2010.07.26

「土用の丑の日に、鰻を食す」という習慣は、江戸時代に平賀源内が広めたといいます。暑い時季にはウナギを食べて、滋養をつけるという意味ですが、これは奈良時代からいわれていたようで、「万葉集」にも登場します。
石麻呂に 吾れもの申す夏痩せに よしといふものぞ 鰻とり召せ
この歌は、大伴家持が年輩の権力者である吉田石麻呂という人に宛てた一首。吉田老はとても痩せた人で、夏痩せにはウナギがいいらしいから、獲ってきて食べるようにと、若い家持がこの老人を気遣って歌に詠んだものです。ほんとうに心配しているのか、からかっているのか、そのあたりは微妙ではありますが。

ただし、ビタミンCはまったく含まれていないので、ピーマンやブロッコリーなどの野菜、グレープフルーツやレモンなどの果物を摂ることでおぎないましょう。
さて、大伴家持が吉田石麻呂に宛てた歌がもう一首あります。
痩す痩すも 生けらばあらむをはたやはた 鰻をとると川に流るな
意味は、げっそり痩せても生きていればいいけれど、万が一にもウナギを獲りに行って川に流されたりするなよ、というもの。やはりユーモアをもって、権力者をからかっているようですね。