最新機器による高度医療から排尿ケアまで
▲膀胱電子スコープ
当科のスタッフは、2020年4月より日本泌尿器科学会の専門医・指導医4名、医員1名および後期臨床研修医2名の計7人体制となり、幅広い年代層かつ若い活力が期待できる布陣となっております。
泌尿器科領域で腎移植関係以外の疾患全てに対応可能で、副腎疾患に対する診断・手術療法および尿失禁や膀胱瘤の治療など他科との境界領域にも積極的に取り組んでいます。
外来では、特に男性の患者さんにとり痛みが強い膀胱鏡検査に膀胱電子スコープを用いることにより苦痛を軽減し、精密な膀胱内の観察と画像のファイリング化を達成しています。また、2012年よりハイビジョンシステムにバージョンアップし、狭帯域光観察(NBI)による観察も可能となり病変の見落しの確率がより低くなりました。
治療法の選択に際しては、治療しない選択肢を含め出来る限りの情報を患者さんに提供して一緒に考えていく姿勢をモットーとしています。そして、どのような治療に関しても患者さんのQOLを重視した内視鏡的治療を主軸とした診療体系を構築し、今までは開腹手術で行われていたもののほとんどを腹腔鏡下手術やロボット支援手術で行うようになりました。
部長の川端は本邦における泌尿器腹腔鏡下手術のパイオニアの1人で、現在まで2,100例以上の経験を有し、他施設への手術指導、学会主催の講習会等の講師に招請されています。2005年より開始された「腹腔鏡技術認定制度」にて認定され審査委員も務め、田口部長、奥野医師および角井医師も認定を受けております。ロボット支援手術においても手術指導を行うプロクターに田口部長と共に認定されています。
最近増加している尿失禁に対しては、日本排尿機能学会の認定する排尿機能検査士の資格を外来看護師3名が取得しており、女性ならではの視点から検査・治療に関わっていただいております。特に女性の尿失禁患者さんにとって受診して頂きやすい体制となっております。
また、当科医師を中心に排尿機能検査士の資格を持った外来看護師、理学療法士、皮膚排泄ケア認定看護師、脳卒中リハビリテーション認定看護師からなる排尿ケアチームを編成し、院内全科を対象に排尿に関する包括的ケアを積極的に行っています。→詳細はこちら
手術支援ロボットによる腹腔鏡下手術のお知らせ
手術支援ロボットが新機種(da Vinci Xi)に更新されました
2019年3月より手術支援ロボット(da Vinci)が最新機種のXiシステムに更新されました。各パーツがスリム化して動作可能範囲が拡がり、画像システムもグレードアップされたことにより更に精密な手術を行うことが可能となり、適応範囲も拡がりました。当科でも2019年5月から浸潤性膀胱癌に対するロボット支援下膀胱全摘除術(RARC)も開始しており2020年5月までに5症例に施行しております。
手術支援ロボット腹腔鏡下腎部分切除術について
2016年4月より小径腎癌に対するロボット支援手術が保険適応となりました。当院でも十分な準備を行った上でロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術(RAPN)を開始し、2020年5月までに67例に施行し良好な成績を得ています。本手術は手術支援ロボットの特徴である良好な視認性と人間の手を越える巧緻性を活かして、従来の腹腔鏡下手術を上回る成績が期待されるものです。
手術支援ロボットによる前立腺全摘除術について
2014年11月からロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RALP)を開始しております。
患者さんの肉体的、精神的負担の軽減につながる医療の低侵襲化が各科領域で進んでいます。泌尿器科領域の疾患に対する手術手技においても、術後のより早い回復や疼痛の軽減、入院期間の短縮などに結びつく手術の低侵襲化が推奨され、様々な術式が普及しています。この様な観点から、当科では局所限局性前立腺癌に対する根治的治療である腹腔鏡下前立腺全摘除術に早くから取り組んでおり更なる発展として本術式の導入に至りました。
高齢化社会の進行や食生活の変化を背景に、前立腺癌患者も増加の傾向にあります。2010年の国内の性別癌罹患率では胃癌、肺癌、大腸癌に続き、前立腺癌が男性第4位の癌でした。そして、2020年には肺癌に続き第2位の癌になることが予測されています。
