泌尿器科

最新機器による高度医療から排尿ケアまで

膀胱電子スコープ

▲膀胱電子スコープ

当科のスタッフは、2023年4月現在で日本泌尿器科学会の専門医・指導医2名、医員4名の計6人体制となり、幅広い年代層かつ若い活力が期待できる布陣となっております。

泌尿器科領域で腎移植関係以外の疾患全てに対応可能で、副腎疾患に対する診断・手術療法および尿失禁など他科との境界領域にも積極的に取り組んでいます。

外来では、特に男性の患者さんにとり痛みが強い膀胱鏡検査に膀胱電子スコープを用いることにより苦痛を軽減し、精密な膀胱内の観察と画像のファイリング化を達成しています。また、2012年よりハイビジョンシステムにバージョンアップし、狭帯域光観察(NBI)による観察も可能となり病変の見落しの確率がより低くなりました。

治療法の選択に際しては、治療しない選択肢を含め出来る限りの情報を患者さんに提供して一緒に考えていく姿勢をモットーとしています。そして、どのような治療に関しても患者さんのQOLを重視した内視鏡的治療を主軸とした診療体系を構築し、今までは開腹手術で行われていたもののほとんどを腹腔鏡下手術やロボット支援手術で行うようになりました。

部長の田口、奥野副部長共に日本泌尿器科学会および日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会の定める「泌尿器腹腔鏡技術認定制度」および「泌尿器ロボット支援手術プロクター認定制度」に認定されています。

最近増加している尿失禁に対しては、日本排尿機能学会の認定する排尿機能検査士の資格を外来看護師が取得しており、女性ならではの視点から検査・治療に関わっていただいております。特に女性の尿失禁患者さんにとって受診していただきやすい体制となっております。

また、当科医師を中心に排尿機能検査士の資格を持った外来看護師、理学療法士、皮膚排泄ケア認定看護師、脳卒中リハビリテーション認定看護師からなる排尿ケアチームを編成し、院内全科を対象に排尿に関する包括的ケアを積極的に行っています。→詳細はこちら

手術支援ロボットによる腹腔鏡下手術のお知らせ

手術支援ロボットが新機種(da Vinci Xi)に更新され手術適応が拡がりました

2019年3月より手術支援ロボット(da Vinci)が最新機種のXiシステムに更新されました。各パーツがスリム化して動作可能範囲が拡がり、画像システムもグレードアップされたことにより更に精密な手術を行うことが可能となり、適応範囲も拡がりました。当科でも2019年5月から浸潤性膀胱癌に対するロボット支援下膀胱全摘除術(RARC)を2023年3月までに24症例に、ロボット支援腎盂形成術(RAPP)を19例に施行しております。さらに2022年からは、ロボット支援下根治的腎摘除術(RARN)ロボット支援下腎尿管全摘除術(RANU)にも取り組んでおり、現在までにそれぞれ6例と2例に施行しています。

手術支援ロボット腹腔鏡下腎部分切除術について

2016年4月より小径腎癌に対するロボット支援手術が保険適応となりました。当院でも十分な準備を行った上でロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術(RAPN)を開始し、2023年3月までに105例に施行し良好な成績を得ています。本手術は手術支援ロボットの特徴である良好な視認性と人間の手を越える巧緻性を活かして、従来の腹腔鏡下手術を上回る成績が期待されるものです。

手術支援ロボットによる前立腺全摘除術について

2014年11月からロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RALP)を開始しております。

患者さんの肉体的、精神的負担の軽減につながる医療の低侵襲化が各科領域で進んでいます。泌尿器科領域の疾患に対する手術手技においても、術後のより早い回復や疼痛の軽減、入院期間の短縮などに結びつく手術の低侵襲化が推奨され、様々な術式が普及しています。この様な観点から、当科では局所限局性前立腺癌に対する根治的治療である腹腔鏡下前立腺全摘除術に早くから取り組んでおり更なる発展として本術式の導入に至りました。

高齢化社会の進行や食生活の変化を背景に、前立腺癌患者も増加の傾向にあります。2010年の国内の性別癌罹患率では胃癌、肺癌、大腸癌に続き、前立腺癌が男性第4位の癌でした。そして、2020年には肺癌に続き第2位の癌になることが予測されています。

RALPの導入により、手術に伴う安全性および生活の質(QOL)の改善のみならず、制癌性の点でも成績が向上し、患者さん方の利益に繋がることが期待されます。なお、2023年3月までに419症例に対して施行し、全例輸血を必要とせず安全に行えております。

ロボット支援手術とは

もちろんロボット支援手術といってもロボットが独自に手術を行うわけではありません。医師がロボット操作用の台であるコンソールから、3次元立体画像を見ながら手術用の鉗子類を装着したロボットアームを操作して手術を行います。腹部に小さな穴を開け、炭酸ガスでお腹を膨らませた上で内視鏡や鉗子類を入れて手術を行うという点では、当科でも早くから取り組んできた腹腔鏡手術と基本的には同じです。

