消化器がん診療、内視鏡治療、肝疾患診療の三本柱
-スキルとヒューマニティーを追究し地域高度医療をリードする-
消化器内科は、内科の中でも扱う臓器が最も多く、検査や治療手技も多岐にわたっています。今後、医療のさらなる高度化や医療現場における人工知能(AI)活用の加速化が予測される中、当科はスキルとヒューマニティーを追究するとともに、消化器がん診療、内視鏡治療、肝疾患診療を診療の三つの柱に据え、それぞれの領域にエキスパートを揃えた体制で地域の高度医療をリードする役割を果たしています。
2023年4月から10名の常勤医と6名のレジデントの合計16名のメンバーが、それぞれの患者さんに向き合って、適切な高度医療の提供に取り組んでいます。消化器疾患は是非当科にご相談ください。
1. 消化器がん診療
-ガイドラインに基づき集学的治療で予後を改善する-
当院は日本消化器病学会の認定施設で、地域がん診療連携拠点病院に指定されています。消化器がん全般にわたり、ガイドラインを基本に新規医療情報も採り入れ、複数の診療科で合同検討会(キャンサーボード)を開催して適切な治療法を選択するとともに、多くの医療スタッフが協同してチーム医療を行っています。太田と岩本は日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医で、当科の8名ががん薬物療法専門医または日本がん治療認定医機構がん治療認定医の資格を取得しています。
食道がん、胃がん、大腸がんは内視鏡治療や手術の適応がない症例でも、生活の質(QOL)や栄養管理にも注意しながら、抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬による薬物療法や化学放射線療法で予後改善を目指しています。膵がん、胆道がんは、複数の画像検査で進行度を正確に評価し、閉塞性黄疸を生じた患者さんには内視鏡的または経皮経肝胆道ドレナージやステント留置術施行後、集学的治療に取り組んでいます。膵の腫瘍などには超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)を用いて確実な組織診断を行うようにしています。
肝がんでは、内科的局所治療のラジオ波焼灼療法(RFA)、エタノール注入療法(PEIT)に加え、腹腔鏡下肝部分切除、経カテーテル的治療(動脈化学塞栓術、動注化学療法)、分子標的薬および免疫チェックポイント阻害薬などの薬物療法を順次または組み合わせて行っています。
2. 内視鏡治療
-新規機器・技術の導入で確実な治療を-
当院は日本消化器内視鏡学会の指導施設で、当科には日本消化器内視鏡学会指導医5名、専門医5名が在籍しています。2012年2月の内視鏡センター完成以降、鎮静下での内視鏡検査に対応可能となるとともに、VPPという内視鏡契約システムの採用で速やかに新規の機器が使用できるようになることで、充実した検査・治療がさらに安全かつ効率良く行えるようになっています。消化器症状のある方はもちろん、健診などで消化管の精査を指示された方や便潜血を指摘された方は内視鏡検査をお受けください。
早期の消化管がんに対する内視鏡治療は粘膜下層剥離術(ESD)が中心で、食道・胃・大腸いずれの部位に対してもESDを積極的に行っています。拡大内視鏡や超音波内視鏡(EUS)も用いて早期の消化管がんの確実な診断を行い、内視鏡カンファレンス、キャンサーボードで適応を判定し、一括切除による確実な治療を目指しています。ESD 以外にも内視鏡的ポリープ切除術、内視鏡的粘膜切除術(EMR)で治療した症例数も豊富であり、治療を要するポリープでも大きさや形態から安全と考えられるものは外来で切除しています。
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)、総胆管結石治療をはじめ、食道静脈瘤硬化療法・結紮術(EIS、EVL)、内視鏡的止血術も緊急例を含め多数行っており、消化管ステント留置術、ダブルバルーン小腸内視鏡や小腸・大腸のカプセル内視鏡も施行可能です。
特に超音波内視鏡(EUS)を用いた診断・治療手技の進歩はめざましいものがあり、主として膵・胆道系疾患に応用されてきています。当科でも積極的に取り組んでおり、EUSガイド下経消化管的ドレナージ(EUS-TD)やEUSガイド下胆道ドレナージ(EUS-BD)なども行っています。
2021年にはスパイグラス胆管・膵管鏡を導入し、胆道や膵管病変の診療をより高度に行えるようになりました。
コロナ時代の胃がん検診と治療について
新型コロナウイルス流行期における内視鏡検査に対する当院の方針と感染症対策、体に優しい胃がん治療、治療と仕事との両立支援などについてご説明しています。
「第35回関西ろうさい病院市民公開講座」令和3年3月14日にケーブルテレビで放送された内容になります。
3. 肝疾患診療
-肝炎から肝がんまで肝疾患のトータルマネジメントを-
当院は日本肝臓学会の認定施設で肝疾患専門医療機関にも指定されています。当科には日本肝臓学会指導医3名、専門医6名が在籍しています。
ウイルス性肝炎治療の進歩により、C型慢性肝炎の治癒率は100%近くに向上しています。「治せるものなら治す」との意思をお持ちになり、C型肝炎の治癒を目指しましょう。B型肝炎についても、治療目標や治療法は変わってきており、治療の必要性の判定や選択は経験豊富な専門医が行う必要があります。ウイルス性肝炎を治療することは発がん予防にもつながります。B型肝炎やC型肝炎といわれたら、当科に是非一度ご相談下さい。
