大動脈瘤って何ですか?
身体の中で一番太い血管が、部分的に瘤のように大きくなる病気です。
胸部大動脈瘤であれば、「食べ物が飲み込みにくい」、「声が出しにくい、声がかすれる」などの症状が出ることがあります。
腹部大動脈瘤であれば、「お腹の表面から脈打つ瘤に触れる」ことがあります。
受診されるきっかけとしては、ほかの病気を精査される際に偶発的にみつかるケースや、健康診断で撮影されるレントゲンで診断されることもあります。無症状の方が多い一方で、胸部大動脈瘤が拡大してくると、「食べ物が飲み込みにくい」、「声が出しにくい、声がかすれる」などの症状が現れることもあります。また、腹部大動脈瘤の場合は、大きくなるとお腹の表面から脈打つ瘤に触れることができ、気づいて発見に至ることもあります。
まずは超音波検査を受けてみましょう。
大動脈瘤を患っている可能性が高くなるのは、
- 65歳以上の男性
- 65歳以上の喫煙女性
- 第一度近親者に家族歴を有する者
とされています。このような方は、腹部超音波検査によるスクリーニングが推奨されており、疑わしい場合にはCT撮影による精密検査を考慮する必要があります。
また、破裂と関係の深いものとしては、女性、喫煙、高血圧、肺気腫、家族歴が挙げられています。
手術の方法は、開腹下人工血管置換術とステントグラフト内挿術があります。双方ともに、メリット・デメリットがありますので、いずれの治療法にするかは専門医とよく相談して決定してください。
ステントグラフト治療について
特徴と方法
ステントグラフト治療は、手術時間が短く身体にかかる負担が少ないため、高齢の方にとっても日常生活の質を落とすことなくできる体に優しい治療法です。
ステントグラフト治療は、腹部ではお腹を切らずに、胸部では肋骨を切らずに治療でき、患者さんにとっては体に優しい治療法と言えます。所要時間も短いので、身体にかかる負担が少ないのが特徴で、早期に社会復帰することが容易となり、特に高齢の方にとっては今までできていた日常生活の質を落とさずに退院できる治療です。
具体的には、人工血管にステントといわれるバネ状の金属を取り付けた新型の人工血管で、これを圧縮して細い鞘の中に収納して使用します。両足の付け根の動脈より、皮膚を切開することなくカテーテルを挿入し治療を行います。ステントグラフトが収納されたカテーテルを動脈内に挿入して、動脈瘤のある部位まで運んだところで、収納されているステントグラフトを折り畳み傘のように展開します。
展開されたステントグラフトは、金属バネの力と患者さん自身の血圧によって拡がり血管壁に張り付くので、外科手術のように直接縫いつけなくても自然に固定されます。大動脈瘤は切除されず残りますが、ステントグラフトにより蓋をされることで動脈瘤への血流が無くなり、次第に小さくなる傾向がみられます。たとえ瘤が縮小しなくても、拡大を防止することで破裂の危険性がなくなります。
入院や手術の概要
入院期間 | 6-8日間 |
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手術時間 | 1-2時間 |
麻酔方法 | 全身麻酔 |
安静期間 | 手術当日はベッドで安静に過ごしていただきます。 術式にもよりますが、翌日からは院内での行動に制限ありません。 また、退院後から仕事に復帰いただけます。 |
手術の痕 | 両足の付け根に5mm程度の傷口ができますが、見た目にはわからないです。(下図) |
実際の症例
腹部大動脈瘤に対してステントグラフト治療を行った症例
ご年齢や胃がんに対する開腹手術歴があること、CT画像での解剖学的な条件より、ステントグラフト内挿術による治療が望ましいと判断のうえ施行しました。術後経過は良好で、翌日より歩行・食事を再開し、入院4日目には退院されました。現在も手術前術後の定期診察・検査に外来へ通院されておられ、動脈瘤は縮小し、順調に経過しています。
胸部大動脈瘤に対してチムニー法併用しステントグラフト治療を行った症例
そこで、予め頚部バイパス (右腋窩-左腋窩-左頸動脈) を行ったうえで、図2のように大動脈ステントグラフト本体に並走する形で、総頚動脈へもステントグラフトを挿入し、脳還流を確保する術式であるチムニー法を併用したステントグラフト内挿術を施行しました。この術式の場合、頚部バイパスは体表の手術となるため開胸は不要となり、標準術式と比較して各段に侵襲が低くなります。この低侵襲治療により短時間での治療が可能であり、手術室にて術後抜管に成功、早期のリハビリテーションも可能となり、約2週間の入院で元気に独歩退院されました。
- 中枢側接合部を上行大動脈に置かず、開胸を要さない。
- 上行大動脈にLandingを置くことで、中枢側のLanding長を十分とることが可能となる。
傍腎動脈腹部大動脈瘤に対してチムニー法併用しステントグラフト治療を行った症例
胸腹部大動脈瘤に対してチムニー法併用しステントグラフト治療を行った症例
当院の診療体制
当院は日本ステントグラフト実施基準管理委員会による施設認定を受けており、動脈瘤ステントグラフト指導医資格を有する医師が複数名在籍しています。さらには、循環器内科・心臓血管外科での合同カンファレンスで診療科の垣根を越えた議論を行い、手術症例・問題症例について日々検討しております。これらカンファレンスや検査結果の内容をもとに、担当医より治療方針について説明させていただき、患者さんと相談のうえ治療方針を決定させていただいております。