ご挨拶
平素は関西労災病院不整脈科に対する格別のご支援を賜り誠にありがとうございます。このホームページでは、主に医療関係者を対象に関西労災病院不整脈診療に関する情報を提供させていただきます。
当科での心房細動治療の特色
脳梗塞予防・治療
心原性脳梗塞は心房細動による最も恐ろしい合併症のひとつで、ひとたび発症すれば半分以上の方が、亡くなられるか、重篤な後遺症を残します。関西労災病院では、不顕性心房細動(隠れ心房細動)の発見から、心房細動治療、そして脳梗塞発症後の急性期血管内治療までシームレスな診療体制をとることで、地域の心原性脳梗塞の撲滅を目指しています。

アブレーション
心房細動のアブレーションは、肺静脈隔離を中心とした治療によって心房細動の根治を目指した治療です。心房細動による症状を取り除き、QUALITY OF LIFEの向上や心不全や脳梗塞などの予防、さらには生命予後改善も期待されます。このことから治療適応患者さんは「不快な自覚症状によって困っている方」や「心房細動が根治することで予後が改善することが期待される方」となります(下表参照)
また心房細動アブレーション手技は、カテーテル手技の中では侵襲が比較的大きく、方法も施設間の違いが大きい領域です。つまりどのように治療するかで患者負担や治療成績に大きな差が出てきます。当院では、治療侵襲を低減することを目指して、麻酔科監修のもとアブレーション時の全身麻酔を導入したほか、30分クライオバルーンアブレーションなどを行っています。また難治性心房細動に対しては画一的治療方法では限界があるため、心房細動の原因となる部位を同定する最新のマッピングシステムを導入し、個々人で異なる不整脈基質を指標にしたテーラーメードアブレーションに取り組んでいます。以下、当院でのアブレーションの特徴を示します。
発作性心房細動には、30分クライオバルーンアブレーション
発作性心房細動は、肺静脈隔離を行うだけで根治する症例が大半を占めます。当院では患者さんの身体的負担をできるだけ少なくするため、クライオバルーンを用いたアブレーションを行い、カテーテル挿入から抜去まで、およそ30-40分で終わります。
持続性心房細動には、オーダーメードアブレーション
持続性心房細動は、肺静脈隔離だけで根治する場合と、その他の部位にもアブレーションが必要な場合があります。当院では、CARTOやEnsite、RHYTHMIAという最新のマッピングシステム(不整脈原因部位を調べる器具)を用いて、患者さん毎に心房細動の原因となっている領域を丁寧に調べて、アブレーションを実施します。術時間は、肺静脈隔離だけであれば60分、他の部位への治療を行う場合は追加で15~60分ほど要します。
全身麻酔下のアブレーション
心房細動へのアブレーションを受けられる方のなかで、希望される方には全身麻酔下でのアブレーションを行っています。アブレーションによる不安や痛みを感じることなく、受けていただけます。医学的観点から全身麻酔が望ましくないと判断した場合は、実施をお断りすることがありますので、ご了承ください。
CARTO system
当院では2017年1月から最新のCARTO3 version 4とCARTO UNIVU(西日本では2施設のみ)を導入しました。CARTO systemは磁気センサーを用いて心臓内でのカテーテルの位置を表示するものですが、CARTO UNIVUは、従来のX線(レントゲン)と情報を統合して表示することができます。これによって、より正確かつ迅速な不整脈診断が可能となるとともに、心臓カテーテル治療の大きな課題であった放射線被爆を大幅に減らすことができます。
最新の3次元マッピングシステム CARTO UNIVU を用いた僧房弁置換術後の心室頻拍アブレーション
カテーテル位置をより正確に認識できることで、治療成績向上や合併症低減効果があります。またカテーテル治療に伴う被曝線量を大幅に減らします。
超高解像度3次元マッピングシステム Rhythmia (リズミア)
2016年9月からRhythmiaを使用しています。西日本では2番目の施設となります。64極の電極付きバスケット状カテーテルを心臓内に挿入して、不整脈の原因部位を正確かつ迅速に診断し、治療できます。心房細動、心房頻拍、心室性期外収縮、心室頻拍などに使用します。これまでは原因部位の特定が困難であった複雑な不整脈にも、治療の道が開かれます。