ウイルス肝炎以外にも自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)など様々な肝疾患に肝生検を行い、フィブロスキャンによる非侵襲的肝硬度測定も併用して、病態の把握と適切な治療方針の決定に役立てています。
肝がんの予後を改善するには、早期発見、早期治療とともに、背景にある慢性肝疾患の治療も十分できなければなりませんが、当院であれば肝疾患のトータルマネジメントが可能であり、適切な治療を提供できます。
また、肝臓病への理解を深めていただけるよう看護師、薬剤師、管理栄養士と協同で肝臓病教室を定期的に院内で開催していますので、お気軽にご参加ください。(現在は新型コロナウイルス感染症の流行のため休止しています。)
上記以外の消化器疾患にも対応可能です。アルコール依存症などのアルコール関連疾患については、禁酒を継続することが極めて重要ですが、当院の診療体制での治療では「また飲める体をつくるだけ」となりますので、それぞれの患者さんの状態に応じて当院では継続診療せず、アルコール専門医療機関を受診していただくことがあります。
ますます急速に高度化する医療に対応できるように、学会活動、研究会や研修会への参加を通じて、新規の情報や技術を取り入れるとともに、資格取得や自己啓発によって各種のスキルアップを継続していきます。また、今後医療現場における人工知能(AI)活用も加速化していくと予想される中、「手当て」に代表される医療の原点を尊重して、高度医療とヒューマニティーの両立を図り、安全かつ適切で質の高い医療を提供させていただけるようスタッフ一同日々研鑽を積んでいます。消化器疾患については当科にご相談ください。
診療実績(2022年度)
2022年度も2020年度、2021年度と同様に新型コロナウイルス感染症の流行の影響を受けましたが、消化器内科の診療実績は徐々に回復傾向となってきています。
新入院患者数 | 2,180人 |
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上部消化管内視鏡 | 5,277件 |
大腸内視鏡 | 3,014件 |
内視鏡的消化管ポリープ・粘膜切除術 | 988件 |
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP) | 522件 |
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) | 231件 |
食道静脈瘤硬化・結紮術(EIS、EVL) | 55件 |
超音波内視鏡(EUS) | 275件 |
超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA) | 94件 |
カプセル内視鏡 | 23件 |
ダブルバルーン小腸内視鏡 | 21件 |
経皮経肝胆道ドレナージ術(PTBD) | 10件 |
肝悪性腫瘍へのラジオ波焼灼療法(RFA) | 27件 |
超音波ガイド下肝生検 | 79件 |
消化器内科の年間新入院患者数
入院患者の疾患分布
消化器内視鏡検査・治療数
内視鏡的消化管ポリープ・粘膜切除術件数
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)件数
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)件数
超音波内視鏡(EUS)及び
超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)件数
● 消化器内科学術業績 (PDFファイル)
消化器内科スタッフ
萩原 秀紀(はぎわら ひでき)
役職 | 副院長 消化器内科部長 医療連携総合センター長 |
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専門分野 | 消化器 |
資格等 | 日本消化器病学会消化器病専門医・指導医 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医・指導医 日本肝臓学会肝臓専門医・指導医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 日本内科学会認定内科医・内科指導医 日本医師会認定産業医 大阪大学医学部臨床教授 医学博士 緩和ケア研修会修了 |
伊藤 善基(いとう よしき)
役職 | 第二消化器内科部長 予防医療部長 医療情報部長 |
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専門分野 | 消化器 |
資格等 | 日本消化器病学会消化器病専門医・指導医 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医 日本肝臓学会肝臓専門医・指導医 日本内科学会総合内科専門医・内科指導医 医学博士 緩和ケア研修会修了 |
山口 真二郎(やまぐち しんじろう)
役職 | 第三消化器内科部長 |
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専門分野 | 消化器・消化管 |
