性血栓塞栓(血管の中のプラークが飛んで脳梗塞や足の虚血悪化を招く)が挙げられますが、技術の標準化や医療機器の進歩により安全性は年々向上しています。

近年、薬剤コーティングバルーン(DCB)薬剤溶出ステント(DES)の登場で再狭窄率の低減が期待されます(9-11)。
ただし、DCBに関しては一部研究で使用後の長期死亡リスク懸念(12, 13)も報告され、現在はガイドライン上慎重な使用が推奨されています。総じてEVTは患者負担が小さい反面、病変によっては限界もある治療です。適切な術式選択と術後のフ経過観察が成功の鍵となります。

カテーテル治療の術前後
DCB(薬剤コーティングバルーン)
DES(薬剤溶出ステント)
アテレクトミーデバイス

バイパス手術

狭窄・閉塞部位を迂回するように新たな血流路を外科的に作る手術です。
患者さん自身の静脈グラフト(多くは大伏在静脈)や人工血管(ゴアテックスなど)を用いて、上流の健常動脈と下流の動脈を直接つなぎます。
例えば、太ももの動脈が詰まっている場合、足の付け根の動脈から膝下の動脈にバイパスを通す、といった具合です。

バイパス術の利点は長い病変でも一度に血行再建でき、開通持続性(長期開存率)に優れる点です。特に良質な自家静脈(一般的に平均の静脈径2.5-3.0mm以上)を使用したバイパスは成績が良いことが報告されています(14)。ガイドラインでも、膝下の細い動脈に対する血行再建は2年以上の寿命が見込まれ良好な自家静脈がある場合にはバイパス術を第一選択とするとされています(15)。

一方、バイパスの欠点侵襲が大きいことです。大腿部や下腿の長い切開が必要で基本的に全身麻酔下の手術となるため、高齢の方や重篤な心肺疾患がある方にはリスクが高くなります。また術後に創部の感染や治癒不良を起こす危険も伴います。術前には冠動脈疾患の評価や全身状態の最適化を図り、周術期管理を万全にする必要があります。

なお総大腿動脈(足の付け根)の病変に関しては、カテーテル治療では再狭窄が多いため内膜摘除術という外科手術が第一選択となります。バイパス手術よりも負担が少なく、鼠径部の傷のみで動脈内のプラークを直接削り取る手術で、長期的に再発が少なく非常に有効です(16)。

以上、EVTとバイパスはいずれも一長一短であり、患者さんの血管状態によって最適な組み合わせを考えます。当院ではEVTで一部を治療し残りをバイパスもしくは内膜摘除術を行うハイブリッド治療も行われます。「この領域は必ず手術」「ここはカテーテル」と一概に決めつけず、個々の症例に応じて血行再建戦略をオーダーメイドすることが求められます。

バイパス手術

創傷の治療と足の切断

CLTIでは血行再建のみならず創部(傷や壊疽した部分)の適切な治療が不可欠です。
虚血による潰瘍や壊疽は血流改善だけでは治癒しない場合が多く、外科的なデブリードマン(創の悪い部分を除去すること)が必要となります。
同時に創部の細菌培養を行い、有効な抗菌薬を十分量投与して感染を制御します。壊死が趾(足の指)のみに限局していれば趾切断(部分切断)して早期に感染源を取り除きます。切断創はきちんと縫合閉鎖できる場合もありますが、創周囲の皮膚や軟部組織の状態によってはあえて開放創(創を縫い合わせない)のまま管理し、閉鎖陰圧療法(NPWT)を行うこともあります。NPWTは創部にスポンジと吸引チューブを当て陰圧をかけることで肉芽(傷が治るための組織)増生を促し治癒を早める方法です。
当院では形成外科と連携し、その後の植皮術を含めて管理を行います。

特に重要なのは足病変治療に対して職種チームで取り組むことです。
循環器内科・血管外科による血行再建だけでなく、形成外科による創傷管理リハビリ科義肢装具士による装具作成など、各分野の専門家が協力して初めてCLTI患者の足を救うことができます(17)。

創傷治療では「どのタイミングで血行再建すべきか」「いつ切断すべきか」の判断が難しく、血管の状態と創の状態を熟知したメンバーが議論して方針を決定します。
どうしても感染制御が困難な場合や、血行再建が技術的に不可能な場合には下肢の大切断(ふくらはぎもしくは太ももでの切断)も選択肢に入ります。
切断となった場合でも、ゴールはあくまで「その人らしく生活できること」にあります。切断後は早期からリハビリを開始し、義足の作成・装着訓練、日常生活動作指導、心理的サポートまで包括的に行います。
場合によっては在宅改修や介護サービス導入も検討し、切断後も患者さんが望む生活を営めるよう支援することを目標に取り組んでいます。
旧来、切断は治療の失敗と捉えられてきましたが、切断の後も患者さんの人生は続いていきます。
常に患者さんと目標を共有し、「足を残すこと」だけが目的ではない、患者さん本人の望み・実際の生活を考慮した治療選択を行います。

