心臓立体モデルを用いた術前評価方法について

僧帽弁閉鎖不全症の手術(僧帽弁形成術)において、患者さんの心臓の弁を事前に3Dプリンターで作製し、心臓手術の術前評価に使用しました。

僧帽弁閉鎖不全症とは

僧帽弁閉鎖不全症は、僧帽弁に逆流が発生し、心臓の拡大や心機能の低下を招き、結果として不整脈や息苦しさを引き起こす病気です。逆流を治す方法として自己の弁膜を切り貼りして修復する「形成術」や、人工弁に置き換える「人工弁置換術」があります。

新しい術前評価方法:心臓立体モデル

従来は、主に心エコー検査で逆流の度合いや弁の壊れ方を確認していました。近年では口から飲み込む経食道心臓超音波検査で3次元表示も可能になっています。しかし、それでも壊れた弁を直接触って確認できる心臓立体モデルは、外科医にとって極めて有用な評価方法です。今回は、その患者さんの心臓立体モデルを用いて術前評価を詳細かつ立体的に行い、手術を予定どおりトラブルなく施行しました。術後の心エコー検査で弁の逆流が止まっていることを確認しました。

3Dプリンターで作製した僧帽弁の立体モデル

立体モデルのサイズを確認している様子

世界中で進む臨床応用

この手法は世界中の医療機関で開発が進んでいる病気の新しい評価方法です。心臓血管外科では2014年秋から各種の心臓血管手術で導入を始め、放射線科の協力を得て、術前に撮影したCT画像からその人の心臓立体データを構築し、3Dプリンターで造形して術前評価に役立てています。従来から手術前に撮影していたCT画像を転用するので患者さんの検査負担、費用負担は増えません。

3Dプリンター

ご自分の僧帽弁の立体モデルを手にする患者さん

協力

日本心臓血管3次元モデル研究会

株式会社エルアンドエル

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