資格等 | 日本消化器病学会消化器病専門医・指導医 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医・指導医 日本肝臓学会肝臓専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 日本内科学会総合内科専門医・内科指導医 日本消化管学会胃腸科専門医・指導医 日本カプセル内視鏡学会カプセル内視鏡認定医・指導医 医学博士 緩和ケア研修会修了 |
太田 高志(おおた たかし)
役職 | 第四消化器内科部長 第二腫瘍内科部長 |
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専門分野 | がん薬物療法・消化器 |
資格等 | 日本消化器病学会消化器病専門医・指導医 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医・指導医 日本肝臓学会肝臓専門医 日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 日本内科学会総合内科専門医・内科指導医 日本消化管学会胃腸科認定医 緩和ケア研修会修了 |
有本 雄貴(ありもと ゆうき)
役職 | 消化器内科副部長 |
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専門分野 | 消化器 |
資格等 | 日本消化器病学会消化器病専門医 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医 日本肝臓学会肝臓専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 日本内科学会総合内科専門医 緩和ケア研修会修了 |
水本 塁(みずもと るい)
役職 | 消化器内科副部長 |
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専門分野 | 消化器 |
資格等 | 日本消化器病学会消化器病専門医 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医 日本肝臓学会肝臓専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 日本内科学会認定内科医 産業医科大学認定産業医 緩和ケア研修会修了 |
須田 貴広(すだ たかひろ)
役職 | 消化器内科副部長 |
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専門分野 | 消化器 |
資格等 | 日本消化器病学会消化器病専門医・指導医 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医・指導医 日本膵臓学会認定指導医 日本胆道学会認定指導医 日本肝臓学会肝臓専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 日本内科学会総合内科専門医 医学博士 緩和ケア研修会修了 |
野﨑 泰俊(のざき やすとし)
役職 | 消化器内科副部長 |
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専門分野 | 消化器 |
資格等 | 日本消化器病学会消化器病専門医・指導医 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医 日本肝臓学会肝臓専門医・指導医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 日本内科学会総合内科専門医 日本医師会認定産業医 医学博士 緩和ケア研修会修了 |
井上 貴功(いのうえ たかのり)
役職 | 医員 |
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専門分野 | 消化器 |
資格等 | 日本消化器病学会消化器病専門医 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医 医学博士 緩和ケア研修会修了 |
岩本 剛幸(いわもと たかゆき)
役職 | 医員 |
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専門分野 | 消化器 |
資格等 | 日本消化器病学会消化器病専門医 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医 日本肝臓学会肝臓専門医 日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 日本内科学会認定内科医 産業医科大学認定産業医 緩和ケア研修会修了 |
レジデント | 川田 沙恵(かわた さえ)(緩和ケア研修会修了) |
髙橋 実佑(たかはし みゆ)(緩和ケア研修会修了) | |
田中 佳実(たなか よしみ)(緩和ケア研修会修了) | |
小池 侑紀仁(こいけ ゆきと)(緩和ケア研修会修了) | |
佐々木 健(ささき たけし)(緩和ケア研修会修了) | |
宮永 卓(みやなが たく)(緩和ケア研修会修了) |