1 傷病手当金 ①
病気になって、お仕事を休まなければならない時、会社から給与が出ればいいですが、 出ない会社や出ても少ない場合もあると思います。そんな時は傷病手当金を利用しましょう。
傷病手当金は、
- 病気やケガで療養中
- 働けない状況(労務不能)
- 連続する3日間を含み4日以上仕事を休んでいる(待機の完成)
- 給与の支払いが無いか、傷病手当金の金額より少額
が条件になります。
では「3.連続する3日間を含み4日以上休んでいる(待機の完成)」とは何か具体的に図で見てみましょう。3日間の待機が完成後、4日目から支給になります。
支給期間は最長1年6ヶ月です。途中出勤して給与の支払いが合った期間も1年6か月に含まれます。会社によっては期間の延長、支給額の増額がある場合もあります。
支給される1日あたりの金額は、「支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額」÷30日×3分の2です。
ただし12ヶ月も働いていない方の場合は、直近の各月の標準報酬月額の平均と、ご自身の健康組合に加入している昨年の9月1日の時点の全労働者の平均給与額と比較して少ない方を計算式に用います。
例えば
11月に入社し翌年の1月から療養で休職した場合 A…標準報酬月額が11月21万円、12月20万円、1月19万円で、平均額 20万円 B…健康保険の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額 23万円
A<Bですので、少ない方のAを式に当てはめて
(21万円+20万円+19万円)÷3÷30=6667(1の位四捨五入)×3分の2=4445(小数点第一位を四捨五入)が1日あたりの支給額です。
おおよそ自分の今までの給与の3分の2が1年半支給されると覚えてもらうといいです。
次回は傷病手当金の申請方法、受給方法、途中で退職したらどうなるかなど紹介したいと思います。
2 傷病手当金 ②
先回 傷病手当金の支給条件や支給額、支給期間についてお話ししました。
今回は具体的な❶申請方法、受給方法、❷受給中に途中で退職した場合についてお話したいと思います。
❶申請方法・受給方法
- 医師の診察を受けます。療養が必要と診断されます。
- 出勤しない待期期間の3日間が完成されます。以後、傷病手当金受給可能となります。
- 療養します。
- 傷病手当金支給申請書・添付書類(勤務が1年未満の場合、外傷、第三者による傷病などの場合:2回目以降の申請の際は不要)を記入します。申請には2年の時効がありその間申請可能ですが、基本的に毎月申請し毎月の日数分受給することが普通です。
書類は、会社の健康保険組合から取得するか、協会けんぽからのホームページからダウンロードできます。ttps://www.kyoukaikenpo.or.jp/g2/cat230/r124 - 傷病手当金支給申請書の医師証明欄の記入を依頼します。
- 傷病手当金支給申請書の事業主の欄の記入を依頼します。その後、支給申請書・添付書類を会社の労務担当者に提出します。
- 支給決定通知書が届きます。振込金額と振込予定日が書かれています。
- 通帳に傷病手当金が振込まれます。(申請書を提出してから1~2ヶ月以内です)
❷受給中に退職した場合
以下の条件があれば受給可能です。
- 退職するまでに1年以上会社の健康保険の被保険者であり、退職するまでに傷病手当金の支給を受けていたもしくは受けられる状態であった場合、退職後も受給できます (継続給付)。ただし退職後の新たな傷病は対象になりません。
- 1の「傷病手当金を受けられる状態」とは、傷病で退職日までに連続した3日間+あと少なくとも1日は休んでいることです。ただし退職日に出勤してしまうと傷病手当金が継続給付されません(退職日に働けない状態ではなかったと判断される)。
- 支給期間は1年6ヶ月です(会社により期間が延長されたり支給金額が多い場合もあります)。在職中は出勤してまた休んでも支給されますが、退職後は一度でも働けるようになった場合はそれ以降支給されません。
- 「失業給付」は、傷病手当金の受給期間が終わり働けるようになった後申請できます。同時に受給できません。「失業給付」を傷病手当金受給後に利用するために、また時効消滅を防ぐため離職後すぐ失業給付の受給期間の延長制度の申請が必須です。
- 申請は、退職後は自身で行うことになります。
その他
雇用保険給付の中に傷病手当金と名前がよく似た「傷病手当」というものがありますが、これは失業給付受給中に傷病で就職活動ができなくなった場合、失業給付の代わりに失業給付と同額で同期間支給されるものです。
