経カテーテル的大動脈弁置換術開始

当院では循環器内科、心臓血管外科、麻酔科、コメディカルが一体となったハートチームを形成し、2018年2月より経カテーテル的大動脈弁置換術を開始しています。この治療は重症の大動脈弁狭窄症があるものの、ご高齢の方や他のご病気などの兼ね合いで胸を開いて行う手術を受けることができない患者さんにとって非常に画期的な治療法です。

大動脈弁狭窄症とは?

心臓は酸素や栄養を運ぶ動脈血を体中のすみずみまで送り、それにより脳をはじめとした全ての臓器の機能が保たれています。全身に血液を送り出すのは左心室というラグビーボールを半分にしたような筋肉の袋であり、これが収縮して大動脈を介して全身に血液を送っています。大動脈弁は、左心室と大動脈の間にある一方通行の扉(=弁)であり、この大動脈弁が、動脈硬化などが原因で固くなり十分に開かなくなると扉が狭くなって(=狭窄して)しまい、左心室が全身に血液を送り出すのに毎回大変な労力を要するようになります。この状態を『大動脈弁狭窄症』といいます。狭窄がひどくなると息切れや動悸などの心不全症状が出現し、更に重症化すると失神してしまいます。症状を伴う重症大動脈弁狭窄症は手術が必要となる疾患です。症状がでれば、平均余命は心不全で2年、失神で3年、狭心痛で5年といわれ、突然死を生じることもあります。

大動脈弁狭窄症の治療方法

大動脈弁狭窄症に対する治療法には

  1. 保存的治療(薬による治療)
  2. 外科的大動脈弁置換術(全身麻酔下で心臓を一時停止させて人工弁に取り換える開胸手術)
  3. 経カテーテル的大動脈弁置換術(カテーテルと呼ばれる医療用の管を使って人工弁に取り換える治療法)

の3つがあります。大動脈弁狭窄症に対する治療法は症状の進行度合いによって変わってきます。症状が軽い場合や狭窄度が軽度~中等度の場合は薬による保存的治療が選択されます。これは心不全に伴う症状を和らげることや、進行を遅らせることを目的としており、狭窄した弁の根本的改善を目的とした治療ではありません。悪くなった弁は薬で元通りに治すことはできないため、重症の狭窄に対する治療法は外科的もしくは経カテーテル的に弁を取り換えることが必要となります。

外科的大動脈弁置換術は術後の長期成績も確立しており、現在日本における第一選択の治療法です。外科的大動脈弁置換術は、人工心肺装置という一時的に心臓と肺の役割をする装置を装着し、心臓を一時停止させて行う手術です。これは、医学の進歩した現在でも、手術による侵襲(体への負担)が少なくなく、ご高齢(80歳以上)の方や他のご病気(肺疾患や悪性腫瘍など)をお持ちで体力の低下した方では手術のリスクが高くなります。手術が必要な重症大動脈弁狭窄症にも関わらず、リスクが高いために外科手術が不可能と判断されてしまう方が、少なくとも40%存在すると報告されています。これまではそのような方に対してはやむを得ず保存的治療を行うことしかできませんでした。そこで登場したのが3つ目の治療「経カテーテル的大動脈弁置換術」です。

経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)

上記のように外科手術が必要でもリスクが高いために手術が受けられない方のために、カテーテルを使って大動脈弁を人工弁に取り換える方法が、2002年にフランスで考案されました。これを経カテーテル的皮大動脈弁置換術(TAVI タビ)と言います。胸を大きく切開せずに済み、人工心肺装置も不要なため、体への負担が少ないというメリットがあります。日本でも2013年10月よりTAVIが保険適用となり、現在のところ良好な成績を収められております。TAVIを安全かつ有効に普及させることを目的としたTAVI関連学会協議会により、ハートチーム体制の整った実施施設基準を満たした医療機関でのみ、TAVIを行うことが厳格に義務付けられております。当院も心臓血管外科と循環器内科でハートチームを形成し、2017年11月にTAVI関連学会協議会より認定施設として承認され、2018年2月よりTAVIを開始しています。80歳以上のご高齢の方や、体力が低下した方へも安全に治療が行えるようになり、今後、より多くの患者さんへ治療することが可能となりました。

TAVIのアプローチ方法

TAVIには、足の付け根から挿入する「経大腿アプローチ」と、左胸の肋骨の間を小さく切開し、心臓の先端(心尖部)から挿入する「経心尖アプローチ」があり、当院ではハートチームの医師が話し合って、患者さんに最適な方法を選択しています。

当院では以前より、様々な疾患の治療をハートチームで行っております。カテーテル透視装置が配備された最新のハイブリッド手術室も備えており、安心して最新の治療を受けていただけます。ご不明な点やご質問がございましたら、いつでも当院へご相談ください。

ハイブリッド手術室のご紹介

*TAVIの10年以上の成績は不明であるため、重症大動脈弁狭窄症の患者さんに対する治療は、原則、従来通りの大動脈弁置換術であり、様々な理由で大動脈弁置換術のリスクが高いと判断された患者さんにのみTAVIを行うのが基本方針です。また、大動脈弁の形状により、TAVIができない場合もあります。

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