ダヴィンチシステムでは、高倍率の拡大立体視野がハイビジョンで得られ、内視鏡カメラやロボットアームに装着された鉗子類は術者のコントロール下に置かれます。この7つの関節を有する鉗子は、関節の540度回転など人間の手をはるかに超えた動きが可能で、手先の震えが伝わらない手振れ補正機能があり、安全で精密な手術が可能となります。

鉗子類は術者の指示を忠実に再現

鉗子類は術者の指示を忠実に再現

また、前機種のda Vinci Siシステムからシミュレーションシステムが搭載されておりXiでは更に精度が高度化しました。実際の手術手技を模したトレーニングが可能で、医療技術の向上にも大きく貢献します。

レーニング

実際に手術を行っている感覚でトレーニングすることができ、教育面での質的向上が図れる

3D腹腔鏡による手術

2013年末より3D腹腔鏡システムを導入しており、当科では全ての腹腔鏡下手術で使用しております。偏光レンズ眼鏡をかけることにより、従来平面的にしか見えていなかった腹腔鏡の術野が、通常の立体的な視野で観察できるようになっています。縫合操作が非常に容易に行えるようになる、鉗子操作がより正確なものとなる等の立体視のメリットにより、患者さんに更に優しい手術を提供できるようになりました。

腹腔鏡手術

グリーンライトレーザーによる光選択的前立腺蒸散術(PVP)について

光選択的前立腺蒸散術(PVP)の実際光選択的前立腺蒸散術(PVP)の実際

▲Green Light XPS TM レーザーシステム

前立腺肥大症(BPH)と光選択的前立腺蒸散術(PVP)について

BPHは、中年以上の男性が罹患する最も多い疾患の一つです。軽症や中等症の場合には主に薬物療法を行いますが、重症の場合には外科的治療が選択されることが多く、現在は経尿道的前立腺切除術(TUR-P)が多く行なわれています。しかしTUR-Pは、出血などいくつかの合併症の問題があります。このような背景から、『より患者さんに優しい治療を』 とのコンセプトのもと、GreenLightレーザー療法 — 光選択的前立腺蒸散術(PVP)–が開発され、2011年7月より保険適応を受けました。

この新しい手術法は出血が少なく、効率の良い組織の蒸散(蒸発)と凝固が可能であり、BPHに対する最も安全で有効な低侵襲療法の1つであると考えられています。 BPHがあり、外科的治療で排尿状態の改善が期待できると考えられる場合に良い適応です。他の治療法と比べて、出血が非常に少ない方法であるため、高齢や脳血管障害、心疾患などの理由で従来の手術を受け難い場合にも、比較的安全に施行できる可能性があります。

光選択的前立腺蒸散術(PVP)の実際

光選択的前立腺蒸散術(PVP)の実際

麻酔は全身麻酔もしくは腰椎麻酔で、手術は経尿道的に行います。側射型レーザープローブで、レーザーを前立腺組織にあて、組織を蒸散させて肥大した部分を消滅させます。輸血の心配はほとんどなく、手術時間は肥大の程度により変わりますが、おおよそ70分~90分です。
尿道カテーテル抜去のタイミングは術後の状態により判断しますが、ほとんどの場合手術翌日には抜去可能で、入院期間は他の治療法より短くなります。
なお、本手術は欧米では広く行われており、既に90万人以上の良好な治療実績があります。

PVPの長所

  • 手術中や術後の出血が少ない
  • 術後に尿道カテーテルが早く(1~2日)抜ける
  • 尿道カテーテルを抜くと、尿の出かたが速やかに回復する
  • 術後の排尿時の痛みが少ない
  • 性機能への悪影響が少ない
  • 入院期間が短く社会復帰が早い

当院のPVPについての記事を最新情報コーナーに掲載しています。こちらもご覧ください。

 

表在性膀胱癌に対する最新の治療について

2020年から保険診療で光線力学診断を用いた経尿道的膀胱腫瘍切除術を受けていただくことができるようになりました。
従来から表在性の膀胱癌の初期治療は経尿道的切除術が行われています。体表に創をつけないため低侵襲であるのですが、再発率が高いことが欠点であり再発を繰り返すうちに浸潤性に進行することがあります。再発率を低減するために5-アミノレブリン酸(アラグリオ顆粒®)という薬剤を内服していただき、通常の内視鏡観察に用いる白色光に加え特殊な青色光を用いた観察を行うと腫瘍が赤く発光するという原理を利用して腫瘍の取り残しを防止する術式を行います。

腹腔鏡下手術の成績(2004年4月~2023年3月。全1,782例)

