肝炎および肝がん・重度肝硬変医療費助成制度について

B型およびC型肝炎医療費助成制度について

B型およびC型肝炎治療の医療費(初診料、再診料、検査料、入院料および薬剤料)(※以下「肝炎医療費」とします)の負担を軽減する制度です。

〇 利用できる人

医療保険に加入している人で、下記の治療内容のB型およびC型肝炎治療を受けている人です。感染経路は問いません。

① B型・C型肝炎:インターフェロン治療

※「インターフェロン」は、身体の免疫体制が整うまで、まずは病原体が増えないようにしてくれるものです。ただ体内に多量のウイルスがいると体内で作られる「インターフェロン」では間に合わなくなります。そのため、人工的に作り出した「インターフェロン」を投与して体内のウイルス増殖を防ぎます。

② C型肝炎:インターフェロンフリー治療(経口治療薬)

※「インターフェロンフリー治療」は、「インターフェロンを用いない治療薬」を用いた治療法の総称です。現在はこれが主流になっています。

③ B型肝炎:核酸アナログ製剤

※「核酸アナログ製剤(ウイルスが増殖する過程を阻止し、増殖を抑制する薬剤)」による治療です。

■「インターフェロン治療」による副作用について

「インターフェロン治療」によって軽微な副作用が生じた場合、肝炎治療を継続するために必要な副作用に対する治療については、この 「肝炎医療費」の助成制度の対象になります。一方、「インターフェロン治療」を中止せざるを得ない重篤な副作用の治療については、この 「肝炎医療費」の助成制度の対象になりません。ただし「独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)」が行う「医薬品副作用被害救済制度」の対象となる場合があります。

〇 医療費助成内容

都道府県が指定した「指定医療機関」で健康保険を使用した上での「肝炎医療費」の「月ごとの自己負担限度額」が、下記表①のように決められています。ただし肝炎の種類ごとの投薬内容やその組み合わせにより、「肝炎医療費」の助成期間や利用回数および延長期間が決まっています。
ただし「肝炎医療費助成」は、対象医療費が表①の「自己負担限度額(月額)」を超えたところから「高額療養費の自己負担限度額(月額)」に達するまでの部分を助成するものです。

表① 肝炎治療に対する自己負担限度額(月額)※平成22年4月より)

区   分 自己負担限度額(月額)

世帯の市町村民税(所得割)課税 年額が235,000円以上の場合

20,000円

世帯の市町村民税(所得割)課税 年額が235,000円未満の場合

10,000円

原則として、受給者(申請者)と同じ住民票上の世帯全員の「市町村民税課税年額」を合算した額で、上記の表①の「区分」が決まります。ただし受給者及びその配偶者等の間に、相互に地方税法上・医療保険上の扶養関係にないと認められる場合については、その配偶者等を世帯の合算対象から除外した額で「区分」を決めることが可能です。その場合、受給者が、各都道府県に対しその旨(配偶者等を合算対象からの除外)の申請を行うことが必要です。

〇 申請方法(お住まいの都道府県ごとに、必要書類や申請先の確認が必要です

  • 「肝炎治療受給者証交付申請書」(発行:お住まいの都道府県)
  • 「医師の診断書」(発行:かかりつけ医など)
  • 「受給対象者の名前が記載された被保険者証」の写し(発行:各健康保険者)
  • 「世帯全員記載のある住民票」の写し(発行:お住まいの市町村)
  • 「市町村民税課税年額を証明する書類」(発行:お住まいの市町村)

をそろえて申請先(住民票のある市町村を管轄する保健所等:要確認)に申請します。

〇「受給者証」が届くまで

申請から2カ月前後で「肝炎治療受給者証(受給者証)」と「肝炎治療自己負担月額管理表(月額管理表)」が交付されます。その間の「肝炎医療費」は、一旦医療機関に従来通りの自己負担額を全額支払い、領収書は保管しておいてください。後日「肝炎治療受給者証」が届いた後に、「自己負担限度額(月額)」を超えて支払った分を申請先(保健所等)に還付請求すれば還ってきます。