同一の心房頻拍に対して、従来の3Dマッピングシステムと
Rhythmiaを用いて描出された頻拍回路の比較
赤→黄→緑→青→紫の順に興奮伝搬する様子が示されている。従来の3Dマッピングシステムでは、左心房全体で200点程度しか電位情報が取得できず、粗い画像となってしまい頻拍回路が正確に分からない。Rhythmiaでは64極のバスケット状カテーテルで自動的に電位情報を取得し、10,000点以上のポイントをもとに精密な頻拍回路を描出できた。図のギザギザ線の部分が瘢痕組織に囲まれた伝導遅延を伴う頻拍回路の峡部で、同部位へのアブレーションで心房頻拍は速やかに停止した。
左心耳閉鎖術
心原性脳梗塞の塞栓子となる血栓の90%以上は左心耳で形成されます。この手術は左心耳を閉塞して心房細動による心原性脳梗塞を防ぐことを目的としており、全身麻酔下に60分程で行います。手技成功率は95%以上で、深刻な合併症(心タンポナーデ、脳梗塞、デバイスのずれなど)は1%程度とされます。実施適応は、「心房細動による血栓塞栓症リスクが高く(概ねCHADS2スコア2点以上)抗凝固療法が必要だが、出血リスクが高いために長期にわたって抗凝固療法が実施できない患者さん」です。
2019年9月にカテーテル左心耳閉鎖術が本邦で実施開始と同時に実施認定施設として登録され、着実に実績を重ねております。実施には治療設備や術者の経験、麻酔科や心臓血管外科との連携体制などの様々な要件を満たすことが求められています。

スタッフ
- Masaharu Masuda
- 増田 正晴
- コメント
- 患者様には最大の誠意を尽くし、不整脈には最高の治療で挑み続けます。
- Takashi Kanda
- 神田 貴史
- コメント
- 不整脈でお困りの患者さんのお役に少しでもたてればと思います。
- Takuya Tsujimura
- 辻村 卓也
- コメント
- これまで冠動脈疾患・末梢動脈疾患を中心に取り組んできましたが、今後は不整脈領域においても診療をさせていただきます。
循環器領域において幅広く診療にあたれるよう努力を惜しまず取り組んでいきます。
- Yasuhiro Matsuda
- 松田 祥宏
- コメント
- 患者さんの思いに寄り添える治療を目指します。
- Hiroyuki Uematsu
- 上松 弘幸
- コメント
- 患者さんそれぞれの思いに応えられるよう、全力でかつ丁寧に診療致します。
- Akihiro Sunaga
- 須永 晃弘
- コメント
- 全ての患者さんに最新の医療を受けていただけるよう、日々努力しております。
- Eiji Fukuhara
- 福原 英二
外来担当表
医師の方々へ
患者さんをご紹介いただく先生
ご挨拶
平素より関西労災病院不整脈科へのご支援を賜り誠にありがとうございます。関西労災病院では平成28年2月に心臓血管センター内に、循環器内科・心臓血管外科と並んで不整脈科を設置しました。これはますます複雑化・高度化する不整脈診療に対して、これまで以上にしっかりと取り組んでいくためです。医師のみならず看護師や臨床工学技士などの不整脈に関わるスタッフの人員数・教育を充実させ、さらに診断・治療機器を整備して参ります。
当科に所属する医師は不整脈診療に長けているのはもちろんですが、多くの医師が心不全や虚血性心疾患治療にも携わっています。不整脈を診るのはもちろんですが、心臓という臓器が最高のパフォーマンスを上げられるよう、さらには患者さんが最も健康になれるよう常に心がけています。安全で質の高い医療を、阪神地域はもとより、広く近畿圏全体の患者さんにお届けすることを目指してスタッフ一同取り組んで参りますので、何卒よろしくお願いします。
当科の特徴
不整脈に関する診断・治療には広く対応しています。特に心房細動に対するカテーテルアブレーションでは、低侵襲(施術時間:発作性心房細動では30分、持続性心房細動では60分ほど)で良好な成績を上げています。治療成績が劣る持続性心房細動に対しても、個々の患者さんの心房の状態をvoltage mappingという方法で調べて、必要十分なアブレーションを行い、成績向上を図っています。また心室性不整脈へのアブレーションも多数実施しています。特に治療に高度な技術を要する陳旧性心筋梗塞など器質的心疾患に合併した心室頻拍や、左心室起源・心外膜起源などの期外収縮にも積極的に取り組んでいます。
