情報化時代における診療の最適化と
情報公開・疫学データの活用を目指して
医療情報部は、直接受診される部署ではないため、皆様になじみが薄いと思われますが、診療録の管理、臨床業務の電子化・情報化、事務の効率化、臨床指標の整備・充実・公開、疫学研究といった情報システム関連業務を行う部署です。 当初は大学病院から設置され始めましたが、その後当院のような大規模急性期医療機関では必須のものと考えられ、現在では全国で2000を超える病院が同様の部署を有しています。
当院では、周囲に先駆けて平成15年より医療情報部を立ち上げ、活動を開始してきました。オーダーリングシステムや電子カルテの導入と、それに伴う情報セキュリティーの確立、患者さんのプライバシーの確保も担保しつつ、次のような業務を行っております。
主な業務内容
診療録記録の管理、長期保管
カルテをはじめとする診療諸記録は、法律に定められた安全確実な管理を行うとともに、患者さんの継続的な診察や教育・臨床研究のために、迅速・容易に利用できる環境作りが必要不可欠です。当院では平成22年5月の電子カルテ導入などにより、必要な診療情報の参照や検査・治療オーダーを容易にすべくシステムを構築・改善してまいりました。また電子化に伴い、ペーパーレス・フィルムレス化・業務効率アップ、入院患者さんのリストバンド認証システムや輸血・輸液時認証などとの連動による安全性の確保なども行っております。さらに以前より行っていたクリティカルパスを電子化し、電子カルテへの一元化も行っております。診療情報は診療情報管理士により随時チェックを行っております。平成29年5月には電子カルテの更新を行うと共に、残存する問題点の解決に向け進めております。同時に平成3年以前の診療録のマイクロフィルム化、CD化を進め、診療録の管理と診療情報へのアクセスも容易にしております。
医療情報システム開発・保守の管理
情報システム開発は業務改革にもつながります。患者さんへのサービス向上を核に、プライバシーやセキュリティー、記録や契約、医療保険などを鑑み、多種多様な医療従事者、事務担当者、技術者の意見を踏まえながら、現システムを改善しつつ、平成29年5月に新システムへの更新を行いました。今後も引き継き改善していきます。
医療情報の分析と活用、情報公開
日々得られる診療情報は、それらを蓄積するだけでなく分析することによって戦略的に活用可能となります。
まず臨床面における医療情報の活用としては、「がん登録」と「臨床指標」が挙げられます。
当院では、がん診療連携拠点病院に指定される以前から、「院内がん登録」を実施しております。現在、同意を頂きつつ予後調査を行い、生存率等治療成績の評価を行っております。また、平成28年より施行された「がん登録等の推進に関する法律」に基づき、全国がん登録にも参加しています。平成18年夏のDPCによる包括支払制度への参加、DPCデータと院内がん登録データとの連携などにより、全国での医療情報との比較・評価を行い、各部署との協力の上でこれまで以上に透明性の高い医療を目指し、その結果の公開に向け努めております。
次に疫学研究への活用が挙げられます。
公的病院である当院は、病気やケガをされた方を治療するだけではなく、それらの発生原因やその予防について、ご本人やご家族のみならず、社会に向かって発信することが求められています。診療情報や職業歴データベース、地域での病気の発生状況など、疫学データの活用により、労災疾病・作業関連疾患やがんを含め、原因や職業と病気の関連性を見出し、地域での病気やケガの予防に結び付けていきたいと思います。これらの結果の情報提供・公開にも、各部署と協力して取り組んでいきます。
さらに病院経営への活用も可能となります。
新たな診療技術の発展、患者さんの疾病構造や医療行政の方向性の変化に対応した経営陣の合理的な意思決定は、医療機関としての存続に必要不可欠であり、そのための定量的な資料作成に活用されます。
診療情報管理室
診療情報管理室は、膨大な診療諸記録の保管・運用が適正に行われるように管理する部門です。平成14年4月に「病歴係」から、機能強化のために「診療情報管理室」へ改編され、現在は中央診療部門である医療情報部の中に位置づけられています。
平成22年5月に電子カルテが導入され、管理業務内容が大きく変化する中、大切な情報を慎重に取り扱い、かつ迅速に提供出来るよう、日々業務に取り組んでいます。
主な業務内容
診療情報管理士※
- 電子カルテ記載内容の確認
- 退院後に医師によって作成される要約書(退院サマリー)の確認および記載請求
- ICD-10、ICD9-CMによる疾病分類(病歴のコーディング)
- 院内がん登録および集計資料作成
- 各種統計資料の作成
- 診療記録開示業務
- 職歴調査業務(労災病院(労働者健康安全機構)の特性として行っている)
- 日本標準産業分類、職業分類による職業歴分類(職歴のコーディング)
※参考:診療情報管理士とは、診療諸記録を適切に管理し、そこから得られる情報を収集・加工・分析し、より良い病院運営、診療を行う指標作成や医学研究への情報提供を行うことにより、患者さん、病院に寄与する専門職です。
事務職
- 入院および外来診療録(紙運用のもの)の保管、整理、閲覧、貸出および返却回収
- 放射線フイルムの保管、整理、閲覧、貸出および返却回収
- コーディングされた病歴、職歴の入力業務
- 退院患者名簿入力
今後の目標
退院サマリーデータから各診療科別上位疾病集計報告、院内がん登録データから集計報告を作成しておりますが、今後これらの報告集を更新、発展させて行き、病院臨床指標の作成へとつなげて行くよう努力したいと考えています。また従来通り、患者さん、当院での研究事業への貢献のために情報提供、資料作成を行います。そのためには、業務に自覚と責任、誇りをもって、その精度を高める努力を続けていき、より信頼される診療情報管理室を目指します。
個人情報について
登録データに関わる個人情報の取り扱いついては、個人情報保護法及び関西労災病院プライバシーポリシーを遵守し、情報漏洩がないよう最大限の注意を払っております。皆様のご協力とご理解をお願いいたします。
● 医療情報室学術業績 (PDFファイル)
スタッフ
伊藤 善基(いとう よしき)
役職 | 医療情報部長 第二消化器内科部長 予防医療部長 |
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資格等 |
診療情報管理士 | 6名 |
事務職 | 3名(入力業務及び診療録、放射線フイルムの管理業務、職歴調査) |