副腎摘除術(良性)
副腎摘除術(悪性)
92例、平均手術時間202分、平均出血量30ml
17例、平均手術時間251分、平均出血量70ml
根治的腎摘除術 268例、平均手術時間287分、平均出血量58ml
腎尿管全摘除術 229例、平均手術時間401分、平均出血量168m
腎盂形成術 85例、平均手術時間276分、平均出血量12ml
単純腎摘除術 63例、平均手術時間283分、平均出血量85ml
腎部分切除術 94例、平均手術時間274分、平均出血量137ml
前立腺全摘除術 271例、平均手術時間303分、平均出血量593ml(尿を含む)
ロボット支援
前立腺全摘除術
417例、平均手術時間321分、平均出血量100ml(尿を含む)
ロボット支援
腎部分切除術
105例、平均手術時間330分、平均出血量54ml(尿を含む)
ロボット支援
膀胱全摘除術
24例、平均手術時間594分、平均出血量257ml(尿を含む)
ロボット支援
腎盂形成術
18例、平均手術時間366分、平均出血量11ml(尿を含む)
ロボット支援
根治的腎摘除術
6例、平均手術時間386分、平均出血量35ml
ロボット支援
腎尿管全摘除術
2例、平均手術時間473分、平均出血量 少量
その他 92例
(精索静脈瘤手術13例、後腹膜腫瘍摘除術28例、腎嚢胞壁切除術8例、尿膜管摘除11例、腎門部リンパ管遮断術4例 など)
合併症 全例において輸血例なし。根治的腎摘除術で開腹術へ移行が1例、前立腺全摘除術で尿管損傷2例、尿道直腸瘻1例、RAPNで腎摘除術へ移行が2例、RARCで直腸損傷1例など

尿失禁治療装置について

ウロマスター

▲干渉低周波による尿失禁治療器
(ウロマスター)

2009年4月より低周波刺激による尿失禁治療が可能となりました。前立腺の術後尿失禁や特に女性の尿失禁に対して効果があります。外来での治療が可能で、保険適応されています。治療のお手伝いは女性看護師が行います。

尿流量測定装置について

フロースカイ

▲通常のトイレ型の尿流量測定装置
(フロースカイ)

実際の排尿の状態を調べるために尿流量測定という検査を行っています。従来は検査のためには特別な機械に向かって排尿することが必要でしたが、普通のトイレで検査が可能となった画期的な装置(TOTO社製)を導入しております。患者さんが家庭におられる感覚で検査を受けていただけます。

2022年患者統計(2022年1月~2022年12月)

外来新患 1,274人(男性881人、女性393人)
入院 972人(男性811人、女性161人)
平均在院患者数 18.1人
平均在院日数 6.8日
手術件数 896件
(開創手術266件、内視鏡手術526件、ロボットを含む腹腔鏡手術104件など)
体外衝撃波結石破砕術 70件

主な手術の内訳(2022年1月~2022年12月)

開創手術

開創手術

腹腔鏡手術

腹腔鏡手術

内視鏡手術

内視鏡手術

 

泌尿器科学術業績 (PDFファイル)

スタッフ

田口 功(たぐち いさお)

第3部長:田口 功

役職 部長
卒業年 平成3年
資格等 日本泌尿器科学会泌尿器科専門医・指導医
日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 腹腔鏡技術認定医・代議員
日本内視鏡外科学会泌尿器腹腔鏡技術認定医
医学博士(平成10年 神戸大学)
緩和ケア研修会修了
臨床研修指導医講習会修了

手術支援ロボット「ダヴィンチ」術者認定

泌尿器ロボット支援手術プロクター認定

奥野 優人(おくの まさと)

副部長:奥野 優人

役職 副部長
卒業年 平成18年
資格等 日本専門医機構認定泌尿器科専門医
日本泌尿器科学会認定泌尿器科指導医
日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 腹腔鏡技術認定医・代議員
日本内視鏡外科学会泌尿器腹腔鏡技術認定医
ICD制度協議会認定インフェクションコントロールドクター(ICD)
産業医選任資格
日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会ストーマ認定士
緩和ケア研修会修了
手術支援ロボット「ダヴィンチ」術者認定
泌尿器ロボット支援手術プロクター認定

田 寛之(でん ひろゆき)

 

役職 医員
卒業年 平成27年
資格等 日本泌尿器科学会泌尿器科専門医
手術支援ロボット「ダヴィンチ」術者認定
緩和ケア研修会修了

髙瀬 雄太(たかせ ゆうた)

 

役職 医員
卒業年 平成28年
資格等 日本泌尿器科学会泌尿器科専門医
手術支援ロボット「ダヴィンチ」術者認定
緩和ケア研修会修了

坂本 裕章(さかもと ひろあき)

役職 医員
卒業年 平成29年
資格等 日本泌尿器科学会泌尿器科専門医
緩和ケア研修会修了

森田 祥平(もりた しょうへい)

役職 医員
卒業年 平成30年
資格等 緩和ケア研修会 修了
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