治療成績について
関西労災病院のアブレーション治療成績とアブレーション後に心房細動が再発しやすい条件についてご説明します。
アブレーション手術件数
当院では心房細動を中心に、上室性頻拍症、心室性期外収縮、心室頻拍などあらゆる頻拍性不整脈のアブレーション治療を数多く行っています。

1回のアブレーションで心房細動再発がない割合
できるだけ1回目の心房細動アブレーションで根治できるよう最善を尽くしますが、残念ながら一部の患者さんでは心房細動が再発してしまいます。関西労災病院では心房細動を再発せずに経過する方が、発作性心房細動では85%程度、持続性心房細動では70%程度です。

アブレーション後に心房細動が再発しやすい条件
アブレーションが上手くいくかどうかは患者さんの心臓の状態と我々医療者のアブレーションのやり方が影響します。アブレーション後に心房細動が再発しやすい条件を表に示します。以下は当院での経験あるいは公表されている論文結果に基づいていますが、個々の患者さんでは必ずしもこの通りではありませんので、ご承知おきください。
心房細動の持続期間が長い
心房細動が固定(いつ検査をしても心房細動がみられる)するようになってからの期間が長い方はアブレーションの効果が少なくなります。心房細動が続いていることが、心房を傷めてしまい心房細動が治りにくくしてしまう(心房細動が癖になる)からです。あくまで目安ですが、2年程度であれば多くの方で上手くいきますが、5年を超えると心房細動が再発してしまう方が多いです。そのためアブレーションをされる場合は、できるだけ早く受けることをお勧めします。
心臓超音波検査(心エコー)で心房が拡大している
心臓超音波検査では超音波を使って心臓の大きさや動きを計測できます。心房細動の方は少なからず心房が拡大しているのですが、これは心房の傷みの程度を表しています。心房が大きくなり過ぎている方は、心房全体に傷みが広がっていることを示していて、アブレーションの効果が少ないとされます。具体的には心エコー所見の左房径(関西労災病院ではLADと記載)が55mmを超えると治療が難しいと判断します。

高齢の女性
高齢の女性では心房細動に限らず心不全や動脈硬化性疾患が増えることが知られています。これには高齢女性特有のホルモンの変化などが関連していると考えられています。心房においても高齢女性では傷みが広がっていることが多く、アブレーション成績は悪くなる傾向があります。
心筋症や弁膜症などに続発する心房細動
拡張型心筋症や肥大型心筋症などの心筋症や心臓弁膜症(大動脈弁や僧帽弁の狭窄や閉鎖不全など)がある方が心房細動を合併した場合、アブレーションの成績が悪くなります。これは心筋症や弁膜症によって心房の傷みが広がってしまっている可能性が高いからです。