次回は傷病手当金の支給が終わったらどうするのか、傷病手当金とボーナスの関係、確定申告との関係、支給金額が減るパターンについて説明します。
3 傷病手当金 ③
今回は、❶傷病手当金の支給が終わっても病気が治っていない場合、❷、❸支給金額が減るケース、❹あまり知られていない傷病手当金とボーナスの関係、❺確定申告、❻その他 について説明します。
傷病手当金受給終了後の手続きとして、失業給付、生活保護、障害者手帳申請等が場合によって考えられますが、ここでは「障害厚生年金」及び「障害厚生年金の障害手当金」の例について説明します。
❶傷病手当金の支給が終わっても病気が治っていない場合
傷病が、傷病手当金の給付期間1年6ヶ月を超えても治っていない場合、次に考えられるのが障害厚生年金の申請です。症状が「初診日」から1年6ヶ月を超えても治っていない場合は、そこで症状が固定している(治ゆ)とされ、障害年金の申請が可能です(疾患によっては1年6ヶ月以前でも申請ができます)。障害厚生年金の申請から決定(受給)までには時間がかかるため傷病手当金受給中に障害厚生年金の請求を事前に準備することも考えられます。しかし障害厚生年金の支給開始日が傷病手当金の受給中となることがあります。そのため以下の❷、❸のような状況も想定されます。
❷障害厚生年金の場合
「傷病手当金」と「(同一傷病の)障害厚生年金」を同時に貰うことはできません。傷病手当金と障害厚生年金の受給期間が重複した場合は障害厚生年金が優先されるからです。ただし障害厚生年金の年額を360で割った額が傷病手当金の日額より少ない場合はその差額が傷病手当金より傷病手当金の期間内支給されます。
❸障害手当金の場合
「障害手当金」の場合は1回のみ一括支給されますので、傷病手当金は「障害手当金」の額が傷病手当金の額を超えるまでの間、全額不支給になります。 「障害基礎年金、老齢基礎年金のみの受給・育児休業給付金」については傷病手当金と併給可能です。
❹傷病手当金とボーナスとの関係について
「傷病手当金」と「ボーナス」の関係ですが、ボーナスは毎月の給与と違い「報酬」としては扱われず傷病手当金の受給金額に影響しません。そのため会社の就業規則によりますが、例として、就業規則に「6月1日の時点で休職していない労働者は6月20日にボーナスが支給される」という規則があった場合、傷病手当金を受給中でも6月1日のみを有給休暇扱いにできれば、6月1日分を除く6月分の「傷病手当金」と6月20日支給の「ボーナス」の両方を貰うことも可能な場合もあります。
❺傷病手当金と確定申告との関係について
「傷病手当金」と「確定申告」の関係ですが、傷病手当金は非課税のため所得税は課せられません。そのため傷病手当金の部分に関しては申告する必要がありません。
❻その他
傷病手当金受給中も、全く出勤せず給与の支払いがなくても、社会保険料は発生します。会社に保険料を振り込むか復帰後精算するようにします(会社に相談してください)。
また、新たな病気になった場合、以前の病気と関係ない場合は新たに申請可能です。ただし、受給期間が重複した場合の受給額は2倍にはなりません。
4 傷病手当金 ④
『「傷病手当金」の支給期間が改正』令和4年1月より
以前、「傷病手当金」についてご説明しましたが、今回は、「傷病手当金」の支給期間が改正されますので、ご説明します。
❶「傷病手当金」の通算化
現在(令和3年12月まで)は、傷病手当金の支給は通算ではなく起点日から最大1年6ヶ月間です(企業によっては加算や期間が長い場合もあります)。途中で他の支給によって傷病手当金が支給されなくなってもその間も1年6ヶ月間に含みます。
しかし、令和4年1月より、傷病手当金の支給は通算が最大1年6カ月分になります。支給が中断した場合は、通算から除外されます。つまり途中に支給されない期間があっても、その分延長されて、最大1年6カ月分の傷病手当金が支給可能となりました。
❷それまでに傷病手当金を利用している人は?
令和4年1月以前から傷病手当金が支給されている方どうなるのでしょうか。
経過措置として、施行前でも令和4年1月1日時点で傷病手当金の受給権がある方(つまり令和4年1月1日の1年6カ月前の令和2年7月2日以降に傷病手当金を受給されている方)は、不支給になった期間はその期間を延長して、最大通算1年6ヶ月まで受給可能です。
途中で、復職したり、有給休暇を用いたりした場合は、傷病手当金は支給されませんが、再度治療のため休職などした場合、支給が再開されます(ただし同一疾病)。通算で最大1年6カ月分支給されます。
今回の改正は、治療のため休職と復職を繰り返さざるを得ない方などの治療と仕事の両立に役立てることができると思います。