RALPの導入により、手術に伴う安全性および生活の質(QOL)の改善のみならず、制癌性の点でも成績が向上し、患者さん方の利益に繋がることが期待されます。なお、2020年5月までに294症例に対して施行し、全例輸血を必要とせず安全に行えております。詳しくは、泌尿器科外来までお問い合わせください。
ロボット支援手術とは
もちろんロボット支援手術といってもロボットが独自に手術を行うわけではありません。医師がロボット操作用の台であるコンソールから、3次元立体画像を見ながら手術用の鉗子類を装着したロボットアームを操作して手術を行います。腹部に小さな穴を開け、炭酸ガスでお腹を膨らませた上で内視鏡や鉗子類を入れて手術を行うという点では、当科でも早くから取り組んできた腹腔鏡手術と基本的には同じです。
ダヴィンチシステムでは、高倍率の拡大立体視野がハイビジョンで得られ、内視鏡カメラやロボットアームに装着された鉗子類は術者のコントロール下に置かれます。この7つの関節を有する鉗子は、関節の540度回転など人間の手をはるかに超えた動きが可能で、手先の震えが伝わらない手振れ補正機能があり、安全で精密な手術が可能となります。

鉗子類は術者の指示を忠実に再現
また、前機種のda Vinci Siシステムからシミュレーションシステムが搭載されXiでは更に精度が高度化しました。実際の手術手技を模したトレーニングが可能で、医療技術の向上にも大きく貢献します。

実際に手術を行っている感覚でトレーニングすることができ、教育面での質的向上が図れる
3D腹腔鏡による手術
2013年末より3D腹腔鏡システムを導入しており、当科では全ての腹腔鏡下手術で使用しております。偏光レンズ眼鏡をかけることにより、従来平面的にしか見えていなかった腹腔鏡の術野が、通常の立体的な視野で観察できるようになっています。縫合操作が非常に容易に行えるようになる、鉗子操作がより正確なものとなる等の立体視のメリットにより、患者さんに更に優しい手術を提供できるようになりました。
グリーンライトレーザーによる光選択的前立腺蒸散術(PVP)について
前立腺肥大症に対する最新の手術治療法として、AMS社製GreenLight®HPSレーザーシステムを導入し、2012年から2020年4月までに500例以上の治療を行いました。なお、当院は関西地区では最初の導入施設です。また、部長の川端は本手術のトレーナーとしての認定を受けております。

▲AMS社製 GreenLight®HPSレーザーシステム
前立腺肥大症(BPH)と光選択的前立腺蒸散術(PVP)について
BPHは、中年以上の男性が罹患する最も多い疾患の一つです。軽症や中等症の場合には主に薬物療法を行いますが、重症の場合には外科的治療が選択されることが多く、現在は経尿道的前立腺切除術(TUR-P)が多く行なわれています。しかしTUR-Pは、出血などいくつかの合併症の問題があります。このような背景から、『より患者さんに優しい治療を』 とのコンセプトのもと、GreenLightレーザー療法 — 光選択的前立腺蒸散術(PVP)–が開発され、2011年7月より保険適応を受けました。
この新しい手術法は出血が少なく、効率の良い組織の蒸散(蒸発)と凝固が可能であり、BPHに対する最も安全で有効な低侵襲療法の1つであると考えられています。 BPHがあり、外科的治療で排尿状態の改善が期待できると考えられる場合に良い適応です。他の治療法と比べて、出血が非常に少ない方法であるため、高齢や脳血管障害、心疾患などの理由で従来の手術を受け難い場合にも、比較的安全に施行できる可能性があります。
光選択的前立腺蒸散術(PVP)の実際と治療成績

麻酔は全身麻酔もしくは腰椎麻酔で、手術は経尿道的に行います。側射型レーザープローブで、レーザーを前立腺組織にあて、組織を蒸散させて肥大した部分を消滅させます。輸血の心配はほとんどなく、手術時間は肥大の程度により変わりますが、おおよそ70分~90分です。
尿道カテーテル抜去のタイミングは術後の状態により判断しますが、ほとんどの場合手術翌日には抜去可能で、入院期間は他の治療法より短くなります。
なお、本手術は欧米では広く行われており、既に90万人以上の良好な治療実績があります。
PVPの長所
- 手術中や術後の出血が少ない