● 関西労災病院 心房細動アブレーションの概要 (382KB)
診断・治療設備
診断機器として、長期間記録型ホルター心電図(7日間)、携帯心電計、加算平均心電図などが実施可能です。また治療設備では、ハイブリッド手術室を運用し、ペースメーカなどの植込みを清潔な環境で行っています。また心房細動に対する冷凍凝固(クライオ)バルーンアブレーションを2016年3月から導入しています。さらに持続性心房細動や心房頻拍、心室頻拍など複雑な不整脈アブレーションに威力を発揮する超高解像度3次元マッピングシステム(Rhythmia)を2016年9月(西日本では2番目)から導入します。その他、着用型除細動器やペースメーカの遠隔モニタリングシステムなど先進的な治療機器の整備に積極的に取り組んでいます。
ご紹介について
当科へご紹介いただく際には、「診療情報提供書」をダウンロードいただき、関西労災病院地域医療室へFAXして予約をお取りください。詳しくは下記「紹介患者さんのご予約について」をご覧ください。
もちろん貴院で作成いただいた診療情報提供書を持って、患者さんの都合の良い日に受診していただいても結構です。原則として何曜日でも不整脈を専門にした医師が診療させていただきます。
貴院の患者さんに当科についてご紹介いただき際に、「不整脈科紹介リーフレット」をご使用いただけましたら幸いです。
● 不整脈科紹介リーフレット (667KB)
地域医療室
予約受付:月曜日〜金曜日 8時15分~19時
TEL:06-6416-1785(直通) 06-6416-1221(代)(内線7080)
FAX:06-6416-8016(直通)
FAXは24時間対応です。 但し、予約受付時間外にお申し込みいただいた場合、
予約回答書の送付は、 翌日あるいは祝休日明けとなります。
見学希望の先生
医師、看護師、臨床工学技士など医療職の方の当科での治療手技の見学を随時受け入れています。2019年度は合計20回の見学会を実施させていただき、47名の方にご参加いただきました。内容は、リズミアマッピングシステムによる難治性心房頻拍治療、CARTOシステムを用いた肺静脈隔離、30分クライオバルーンアブレーションなどです。
当科での見学が、貴施設の診療のご参考になれば幸いですし、先生方とのディスカッションを通して、私どもも一緒に成長させていただきたいと考えています。
神戸市立医療センター中央市民病院
土谷総合病院
奈良県立医科大学附属病院
北播磨総合医療センター
不整脈フェローを希望の先生
不整脈は循環器内科の中でも特に専門性が高い領域です。習得には循環器一般の知識、技能に加えて心臓構造学、電気生理学、イオンチャネルの理解から薬理学まで幅広い座学が必要です。しかしそれだけでは不十分で、カテーテルアブレーション、心臓植込みデバイスの理解、技術を高める必要があります。また臨床医として世界の第一線で活躍するには学会活動も不可欠です。
当院では近畿圏有数のカテーテルアブレーション、心臓植込み電気デバイスの症例数があります。高度な技術を要する長期間持続性心房細動や心室頻拍に対するカテーテルにも積極的に取り組んでいます。フェロー医師の先生には、積極的にアブレーションやデバイス治療に参加して、短期間で幅広い知識・技能を習得していただけます。さらに当院循環器内科全体が臨床研究に積極的に取り組んでおり、不整脈グループでも各自が2~3の臨床研究テーマを持って国内外の学会発表や論文報告を行っています。
不整脈に興味のある若手の先生は遠慮なくご連絡ください。是非一緒に頑張りましょう。
募集要項
対象
卒後5年目~10年目程度で、これから不整脈治療手技を学ぶことを希望する医師。
不整脈に関する経験は問いません。
期間
1年から3年程度
業務内容
主に不整脈症例の入院管理、治療手技への参加。
ただし循環器内科当直(月に2回程度)など循環器内科全体の業務も多少していただくことになります。
連絡先
関西労災病院 不整脈科 増田 正晴
メールアドレス: masuda-masaharu
研究成果・活動報告
学術論文
・心房細動の研究
・超高解像度マッピングシステムに関する研究
・ペースメーカ等心臓植込みデバイスに関する研究
※アイコンをクリックすると詳細ページに移ります。
啓発活動
- No!脳梗塞 兵庫県から脳梗塞を撲滅する!
