胆石

肝癌膵癌胆道癌胆石脾臓腹腔鏡下(ロボット支援下)膵頭十二指腸切除術

胆のうとは

肝臓では、脂肪や蛋白質などの消化を助ける胆汁という消化液がつくられています。肝臓でつくられた胆汁は胆管という管を通り、十二指腸へ送り出されます。胆のうは、この胆汁を蓄え濃縮し、食事の際に十二指腸へ送り出すという働きがあります。

胆石とは

胆石とは肝臓や胆のう、胆管に出来る石のことで、それぞれ[1]肝内結石[2]胆のう結石[3]総胆管結石と呼ばれます。肝臓がつくる胆汁が固まることによって石となります。日本の統計では、胆石のうち最も多いのが胆のう結石で78%、次いで総胆管結石が21%、肝内結石は1.3%とされています。当院では、すべての胆石に対して傷の小さな腹腔鏡手術を行っています。

胆石の症状

胆石の典型的な症状は、右季肋部痛や心窩部痛などの上腹部痛 (胃の痛みと勘違いされる方が多いです)、嘔気・嘔吐です。胆嚢炎や胆管炎などの炎症をおこした場合は、高熱を伴うこともあります。

胆石の種類

[1]肝内結石

胆管の中にできた結石のうち、肝臓内の胆管にできた結石です。衛生環境の改善とともに国内での発生率は減少傾向にあるとされます。胆のう結石や総胆管結石に比べて治療が難しく、治療後の再発率が高いことが知られています。治療法としては肝臓内の胆管を直接穿刺して管を通し、そこから内視鏡をして除石する方法(経皮経管胆道鏡:PTCS)と手術があります。手術は肝臓が萎縮している場合や胆管癌が疑われる場合、内視鏡で結石が除去できない場合などに選択されます。手術は結石のある部分の肝臓の切除です。当院では腹腔鏡下肝切除を基本にしております。

[2]胆のう結石

一般的に胆石と呼ばれているものの多くは胆のう結石です。腹痛を繰り返すなど、症状のある方の場合は治療が必要となります。薬や体外衝撃波による治療もありますが、長期間の治療が必要なことや再発率や合併症の問題より、手術が第一選択の治療となっています。手術は腹腔鏡下胆嚢摘出術を行っています。腹腔鏡手術は開腹手術と比べて手術後の痛みが少なく、傷も目立ちにくいなど患者さんに優しく、安全な治療法として普及しています。一般的には4カ所の穴で手術を行いますが、当院では穴の数の少ない手術にも取り組んでおり、御希望と胆石の状態に応じて1カ所の穴の手術も行っています(図1)。 当院では予定手術、緊急手術を合わせて年間約100例を超える胆のう摘出術を行っております (図2)。近年はガイドラインで早めの手術が推奨されており、緊急手術が増加しています。

図1 単孔式腹腔鏡下胆のう摘出術の創部(臍の中が傷です)
図1 単孔式腹腔鏡下胆のう摘出術の創部(臍の中が傷です)



図2 当院での胆嚢摘出症例数の推移
図2 当院での胆嚢摘出症例数の推移

2013年に急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドラインが改訂され、急性胆嚢炎の重症度判定基準などが変更されました(図3)。このガイドラインでは、軽症胆嚢炎は早期の腹腔鏡下胆摘の適応とされ、中等症胆嚢炎については、「高度の内視鏡外科手術手技を有する場合、早期の腹腔鏡下胆摘の適応となり得る」とされています。当院では、中等症胆嚢炎についても基本的に腹腔鏡手術を行っています。重症胆嚢炎は基本的に早期手術の適応はなく、緊急胆嚢ドレナージなどを行い全身状態が改善してから、待機的に手術を行います。

図3 急性胆嚢炎の重症度判定基準
図3 急性胆嚢炎の重症度判定基準

当院では発症から3日以内の手術を早期手術、3日から2週間以内の手術を準早期手術、2週間以降の手術を待機手術と分類し、胆嚢炎の重症度、合併症や抗血栓薬の内服状況に応じて診療方針を決定しています(図4)。また、当院では心臓や腎臓、脳などの病気で通院して抗血栓剤を内服されている方も多く、薬の種類によっては手術までに1~2週間の休薬期間を必要とする場合があります。一般的に、発症から手術までの日数が長い程、炎症や癒着などで手術の難易度があがるとされていますが、当院では発症から2週間以内であれば積極的に腹腔鏡手術を行うようにしています。

図4 当科での胆のう炎診療方針
図4 当科での胆のう炎診療方針

[3]総胆管結石

総胆管結石は高率に胆管炎、黄疸、膵炎などの症状がでるために、症状がなくても治療が必要と考えられます。胃カメラでの治療(内視鏡的逆向性膵胆管造影:ERCP)が基本となりますが、ERCPが困難な場合には手術が必要となります。胃の手術後、巨大な結石、ERCPで胆管にチューブが入らなかった場合がそれにあたります。胆のう結石がある場合には胆嚢摘出術が必要になりますので、1回の手術で胆管結石も除去する場合があります。また、胃カメラでの除石は、胆管の十二指腸への出口(ファーター乳頭)の機能が失われるため、乳頭機能温存の観点から若年者では手術のほうがよいという考え方もあり、総合的に治療方針を決めています。多くの施設では未だに胆管切開は開腹で行われていますが、当院ではほぼ全例で腹腔鏡手術が可能となっております(図56)。

図5 腹腔鏡下総胆管切開切石術(結石摘出)
図5 腹腔鏡下総胆管切開切石術(結石摘出)
図6 腹腔鏡下総胆管切開切石術(胆管縫合)
図6 腹腔鏡下総胆管切開切石術(胆管縫合)

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