補助療法

血行再建や創処置と並行して、CLTIの予後改善を目的とした種々の補助療法も行われています。
日本で特徴的なのはLDLコレステロール・フィブリノゲン吸着療法(LDLアフェレシス)です。この治療は、血液中のLDLコレステロールとフィブリノゲンを除去することで血液粘度(ねばねば度合い)が低下して末梢循環が改善することが期待され、CLTI症例に応用されています。
近年、国内で「レオカーナ(Rheocarna®)」という新規医療機器が承認され、血行再建術が上手くいかなかったもしくは十分では無かったCLTI患者さんに対する潰瘍治療目的で保険適用となりました。レオカーナは透析装置を用いて週2回程度のペースで施行し、1クール24回の治療で創治癒促進を図ります。まだ新しい治療法ですが、透析患者さんを中心にかかりつけの透析クリニックでも行うことが出来ることが最大の利点であり、まだ報告は限られますが、小規模研究では改善例も報告されており(18)、今後の発展に期待が寄せられています。ただし、あくまでも補助療法であり、まずは確立された治療(血行再建+創傷治癒+全身管理)を尽くすことが原則です。

関西労災病院の特徴

関西労災病院は豊富なカテーテル治療実績がありますので、患者さんに自信を持って適切な治療を受けていただけます。お困りでしたらぜひ相談してください!

当院では、日本の中でも早期から下肢閉塞性動脈硬化性疾患に対するカテーテル治療の重要性を認識し、積極的に取り組んできました。現在でも多くのカテーテル治療を行い、また遠方からも困難な病状の患者さんのご紹介をいただいております。
カテーテル治療では造影剤の代わりに炭酸ガスでの造影検査・治療も可能です。他院で、腎臓が悪く造影剤を使ったカテーテル治療が無理と言われている方も、治療可能なことが多くあります。
また足の傷に対する治療では、循環器内科医、形成外科医、看護師や理学療法士など治療に関わる多くの業種で治療チームを作っており、患者さんの生活スタイルや希望に合わせた治療ゴールを設定し、ともに歩む医療を実践しています。他院で治療は難しいと言われた患者さんでも、必ず納得いただけるチーム医療をご提供させていただきます。

チーム医療

急性下肢動脈閉塞に対する新しい治療法
-インディゴシステムのご紹介-

「急性下肢動脈閉塞」は、動脈硬化がゆっくり進行して起こる「下肢閉塞性動脈硬化症」とは異なり、突然下肢に血液が流れなくなり、急激な虚血(血流不足)が起こる疾患です。この疾患では、放置すると下肢の機能が失われたり、生命にも危険が及ぶことがあります。症状としては、突然始まる足の痛みや冷感、しびれ、力が入らない感覚などが挙げられ、重症になると壊疽(組織が死んでしまう状態)に至ることもあります。このため、早急に血流を回復させる治療(血行再建)が非常に重要です。
治療方法には、カテーテルを使った治療と外科手術があります。患者さんの状態や全身の健康状態、他の病気の有無を考慮しながら、循環器内科と心臓血管外科が連携して最適な方法を選択します。

当院では、新しいカテーテル治療デバイス「インディゴシステム」を導入しています。このシステムは、特殊なカテーテルと持続的な吸引ポンプを用いて、血栓(血管を詰まらせている血の塊)を効率的に取り除くことができます。カテーテルのサイズが豊富で、小さな血栓から広範囲にわたる血栓まで対応できるのが特徴です。さらに、外科手術と異なり切開を伴わないため、体への負担が少なく、入院期間を短縮できる可能性があります。