- 術後に尿道カテーテルが早く(1~2日)抜ける
- 尿道カテーテルを抜くと、尿の出かたが速やかに回復する
- 術後の排尿時の痛みが少ない
- 性機能への悪影響が少ない
- 入院期間が短く社会復帰が早い
おわりに
PVPは欧米では広く普及しており、全世界で現在1000台以上が稼働しており、日本で早くに導入された他病院での治療成績も非常に良好と報告されています。
前立腺肥大症による排尿障害でお困りの方は、可能な限り紹介状を持参の上、泌尿器科外来にご相談下さい。
【地域医療室】TEL:06-6416-1785
当院のPVPについての記事をメディア情報コーナーに掲載しています。こちらもご覧ください。
表在性膀胱癌に対する最新の治療について
2020年から保険診療で光線力学診断を用いた経尿道的膀胱腫瘍切除術を受けていただくことができるようになりました。
従来から表在性の膀胱癌の初期治療は経尿道的切除術が行われています。体表に創をつけないため低侵襲であるのですが、再発率が高いことが欠点であり再発を繰り返すうちに浸潤性に進行することがあります。再発率を低減するために5-アミノレブリン酸(アラグリオ顆粒®)という薬剤を内服していただき、通常の内視鏡観察に用いる白色光に加え特殊な青色光を用いた観察を行うと腫瘍が赤く発光するという原理を利用して腫瘍の取り残しを防止する術式を行います。
腹腔鏡下手術の成績(平成16年4月~令和1年12月。全1,405例)
副腎摘除術 | 82例、平均手術時間196分、平均出血量49ml |
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根治的腎摘除術 | 230例、平均手術時間287分、平均出血量65ml |
腎尿管全摘除術 | 183例、平均手術時間396分、平均出血量187ml |
腎盂形成術 | 83例、平均手術時間275分、平均出血量21ml |
単純腎摘除術 | 52例、平均手術時間289分、平均出血量111ml |
腎部分切除術 | 94例、平均手術時間274分、平均出血量137ml |
前立腺全摘除術 | 271例、平均手術時間303分、平均出血量593ml(尿を含む) |
ロボット支援 前立腺全摘除術 |
274例、平均手術時間310分、平均出血量95ml(尿を含む) |
ロボット支援 腎部分切除術 |
60例、平均手術時間327分、平均出血量56ml(尿を含む) |
その他 | 76例 (精索静脈瘤手術10例、後腹膜腫瘍摘除術13例、腎嚢胞壁切除術8例、尿膜管摘除8例など) |
合併症 | 全例において輸血例なし。根治的腎摘除術で開腹術へ移行が1例、前立腺全摘除術で尿管損傷2例、尿道直腸瘻1例 |
尿失禁治療装置について
▲干渉低周波による尿失禁治療器
(ウロマスター)
2009年4月より低周波刺激による尿失禁治療が可能となりました。前立腺の術後尿失禁や特に女性の尿失禁に対して効果があります。外来での治療が可能で、保険適応されています。治療のお手伝いは女性看護師が行います。
尿流量測定装置について
▲通常のトイレ型の尿流量測定装置
(フロースカイ)
実際の排尿の状態を調べるために尿流量測定という検査を行っています。従来は検査のためには特別な機械に向かって排尿することが必要でしたが、普通のトイレで検査が可能となった画期的な装置(TOTO社製)を導入しております。患者さんが家庭におられる感覚で検査を受けていただけます。
ESWL(体外衝撃波結石破砕)装置について
▲ESWL新機種
(ドルニエリソトリプターD)
2005年12月より体外衝撃波尿路結石破砕装置はドルニエメディカル社製の「リソトリプターD」を使用しています。
本機種の特徴として、今まで必要であった硬膜外麻酔が不要になり、従来のものより低侵襲下での治療が可能となりました。また、本機種は衝撃波発生装置自体が回転することで、さまざまな位置の結石を治療することが可能となり(今までは下部尿管結石は治療出来ませんでした)、レントゲンに写らない結石も超音波による探査が可能となったため治療ができ、衝撃波の強さも多段階に調節できるため、痛みに弱い方にも対応できるようになりました。 上記のように従来の機種より治療中の疼痛が少ない上に破砕力に優れており、治療回数がほぼ半減しております。
