ガンマナイフ

脳神経外科部長:瀧琢有

関西労災病院では平成16年12月より「ガンマナイフ治療」を開始しております。
しかし、まだまだ一般的には知名度も低く、脳外科以外の医師であれば、どういった治療法かご存知でない方もいらっしゃいます。

「ガンマナイフ」とは何か、どういった治療法で何の病気に有効なのかを皆さまにご理解いただければと思います。

脳神経外科部長:瀧 琢有

ガンマナイフとは

ガンマナイフは1968年にカロリンスカ大学脳神経外科のレクセル教授によって開発されました。具体的には放射線の201の細かいビームを虫めがねの焦点のように病巣部にのみ照射する治療法です。どのような放射線が適しているか研究の結果、γ (ガンマ)線が適していると判明、コバルト60(※1)をエネルギー源としたガンマナイフが誕生しました。
ガンマナイフ本体には201個のコバルト60の線源が半球状に配置されており、患者の頭部に装着されたコリメータヘルメットの201個の穴を通して、コバルト60から発生するガンマ線が病巣部に集中照射されます。照射時に貫通する頭皮、骨、脳、血管、神経への影響は少なく、照射を受けた病巣のみが徐々に凝固・壊死します。

更に、照射の誤差は±0.5mmと高精度であるため、重要な組織が密集している頭蓋内でも正常な組織にほとんど影響を与えずに治療することができます。そのため、病巣が脳の深い位置にあって全摘出が難しい場合や、既に開頭手術を行って、まだ病巣が残っている場合にも適しています。 しかしながら、病気の種類や状態、また病巣の大きさや位置などによって、ガンマナイフによる治療が適している場合と、開頭手術の方が適している場合とがありますので、総合的な判断が大切です。
(日本ガンマナイフサポート協会より抜粋)

ガンマナイフ治療に適した病気

「頭を切開せずに脳血管障害や脳腫瘍を治療する方法」

最も高い効果を上げているのが「聴神経腫瘍」「髄膜腫」「下垂体腫瘍」など3.5cm以下の良性腫瘍や他の臓器のガンが脳に転移した「転移性脳腫瘍」などの悪性腫瘍です。また、血管障害でクモ膜下出血の原因にもなる「脳動静脈奇形」にも高い効果があります。

当院での治療の現況 ~転移性脳腫瘍であきらめないために~

当院では平成16年12月より治療を開始し、半年間で約100人の方々に治療を行ってまいりました。その約80%は他臓器の癌からの転移性脳腫瘍の方です。最近の統計によると、ガンマナイフ治療を受けた約95%の方は転移性の癌が消失したり、コントロールしたりすることが可能となり、転移性脳腫瘍による死亡率は5%に抑えられるようになりました。また、従来の放射線治療では治療の難しかった腎癌や悪性黒色腫の転移にも効果的です。
従来のガンマナイフは、手動で位置あわせを行っていたため、若干の誤差(約0.9mm)があり、多数の病変に対する治療は困難でした。しかし最新モデルでは、位置あわせが自動となり、その精度は格段に向上(0.1mm前後)し、また複数の病巣にも対応が可能になり、当院でも最高30個前後の転移巣にも安全に治療を行えました。
他疾患では、脳原発の悪性脳腫瘍(神経膠腫、星細胞腫)が1割を占めています。従来の放射線治療後の再発や、短期間での治療を希望する方には有意義な治療法と考えられます。悪性疾患の中では、上咽頭や副鼻腔の癌などにも有効です。
良性疾患は原則的に手術による治療が優先されますが、高齢者、再発、手術による高侵襲が予想される場合などには、ガンマナイフは有用であり、髄膜腫、下垂体線腫、聴神経鞘腫に治療を行ってまいりました。血管系では脳動脈奇形が保険適応となります。現在、積極的な治療を行う場合、手術、ガンマナイフ、血管内手術(塞栓術)を単独、あるいは組み合わせて行うことが有効です。
元来、ガンマナイフが開発された経緯でもあるように、パーキンソン病、三叉神経痛などの疾患にもガンマナイフは有効ですが、わが国では公的保険の適応外となっており、自由診療(約100万円)となります。

総合的な治療法の「ひとつ」として

当院は全国的にも脳神経外科手術、通常の放射線治療(リニアック照射)、ガンマナイフ治療と、病状によって治療法が選択でき総合的な治療ができる数少ない医療機関です。現在、積極的な治療を行なう場合は「手術」「ガンマナイフ」「血管内手術(塞栓術)」を単独、あるいは組み合わせ、脳神経外科専門医と放射線治療専門医が相談の上、最適の治療法を立案して行きます。

ガンマナイフの利点「社会的生命を損なわない治療法」

1.低侵襲(※2)治療

局所麻酔で治療が可能なため身体への負担が少なく、全身麻酔を行うことに危険性が高い方(高齢者、循環呼吸器系等に重篤な障害を有する方)や再発、再手術による高侵襲が予想される場合でも治療が可能になりました。

2.治療期間の短縮

通常1回(1-5時間)の治療で終了し、入院期間は3日間、場合により日帰り治療も可能となりました。術後の入院期間や分割放射線治療による1週間~2ヶ月間の療養期間の短縮化がはかられ、患者さんの社会的生命を損なうことなく治療が可能となりました。

診療費用について

診療費は3割負担の方で約19万円です。ただし手技のみで、入院料などは含んでいません。
詳細については、お問合せください。

※1 コバルト60
コバルト60はコバルト(原子番号27、原子量58.9332の鉄族に属する金属元素)の人工放射性核種の一つである。γ 線源として使用され、厚さや密度を計る工業用測定器、食品の殺菌、がんの放射線治療、および植物の品種改良などに広く利用されている。

※2 侵襲
医療において,生体内の恒常性を乱す可能性のある外部からの刺激。
低侵襲→身体への負担が少ない
高侵襲→身体への負担が大きい
 
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