当院では、急性下肢動脈閉塞に対する治療を迅速かつ適切に提供できる体制を整えております。何か気になる症状がございましたら、早めにご相談ください。

カテーテル治療デバイス「インディゴシステム」
カテーテル治療デバイス「インディゴシステム」 

Akhilesh K et al. JACC Cardiovasc Interv. 2021; 14: 319-329.から引用

より低侵襲な下肢血管内治療
-手首からの橈骨動脈アプローチ-

心臓の血管内治療では、従来の足の付け根(大腿動脈)からのアプローチに加え、手首(橈骨動脈)からの治療が主流になっています。実は下肢の血管においても、腸骨動脈や浅大腿動脈近位部の狭窄・閉塞に対しては、手首から治療が可能なケースがあります。
手首からの治療(橈骨動脈アプローチ)の最大のメリットは、治療後に長時間ベッドで安静にする必要がないことです。その結果、入院期間の短縮が期待でき、大腿動脈アプローチでは通常「翌々日退院」となるところ、橈骨動脈アプローチでは「翌日退院」も可能になります。
下の画像は、実際に橈骨動脈アプローチを用いて腸骨動脈の狭窄を治療した際の血管造影写真です。当院では、より体への負担を減らし、早期退院を目指すため、症状や病変部位に応じて橈骨動脈アプローチを選択肢の一つとして積極的に取り入れています。

左手首から治療を行った右外腸骨動脈狭窄病変
左手首から治療を行った右外腸骨動脈狭窄病変(左:治療前 右:治療後)

再狭窄・再閉塞に対する新たな下肢血管内治療
-エキシマレーザーのご紹介-

下肢動脈へのカテーテル治療は、患者さんへの負担が少ないため多くの動脈硬化疾患による狭窄や閉塞に施行されています。しかし、残念ながらある一定数の再発(再び血管が細くなってしまうこと)が起こってしまうのも事実です。これまでは、ステント留置後に再発した場合、カテーテルで再治療を行うにはもう一度風船で拡張するかステントを再度留置するしかありませんでした。

当院では、ステントの再狭窄あるいは再閉塞に有効とされるエキシマレーザーカテーテルを導入しており、これは専用装置により得られたレーザ光を、狭窄あるいは閉塞した部位に伝送し、細くなっている組織を蒸散させ、血管を再開通させるものです。
再発で治療が難しいと言われている患者さんも、一度、当科外来にご相談ください。

エキシマレーザー
左:エキシマレーザー治療中のイメージ 右:エキシマレーザ血管形成装置

造影剤を使用しない下肢血管内治療
–炭酸ガス造影による治療–

血管内治療では、造影剤を使用して血管の状態を確認しながら、バルーンやステントを使って狭くなった血管を広げることで血流を改善します。しかし、造影剤は一部の患者さんには副作用やリスクが伴う場合があります。

主なリスク
・アレルギー反応(発疹、かゆみ、まれに重篤なショック)
・腎機能への影響(腎臓の弱い方は注意が必要)
・一時的な副作用(吐き気、めまいなど)

当院では、患者さんの健康状態を事前に確認し、リスクを最小限に抑えた安全な検査・治療を行っていますが、上記のリスクが高い患者さんには、炭酸ガス造影などの代替方法もご提案可能です。
炭酸ガス造影は、通常の造影剤の代わりに炭酸ガス(CO₂)を使用し、血管の状態を確認します。特に腎機能が低下している方や造影剤アレルギーのある方でも安全に検査を受けられるのが大きなメリットです。

坐骨神経ブロック

当院では痛みの緩和にも力を入れております。カテーテル治療では風船型のカテーテルで血管を広げる際に痛みを生じます。治療前に坐骨神経(正座したときにしびれる神経)ブロック注射を行い、特に膝より先の領域の痛みを麻痺させることで、痛みを和らげることができます。当院のデータでは、従来は治療中に62%の患者さんで痛みを感じていましたが、坐骨神経ブロックを行った場合に痛みを感じた患者さんは24%と少なく、痛みを大きく緩和できていました(図)。また、足に傷があり毎日の処置(傷を洗う、軟膏を塗る)に痛みが強い患者さんには持続的に坐骨神経ブロックを行えるようタコ糸ほどのチューブを入れて、入院中の痛みを軽減することができます。
“患者さんを自分の家族だと思って治療する”をモットーに、カテーテル治療による血行の改善だけでなく、治療中・入院中の痛みを和らげる、患者さんに優しい治療をこれからも突き詰めてまいります。

当院でのカテーテル治療中の痛みに関する検討

再発予防

血行再建後の経過観察

LEADは治療して終わりではなく、生涯にわたるフォローアップが必要です。
血行再建術後は定期的に通院し、症状の再発や反対側肢の発症がないか経過観察します。カテーテル治療後のステントやバルーン拡張部は再狭窄しやすいため、術後も定期的にABIやエコー検査を行って再発してないかをチェックします。症状がなくてもABIが再び低下してくれば再狭窄の疑いがあり、慎重なフォローが必要です。

