心房細動の検査 – 関西ろうさい病院(兵庫県尼崎市)地域医療支援病院・がん診療連携拠点病院
独立行政法人 労働者健康安全機構 関西ろうさい病院 心房細動

心房細動の検査

心房細動の検査

心房細動を診断するには発作が出ている時に心電図を記録する必要があります。ここでは、代表的な心電図検査と、血液検査や心臓超音波検査などの検査についてご説明します。

心房細動を検出するための検査(主に心電図)

心房細動を検出するための検査には、主に心電図検査があります。心電図というのは心臓の微弱な電気の流れを体の表面から記録する検査で、不整脈の診断には必須のものになります。心房細動の診断のためには心房細動発作が出ているときに心電図を記録する必要がありますので、患者さん個々の発作頻度や症状の有無など心房細動の特徴に合わせた検査を行う必要があります。以下に心電図検査の代表的なものを紹介します。

12誘導心電図

病院で行う12誘導心電図検査は、たくさんの電極を手足や胸に付けることで、様々な方向の電流を計測することができます。学校や会社などの健康診断でも広く行われています。これによって不整脈や心筋梗塞、心筋症などの診断に役立ちますので、心臓病の基本的な検査のひとつとなります。心房細動が持続している方であればこの検査で簡単に診断がつきますが、検査の時に心房細動が出ていなければ診断できません。

 
ホルター心電図

24時間以上、最長7日間身体に心電図を装着し、継続した心電図記録を行います。入浴ができない、皮膚が弱い方はテープかぶれを生じる可能性があるというデメリットがありますが、検査期間中は心電図を記録し続けることができるので症状のない心房細動やごく短時間の心房細動を記録できるメリットがあります。反対に年に数回など頻度がまれな不整脈の診断には不向きです。

 

携帯型心電計

症状があるときのみご自身で胸など体にあてて心電図を記録します。当院ではポケットに入るサイズの携帯型心電計の貸し出し(3週間まで)が可能です。また電気屋さん等でも医療機器として販売されています。自分でわかる動悸発作があるものの頻度が少ないという方に適しています。ホルター型心電図検査のように長時間心電図を装着しなくてもよいというメリットもあります。

 

アップルウォッチなどの着用型心電計

最近は腕時計型の健康管理器具が普及しています。多くは皮膚に光をあてて脈拍を計測するものですが、アップルウォッチなど心電図が記録できるものもあります。さらにiPhoneのアプリケーションと連動して心電図の解析と心房細動の診断までされるもので、医療機器の承認も得ています。症状が乏しい、頻度が少ない心房細動を検出する方法として期待されています。関西労災病院では患者さんが記録されたアップルウォッチなどの心電図も積極的に診療に取り入れるようにしています。印刷した心電図をご持参いただくか、外来受付でiPhoneのデータを提示ください(こちらで印刷させていただきます)。

 

 

また当院では、アップルウォッチや携帯型心電計もしくは健康診断で心電図の異常を指摘され、心電図結果のPDFデータを送信できる方を対象に、受診すべきかどうかをアドバイスするメール相談を無料で行っています。

心電図以外の心臓や体の状態を調べる検査

心房細動の患者さんを治療するためには、心臓そのものや体全体の検査もさせていただく必要があります。

血液検査

心房細動の患者さんを治療するためには、心臓そのものや体全体の検査もさせていただく必要があります。
心房細動の方で注目いただきたい検査項目には次のようなものがあります。

NT-pro BNP (あるいはBNP)

心臓の心室が弱ったり負担がかかると分泌されるホルモンの一種です。心臓が弱って全身への血液循環が悪くなる 心不全の方では上昇します。心房細動でもこの数値が高い場合は、心不全を合併し健康状態の悪化が懸念されますので、カテーテルアブレーションでの治療などを検討する必要があります。

ANP

こちらは心臓の心房に負担がかかった時に分泌されるホルモンです。心房細動の方は高くなることが多いのですが、心房細動が長く続いたりして心房が傷んでしまうと反対に低下してきます。実はANPやBNPは心臓を保護する重要な役割を担っています。

TSH/T3/T4

甲状腺ホルモンに関する項目です。甲状腺は喉元の左右に膨らんでいる臓器で体全体の代謝などに関わるホルモンを分泌します。バセドウ病など甲状腺機能亢進症と言われる状態となると、口喝・多汗・動悸などの症状が現れ、心房細動を発症することもあります。隠れた甲状腺の異常を見逃さないために、心房細動をお持ちの方は甲状腺機能を検査するようにしています。

 

胸部レントゲン

X線を照射して心臓や肺の状態を調べます。心臓の状態を調べるもっとも基本的な検査です。特に心房細動の患者さんが合併することの多い心不全においては、心拡大や肺うっ血と呼ばれる所見が見られます。

心臓超音波検査(心エコー)

体の表面から超音波を当てることで、心臓の形や動き方を調べることができます。心房細動では以下の項目に注目して検査を行います。
( )内の英語は、関西労災病院の検査結果に記載されている該当項目の略語です。

左房径(LAD)

左心房の大きさを計測することで、心房の傷み具合を知ることができます。一般に心房細動が長く続くほど左心房は大きくなりアブレーションの効果は乏しくなります。体格などの影響を受けるので一概には言えませんが40mm以下が正常値、50mmを超える場合は心房がかなり傷んでいると考えます。カテーテルアブレーションを行うと縮小する(正常化する)ことが多いです。

左室駆出率(EF)

心臓のポンプの働きで最も重要な左心室の動きを表す指標です。心房細動の患者さんは心臓全体の動きが悪くなる(心機能が低下する)こともありますので、必ず確認する項目です。左室駆出率が低下している場合は心不全と考えられますが、低下しないタイプの心不全もあります。カテーテルアブレーションを行うと改善することも多いです。

 

CT

CTはX線を用いて体を輪切りにしたような画像を作ることができ、それによって体の中を調べます。心房細動ではカテーテルアブレーションを行う前に実施して、心臓の立体画像を作ることでカテーテル操作を安全で効率的に行う助けとなります。また造影剤を使用することで心房内にある血栓なども見つけることができます。アブレーション時に血栓があれば、カテーテルでそれを飛ばしてしまう可能性があるので、CTで血栓がないことを確認するようにします。なお造影剤は腎臓や心臓の負担となることがあるため一部の患者さんでは使用に注意が必要です。また気管支喘息などを誘発することがあるので、そのような患者さんでは入院中に予防薬を服用いただいたうえで実施します。

経食道心臓超音波検査

口から超音波検査のための器具を飲み込んでいただき、食道から心臓を観察する検査です。左心房内の血栓の有無を調べることができます。心機能や腎機能が悪かったり、気管支喘息をもっていたりして造影剤を使ってCTができない患者さんでは、経食道心臓超音波検査をアブレーション前に実施することがあります。なお関西労災病院では患者さんの苦痛を和らげるため、眠っていただいている状態で検査を行います。

 

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