下図のように衝撃波発生装置自体が回転・移動することにより、さまざまな位置の結石を探査・破砕することが可能となりました。
▲自在に回転する衝撃波発生装置
令和1年患者統計(平成31年1月~令和1年12月)
外来新患 | 1,417人(男性965人、女性452人) |
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入院 | 973人(男性813人、女性160人) |
平均在院患者数 | 22.7人 |
平均在院日数 | 8.5日 |
手術件数 | 842件 (開放手術72件、内視鏡手術421件、ロボットを含む腹腔鏡手術127件など) |
体外衝撃波結石破砕術(ESWL) | 70件 |
主な手術の内訳(平成31年1月〜令和1年12月)
開創手術
腹腔鏡手術
内視鏡手術
● 泌尿器科学術業績 (PDFファイル)
スタッフ
川端 岳(かわばた がく)
役職 | 部長 |
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卒業年 | 昭和55年 |
資格等 | 神戸大学臨床教授 日本泌尿器科学会 指導医・専門医 日本内視鏡外科学会 評議員 日本泌尿器内視鏡学会 代議員 日本性感染症学会 代議員 日本泌尿器内視鏡学会 腹腔鏡技術認定医 日本内視鏡外科学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医 医学博士(平成1年 神戸大学) 緩和ケア研修会 修了 第24回日本Endourology・ESWL学会オリンパス賞受賞 |
田口 功(たぐち いさお)
役職 | 第二部長 |
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卒業年 | 平成3年 |
資格等 | 日本泌尿器科学会 指導医・専門医 日本臨床腫瘍学会 暫定指導医 日本泌尿器内視鏡学会 腹腔鏡技術認定医 日本内視鏡外科学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医 医学博士(平成10年 神戸大学) 緩和ケア研修会 修了 臨床研修指導医講習会 修了 |
奥野 優人(おくの まさと)
役職 | 医員 |
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卒業年 | 平成18年 |
資格等 | 日本専門医機構認定 泌尿器科専門医 日本泌尿器科学会認定 泌尿器科指導医 日本泌尿器内視鏡学会 腹腔鏡技術認定医 日本内視鏡外科学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医 日本泌尿器内視鏡学会 代議員 ICD(インフェクションコントロールドクター) 産業医選任資格 日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会 ストーマ認定士 緩和ケア研修会 修了 手術支援ロボット「ダヴィンチ」術者認定 |
角井 健太(すみい けんた)
役職 | 医員 |
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卒業年 | 平成20年 |
資格等 | 日本泌尿器科学会 指導医・専門医 日本泌尿器内視鏡学会 腹腔鏡技術認定医 医学博士(平成29年 神戸大学) 日本アンドロロジー学会 評議員 生殖医療専門医 緩和ケア研修会 修了 手術支援ロボット「ダヴィンチ」術者認定 |
河村 駿(かわむら しゅん)
役職 | 医員 |
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卒業年 | 平成27年 |
資格等 | 緩和ケア研修会 修了 |
山下 遥介(やました ようすけ)
役職 | レジデント |
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卒業年 | 平成28年 |
資格等 | 緩和ケア研修会 修了 |
三浦 隆大(みうら たかひろ)
役職 | レジデント |
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卒業年 | 平成30年 |
資格等 | 緩和ケア研修会 修了 |