また「肝炎医療費」の自己負担が「高額療養費の自己負担限度額(月額)」を超えて高額になる場合は、併せて「高額療養費制度」を利用してください。「肝炎治療受給者証」が届くまでに支払った「肝炎医療費」の「自己負担限度額(月額)」を超えた医療費分は、「高額療養費制度」等を利用後に返金する制度のため、返金まで数カ月を要します。

〇「受給者証」が届いてから

医療機関・薬局の窓口に「受給者証」と「月額管理表」を提示し、その都度支払額を記入してもらいます。
「月額管理表」に記入された支払額の合計が、「自己負担限度額(月額)」に達するまでは、従来通りに医療機関等の窓口での支払いになります。「自己負担限度額(月額)」に達した後は、「月額管理表」の提示により、それ以上その月の窓口でのお支払いは不要(公費負担)となります。

「肝炎医療費助成」は、対象医療費の「自己負担限度額(月額)」を超えたところから、「高額療養費の自己負担限度額(月額)」に達するまでの部分を公費で助成するものです。「高額医療費の自己負担限度額(月額)」を超えた部分は、別途医療保険者への申請になります。

〇 その他

「集団予防接種等の際に、注射器の連続使用によりB型肝炎ウイルスに感染した人等に対する給付金」の請求期限が延長され、給付金の支給対象が拡大されました。(2016年8月1日より)
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201206/3.html(政府広報オンライン)
(給付金の請求期限は2027年3月31日までです)。

次回は「肝がん・重度肝硬変入院医療費助成制度」について説明します。

肝がん・重度肝硬変医療費助成制度について

肝がん・重度肝硬変患者の方の対象医療費(初診料・再診料・検査料・入院料及び薬剤料)(※以下「肝がん等医療費」とします)の負担を軽減する制度です。

〇 利用できる人

B型C型肝炎ウイルスが原因の「肝がん・重度肝硬変(注1:非代償性肝硬変)」の治療で都道府県知事が指定する「指定医療機関」に入院、または「指定医療機関」で「分子標的薬」による肝がんの通院治療をした世帯年収約370万円以下の人です。
研究班への臨床情報提供に同意(「臨床調査個人票」及び「同意書」を提出)が要件になります。
※「指定医療機関」一覧 https://kan-navi.ncgm.go.jp/index-s.html

注1:「非代償性肝硬変」とは、肝臓の機能が低下し本来の役割(代償性)がほとんど残っていない状態を指します。慢性肝炎、肝硬変を経て進行していく一連の病態の最終段階とされ、その多くは肝炎ウイルス(B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス)が原因です。

〇 助成内容

「肝がん・重度肝硬変で入院または、分子標的薬による肝がんの通院治療」の医療費

過去12カ月間に、「肝がん・重度肝硬変」による(保険医療機関の)医療費が、「高額療養費の自己負担限度額」を超えた月が、直近12カ月以内に、既に2回(2月)ある場合で、(指定医療機関の)3回(3月)目以降の医療費がふたたび「高額療養費の自己負担限度額(月額)」を超えた場合、その3回(3月)目以降より自己負担限度額(月額)は、(「高額療養費の自己負担限度額(月額)」の適用で無く)(世帯の市町村民税課税年額に応じ)1万円になります(所得制限あり:世帯年収約370万円以下。住民税非課税世帯の場合は自己負担なし)。

※ 助成対象の3月(3回)目以降は、「指定医療機関」でのみ医療費が助成の対象となります。

  

〇 申請方法

※ 申請先は都道府県によって違いますので、各都道府県の担当課または医療機関に確認が必要です。

①「肝がん・重度肝硬変で入院、または分子標的薬による肝がんの通院治療

最初に、都道府県の担当課または医療機関から制度の説明を受けてください。
次に、「医療記録票」を医療機関に受診後、その窓口で記載してもらいます。「医療記録票」には、治療内容や医療費の自己負担額などの医療記録が記載されていきます。

