代表的疾患及び治療用語

閉塞性動脈硬化症 (PAD: peripheral artery disease)

加齢や生活習慣病(高脂血症、高血圧、糖尿病)、喫煙が原因で、下肢の動脈硬化(動脈の狭窄、閉塞)を併発した疾患です。下肢動脈の狭窄から下肢への血流が悪化し、1度:足がいつも冷たい・痺れる、2度:間欠性跛行(歩くと足が痛くなるもしくはだるくなる、休むと改善する)、3度:安静時の疼痛(夜間足を下げてないと眠れない)、4度:潰瘍・壊死などの症状があります。足の痺れや間欠性跛行は、脊椎の病気(脊柱管狭窄症)でも出現することがあり、検査による鑑別が必要です。また、本疾患合併患者さんは、他の全身動脈硬化性疾患の併発も高率で、特に心臓(狭心症や心筋梗塞)、脳(一過性脳虚血・脳梗塞)については自覚症状を認めなくても合併を積極的に疑い精査する必要性があります。

重症虚血肢(CLI:Critical limb ischemia)

下肢閉塞性動脈硬化症 (PAD)患者さんのなかでも、病状が進行し足趾の安静時下肢痛(3度)もしくは足趾潰瘍・壊疽(4度)を合併した病態であります。病名の如く、非常に重症で先ず優先すべき治療は、血行再建術(カテーテル治療・外科的バイパス術)であります。血行再建術を施行しなければ、創傷治癒遅延から下肢大切断に至る可能性が高い病態です。(血行再建術なしでは、1年間で25%の患者さんが大切断を余議なくされます。)薬剤や点滴治療のみでの完全治癒は、非常に困難であると最近では報告されております。

重症虚血肢

腹部大動脈瘤 (AAA: abdominal aortic aneurysm)

大動脈瘤は、大動脈が徐々にこぶ状にふくらみ突然破裂を来たす疾患です。動脈瘤は診断されても、殆どの患者さんが無症状でありますが、動脈瘤が破裂すると救命率は1-2割であるため、無症状な段階で治療が必要な疾患です。別名silent killer(静かなる殺人者)ともいわれ、「破裂による突然死」で発見されることも少なくありません。腹部大動脈は通常約2cmでありますが、約5cmで手術適応となります。降圧剤治療のみでは破裂を免れることはできず、内服薬治療を継続しつつ定期的に受診して頂き、瘤が5cm以上の大きさになれば手術を行います。手術には、外科的開腹術(お腹を開ける)とステントグラフト挿入術があります。当院では積極的に循環器内科医と心臓血管外科医でステントグラフト治療を施行しております。

腹部大動脈瘤

腎動脈狭窄症 (RAS: renal artery stenosis)

腎動脈狭窄症の主な原因は粥状硬化性病変によって生じ、複数の降圧薬に治療抵抗性の高血圧・腎機能障害(腎萎縮や腎不全)を合併します。最近は心不全や不安定狭心症の原因になることも明らかになってきております。超音波検査・CT検査・血管造影検査により診断を行い、腎動脈が50%以上の狭窄かつ狭窄側の腎臓が7.5cmであり、①急性肺水腫の既往、②コントロール不良の心不全、③ACE / ARB による腎機能低下、④腎機能障害高度、⑤コントロール不良の高血圧、⑥両側性の高度腎動脈狭窄で腎動脈ステント治療を考慮します。

腎動脈狭窄症

シャント不全

シャントとは、維持透析を行うため作成した、動脈と静脈の血管を結合させたものであります。繰り返し使用されたシャントは狭窄(血管の内側が狭くなること)を起こし、脱血不良により透析がスムーズに行いにくくなってしまいます。これをシャント不全と総称し、原因である血管狭窄や閉塞に対してカテーテル治療を施行します。一般的には、シャント部に50%以上の狭窄があり、①血流の低下,瘤の形成、②静脈圧の上昇、③BUN の異常高値,または再循環率の上昇、④予測できぬ透析量の低下等の事象が1つでも併発した場合には、シャント狭窄部のカテーテル治療(バルーン治療)を行います。

シャント不全

足関節上腕血圧比 (ABI: ankle brachial pressure index)

足関節と上腕で測定した血圧の比です。(足関節血圧/上腕血圧) 下肢動脈狭窄がない正常人では、下肢(足関節)血圧が上腕血圧より高くABIは1以上ですが、下肢の動脈硬化が進むと足関節の血圧が低下し、ABIも低下します。ABIが0.9以下で下肢動脈の狭窄病変合併を疑います。

足関節上腕血圧比

皮膚還流圧検査 (SPP: skin perfusion pressure)

重症虚血肢患者さんの患肢重症度評価する上で非常に有用である検査です。レーザーセンサーを用い、測定部位の皮膚微小循環を定量的に評価します。測定値30mmHg以下では創傷治癒は困難であり、45mmHg以上で高率に創傷治癒に至るとされています。

皮膚還流圧検査

コンピュータ断層撮影(CT: Computed Tomography)

CTは患者さんの体に360度の方向からエックス線を当て、得られた画像をコンピュータで再構成することにより、断層画像(輪切りの画像)を作成します。当院では最新の320列CT装置を使用することにより、一度の撮影で冠動脈(心臓を栄養する血管)から、大動脈、下肢の動脈までの心血管疾患の評価が可能です。

皮膚還流圧検査

下肢動脈エコー検査

下肢の動脈硬化進行度を評価し、治療方針を決める上で有用な検査です。大腿部を観察する際は、ズボンを脱ぐか、または下げてベッドに仰向けに寝ていただきます。下腿(膝より下)を観察する際は、ズボンをまくり上げてベッドに寝ていただきます。検査用ゼリーを塗り、プローブという超音波発信器を当てて、下肢の動脈に閉塞や狭窄がないか検査します。

下肢動脈エコー検査

カテーテル

医療用に用いられる中空の柔らかい管のことで、体液の排出、薬液や造影剤などの注入に用います。循環器内科では血管造影カテーテルを用いて、冠動脈、大動脈、下肢動脈等の造影検査及び治療を行います。治療時には、カテーテル内を通してガイドワイヤー、ステント等を病変部位まで運びます。穿刺箇所として手首の橈骨動脈、肘の上腕動脈、鼠径の大腿動脈があります。

カテーテル

シース

血管確保用の短いカテーテルのこと。血管造影の際、何種類ものカテーテルを出し入れするため、血管刺入部を保護し、またカテーテルの操作を容易にすることが、シースの役割です。逆流防止弁付きのものも多く、血管内外と交通がありますが、出血が進まないよう工夫がされています。またシースとカテーテルが一体化したシースカテーテルも存在し、四肢の血管内治療の際に多く用いられています。

シースー

カテーテル治療(血管内治療)

血管の狭窄・閉塞部位までカテーテルを挿入し、その部位をバルーン(風船)もしくはステント(金属の筒)を開大して、血管狭窄・閉塞部位より以遠の血流を改善する治療です。問題点は、治療部位における再狭窄です。

シースー
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