心房細動の多くは脳梗塞を発症するまで症状がなく、本人も気付かないことがあります。そのような「隠れ心房細動」を発見して、後遺症の残る脳梗塞の発症を一人でも減らすべく、不整脈科では病院を飛び出して、検脈普及活動「レッツ検脈!」や「出張心電図」を県下各地で実施中です。
尼崎市民祭りでは、「出張心電図」を行い150名以上の方の心電図を記録しました。(2018年10月8日)
写真は稲村尼崎市長から激励をいただいているところです。
宝塚では市民公開講座、「脳梗塞予防のためのレッツ検脈」を開催し、300名以上の市民の方と実際に検脈を行いました。(2018年7月28日)
メディア情報
- 2018年3月4日付け読売新聞(病院の実力)に、関西ろうさい病院が不整脈治療の実績がある主な医療機関として掲載されました。また、不整脈の特徴と最新治療について説明する当院不整脈科主任 増田正晴医師の記事が掲載されました。
記事には、最も注意すべき不整脈は心房細動と心室細動であり、心房細動に対する治療法としてはカテーテルアブレーションが有効であること、当院では治療時の痛みを取る取り組みを行っていること、心房細動に対する治療法として、不整脈を自動的に感知して止める植え込み型除細動器が推奨されること、早期発見のために定期的な健康診断や自分で脈を調べる「検脈」が勧められ、異常を感じたら専門医に相談し、適切に対処すれば心房細動や心室細動は防ぐことができる等の説明がありました。
2018年3月4日読売新聞紙面(クリックすると拡大します)(307KB)
- 2014年12月7日付け神戸新聞において、増田正晴医師が参加した「心不全に対するCRT治療座談会」の特集記事が掲載されました。
学会発表
- 2019年11月 不整脈心電学会アブレーション関連秋季大会のフォアヌーンセッションにて、当科の増田が、安全・有効・低コストなシンプル・クライオバルーンアブレーションについての講演を行いました。
- 2018年11月 不整脈心電学会アブレーション関連秋季大会の教育セッションにて当科の増田が、最新の3Dマッピングシステムに関する講演を行いました。
- 2018年3月 スペイン・バルセロナで開催されたヨーロッパ不整脈学会(EHRA)において、増田医師、松田医師らが、心房細動患者における心房低電位不整脈基質についての発表や最新の不整脈診断機器(リズミア)を用いた新しい心室性不整脈治療法について発表を行い、注目すべき発表(focus on Japan)として、表彰されました。
- 2017年9月、心臓病学会が大阪で開催され、不整脈科からは神田医師が持続性心房細動アブレーション術後のQOLについて、シンポジウムで発表し大きな反響をいただきました。
- 2017年7月、不整脈心電学会が横浜で開催され、不整脈科からは増田医師が「心房線状アブレーションと電位波高」「左房低電位領域と発作性心房細動アブレーション後の再発」「コンタクトフォース時代のpace-capture法を用いた肺静脈二重隔離の有用性」について、神田医師からは「心不全合併心房細動」について、大橋医師からは「心房細動アブレーション周術期のQOL」について発表しました。。
- 日本循環器学会年次総会が金沢で開催され、不整脈科からは増田医師、須永医師、辻医師が発表しました。演題は、「低電位領域と左房圧の関係」、「MIBGシンチグラフィを用いた生理的洞徐脈と病的洞徐脈の鑑別」、「皮膚灌流圧による心不全症例での末梢循環不全定量化の試み」などです。特に辻医師のmultiple and unstable ATのアブレーションについての発表は、”Excellent case presentation”に選ばれ、従来は治療困難であったATに対する新しい治療戦略として大いに注目を集めました。
- 2017年デバイス関連冬季大会chaired poster sessionにおいて、循環器内科奥野医師が「植え込み型除細動器の誤作動についての症例報告」を行い活発な討論を行いました。
- 2016年11月、大阪市にて開催された「第122回循環器学会近畿地方会」において、関西ろうさい病院不整脈科の神田貴史医師が「植込み型除細動器のショックインピーダンス特性に関する研究」について発表を行い、YIA優秀賞を受賞しました。
- 2016年11月、米国ニューオリンズで開催された米国心臓病学会において、関西ろうさい病院循環器内科の神田医師が「心房細動アブレーション後の左房機能の変化」および「心房細動アブレーション術中のトリガー同定可否と術後再発の関連」について、松田医師が「心房細動アブレーション後の止血ガーゼ(カオリンガーゼ)の有効性」について発表を行いました。
- 2016年10月福岡で開催されたカテーテルアブレーション大会において、当科の大橋医師の発表がchaired posterに選ばれました。
- 2015年11月日本循環器学会近畿地方会(大阪)において、辻朱希先生が「肥大型心筋症に合併した心房細動の治療」に関する症例報告を行い、「学生・初期研修医セッション 優秀演題賞」を受賞しました。
- 2015年5月Heart Rhythm 2015において、増田医師の「心房細動アブレーションが心臓交感神経活性に与える影響についての検討」が、Featured Posterに選ばれました。
- 2015年2月 不整脈学会 第7回植込みデバイス関連冬季大会において、須永晃弘医師が「CTを用いたペースメーカリード留置部位と心電図の特徴」について研究成果を報告し、「Best Abstract」賞を受賞しました。