②「一定額以上を窓口で負担」

上記の①の医療費が、「高額療養費の自己負担限度額(月額)」を超えた月が助成対象月を含め過去1年間に3月(3回)以上ある場合、3月(3回)目以降の「肝がん等医療費」の「自己負担限度額(月額)」が1万円となります。

③「参加者証の取得」

上記の①②の条件を、過去12カ月のうち3月(3回)満たす場合(=「高額療養費の自己負担限度額(月額)」を超えた月が3回以上)は、「指定医療機関」の医師に、「臨床調査個人票および同意書」(診断書に相当)を作成してもらいます。治療を受けている保険医療機関が「指定医療機関」でない場合は、お住いの都道府県の「肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業」の担当課(お住まいの地域を管轄する県健康福祉事務所・市保健所等の窓口等)にご相談ください。
それから上記の①の「医療記録票(写)」と「臨床調査個人票および同意書」などを用意し、都道府県(お住まいの地域を管轄する県健康福祉事務所・市保健所等の窓口等)に申請します。申請に必要な書類は、申請者の年齢によって違いますので申請先にお問い合わせください。申請から2か月前後で、制度対象者であることの「参加者証」が交付されます。申請日の月の初日から制度は有効です。

④「医療費の助成」

上記の①②③の条件を満たしたうえで、「指定医療機関」に、①の「医療記録票」と③で交付された「参加者証」を提示します。「指定医療機関」で過去12カ月で3月(3回)目以降の医療を受けた場合、前述のとおり「肝がん等医療費」の「自己負担限度額(月額)」は、限度額(1万円)までになります。
3月(3回)目から助成されますので、「参加者証」の交付は、2月(2回)目と3月(3回)目の間に、都道府県(お住まいの地域を管轄する県健康福祉事務所・市保健所等の窓口等)に申請してください。

「入院」の場合は、指定医療機関の窓口での「自己負担限度額(月額)」が1万円となります。
「通院」の場合は、健康保険の一部負担金を、指定医療機関または保険薬局の窓口で支払い、後日、本人が都道府県(お住まいの地域を管轄する県健康福祉事務所・市保健所等の窓口等)に「自己負担限度額(1万円)」を超えた分の償還払いの請求を行います。上記②の「一定額以上を窓口で負担」は、「高額療養費の自己負担限度額(月額)」を超えた場合ですが、「高額療養費の自己負担限度額(月額)」が更に低くなる「高額療養費の多数回該当」の金額を超えた場合や「限度額認定証」で超えた分を負担した場合も含みます。
(当HP記事:両立支援コーディネーターが紹介する社会資源「高額療養費 ④」参照)

⑤ 助成期間について
  • 申請先が申請書を受理した月の初日から有効となります。
  • 「参加者証」の有効期間を超えて引き続き治療をおこなう場合は、「参加者証」の有効期間内に申請をすれば1年ごとの有効期間の更新を行うことができます。
  • 「参加者証」で、有効期間内の全ての月が助成対象になるのではなく、「指定医療機関」において直近12カ月の「肝がん等医療費」が「高額療養費の自己負担限度額(月額)」を超えた月が2月(2回)以上ある場合の3月(3回)目以降が助成対象になります。
⑥ その他

保険診療以外の費用(自発的な希望による室料の差額、入院時食事療養費および入院時生活療養費など)は助成の対象になりません。
「肝がん等医療費」の自己負担(月額)が「高額療養費の自己負担限度額(月額)」を超えて高額になる見込みの場合は、併せて「高額療養費制度」を利用してください。その利用後に、通院の場合は「肝がん等医療費」の助成金が送金されます。

※「高額療養費の自己負担限度額(月額)」と「肝がん等医療費」の「自己負担限度額(月額:1万円)」との差額が、この制度での助成対象です。「高額療養費」の分は別途医療保険者への申請になります。

参考)
厚生労働省HP「肝がん・重度肝硬変 治療研究促進事業」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kanen/kangan/index.html

肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業 助成に係るQ&A
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000759855.pdf

リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000759871.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000759873.pdf

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