バイパス術後も同様に、グラフト閉塞が起きていないか定期的なエコー検査が推奨されています。早期に発見できればカテーテルでグラフト内の狭窄を広げることも可能です。
特に一年目は再狭窄が多い時期なので注意深く経過を追います。
全身管理についても一生涯継続します。スタチン(コレステロールの薬)や抗血小板薬(血をサラサラにする薬)は途中で中断しないよう内服を続け、血圧・血糖・体重の管理もかかりつけ医と連携して行います。
また、患者さん自身にも「いつもと違う足の痛みや色の変化」に気付いたらすぐ受診するよう指導します。反対側の足も油断はできません。片側の足のLEAD患者さんは数年以内に高率で反対側の足にも発症すると言われています。
また、LEAD患者さんは脳心血管病も再発しやすいため、そちらの二次予防(リハビリや脳卒中予防策)も包括的に続けていきます。

フットケアと創傷予防

LEAD患者では足のケア(フットケア)が再発予防の重要な柱です。特に糖尿病を合併する場合は専門的フットケア指導を強化します。
具体的には毎日の足の観察(足裏・趾間も含めて傷や水虫がないか見る)、足の清潔保持(毎日洗って十分に保湿・乾燥させる)、深爪や巻き爪を避ける適切な爪切り、胼胝・魚の目のケアなどです。靴にも注意が必要で、サイズの合わない靴や底の硬い靴は足に潰瘍を生じることがあります。足趾変形(外反母趾や槌趾など)のある方には装具士の協力を得て足底装具(インソール)を作成したり、当たりの少ない靴を選んだりしてもらいます。透析患者では軽微な靴ずれから壊疽に至ることもあるため、万一傷ができてしまった場合は自己判断で市販薬を使ったりせず、早めに専門外来を受診してもらいます。傷が悪化する前に処置すれば入院や手術を防げるケースもあり、早期対応が結果的に患者さんの負担軽減につながります。

インソール写真

フットケア外来の役割

当院ではフットケア認定看護師らによるフットケア外来を設置し、ハイリスク患者さんの足を継続的に管理しています。
フットケア外来では足爪のケア、胼胝削り、保湿指導に加え、足の血流評価や感覚検査も行います。これにより「足の異変の早期発見」「患者さん自身のセルフケア向上」を図っています。
例えば、靴選びのアドバイスや生活上の留意点(ストーブやカイロ、電気毛布などで低温熱傷を負わない等)の指導も重要です。患者さん・ご家族と二人三脚で足病変の再発防止に努めます。
特に透析施設との連携を密にし、足に異常を認めた際は速やかに当科へ紹介いただく体制を整えています。
再発予防は職種や病院・診療所の垣根を超えて患者さんを支えることが肝要であり、当院でも医師・看護師・リハビリ・義肢装具士・地域連携室が一体となって患者さんの下肢救済をバックアップしています。

Q&A

Q1. どんな病気?

足の動脈が細く硬くなり、つまる病気

下肢閉塞性動脈硬化症とは、足の動脈が細く硬くなり、つまる病気です。 糖尿病、高血圧、たばこ、加齢、コレステロールなどが動脈硬化の原因となります。

Q2. なぜ治療が必要なの?

足に十分な血流が届かない≒酸欠

  • 歩くと足が痛い
  • 小さな傷なのに治らない

それでは、なぜ治療が必要なのでしょうか? 足に十分な血流が届かない状態は、いわば酸欠状態といえます。歩くと足が痛い、小さな傷なのに治らないなどの症状が出ます。 最初は痛みのみですが、傷ができ、広がると足を切断しなければいけなくなる場合があります。

Q3. どんな治療?

どんな治療があるのでしょうか? 薬やリハビリなどの保存的治療、局所麻酔で行うカテーテル治療、全身麻酔で行うバイパス手術があります。

保存的治療
カテーテル
バイパス手術

Q4. カテーテル治療って?

切らずに治す治療法

カテーテル治療とは、切らずに治す治療法です。動脈硬化で細くなった血管に細い針金を通し、バルーンという風船で広げたり、ステントという金網を置くことで、血管を広げ、血流を良くします。

バルーン (風船)
ステント (金網)

Q5. カテーテル治療と手術の違いは?

カテーテル治療と手術にはどんな違いがあるのでしょうか? カテーテル治療は局所麻酔で行い、入院期間は短く、体への負担は小さい治療です。一方、バイパス手術は入院が長く、体への負担が多きい一方で治療効果はより長持ちです。それぞれの治療に長所と短所があります。

横にスワイプできます
カテーテル治療 バイパス手術
入院期間 短い 長い
体への負担 小さい 大きい
治療効果 追加治療が必要なことも 長持ち

Q6. カテーテル治療の副作用は?

カテーテル治療に副作用はあるのでしょうか? 代表的なものとして、刺した箇所の血が止まらない出血、カテーテル治療で血管内のゴミを飛ばし、別の血管にごみが詰まる塞栓症、造影剤が腎臓の機能に負担をかけることで起こる腎臓の機能低下などが挙げられます。命や生活の質にかかわる重大な合併症は1%以下と言われています。

出血
刺した箇所の血が止まらない
塞栓症(脳梗塞)
カテーテル治療で血管内のゴミ(プラーク)を飛ばし、別の血管にゴミが詰まる
腎臓の機能低下
造影剤が腎臓に負担をかける

Q7. 関西労災でのカテーテル治療は?

  • 他院では治療困難な病変対する治療
  • 最新の機器を用いた治療
  • より速く、より安全な、患者さんに負担の少ない治療

関西労災病院では他院では治療困難な病変に対する治療、最新の機器を用いた治療を行うことで、より早く、より安全な患者さんに負担の少ない治療を目指しています。

Q8. 関西労災での治療成績は?

  • 2007-2020年まで累計5,000人以上の末梢動脈疾患患者さんの治療に携わってきました。
  • なかでも最重症型である「重症下肢虚血 」(安静時下肢痛・壊疽・潰瘍)に対しては、2007-2017年で 1,630 人の方に対して下肢カテーテル治療を実施
  • 1年での大切断回避率は 90.9 %

他院で大切断を勧められた方でも切断回避のため全力を尽くします。

医師の方へ

当院での治療の特色

関西労災病院では、循環器内科・心臓血管外科・形成外科・リハビリテーション科が緊密に連携し、下肢末梢動脈疾患(LEAD)から重症虚血肢(CLTI)まで包括的に対応できる体制を整えています。
当院の特徴は以下の3点に集約されます。

血行再建のエキスパートチーム

まず、血行再建のエキスパートチームです。循環器内科のカテーテル専門医と心臓血管外科医が在籍し、患者さん一人ひとりの血管病変に最適な治療法を合同で検討します。
豊富な症例経験を持つスタッフが最新のデバイス・手技を駆使し、難易度の高い長節病変や石灰化病変にも適切な治療戦略で対応します。また、術前から双方の科が垣根なくに協力し、合併症リスクの高い症例でも安全に治療を完遂できるよう努めています。

形成外科を中心としたフットケアチーム

次に、形成外科を中心としたフットケアチームの存在があります。形成外科医が創傷処置のプランニングに参画し、必要ならば局所皮弁や遊離皮膚移植など高度な創閉鎖術を提供します。
創傷・足病変管理に精通した看護師や理学療法士、糖尿病専門医もチームに加わり、創面コントロールから全身状態の調整まで一貫してサポートします。
「血流」と「創傷」の双方に目配りできるチームアプローチにより、難治性潰瘍の治癒促進と下肢切断回避を追求します。
当院のフットケアチームは院内のみならず地域の透析クリニックや訪問看護とも連携し、入院から退院後まで切れ目なく患者さんの足を見守ります。

リハビリテーションと生活支援まで見据えた包括的ケア

最後に、リハビリテーションと生活支援まで見据えた包括的ケアです。
血行再建や創傷治療がゴールではなく、その先の「自分の足で歩ける生活」を取り戻すまでが治療と考えています。リハビリ科専門医と理学療法士が早期から介入し、歩行訓練や筋力強化、適切なフットウェアの作製調整を行います。さらに医療ソーシャルワーカーが住宅改修や介護サービス導入を調整し、退院後も安心して暮らせる環境整備を支援します。LEAD治療において社会的要因(SDOH:Social Determinants of Health、下図(19)より引用)は重要であり、当院では患者さんの経済状況や家族サポート体制にも配慮し、継続できる治療計画を一緒に考えます。
「患者さん一人ひとりの人生に寄り添ったゴール設定」を心がけ、医学的な最適解と患者さんの価値観のバランスを大切に、患者さん一人一人に寄り添った治療を提供しています。

以上のように、関西労災病院では多職種チームによる包括的な下肢救済医療を提供しています。LEAD/CLTI患者さんの生命と足のQOLを守るため、私たちスタッフ一同が一丸となってサポートいたします。他院で治療困難と言われた症例でも是非ご相談ください。地域の先生方とも連携し、患者さんにとって最善の治療・ケアを追求してまいります。

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