診療科紹介
当院では1961年から外科部門にて心臓手術を開始、1974年に一旦中断した後、1983年4月に心臓血管外科部門を開設し手術を再開しました。2007年からは心臓血管センターを開設、循環器内科とハートチームとして多岐にわたる循環器疾患に対する診療を行ってきました。今後も当院の強力な循環器内科と共に、ワンチームで阪神地域の循環器疾患診療に取り組んでいきたいと考えております。現在、当科では心臓血管外科専門医3名と心臓血管外科レジデント1名の4名体制で診療にあたっています。
2020年には日本循環器学会の弁膜症治療ガイドライン、大動脈疾患治療のガイドラインが揃って改訂されたことにより、今後は経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)や右小開胸低侵襲心臓手術治療(MICS)の適応が広がっていくものと考えられています。我々もハイブリッド手術室の機能をさらに活用することにより、より多くの患者さんに貢献できるものと考えています。
学会施設認定
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- 三学会構成心臓血管外科専門医認定機構認定基幹施設
- 日本胸部外科学会教育基幹施設
- 胸部大動脈ステントグラフト内挿術(TEVAR)実施施設
- 腹部大動脈ステントグラフト内挿術(EVAR)実施施設
- 経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)実施施設
弁膜症に対する外科治療
僧帽弁閉鎖不全症に関しては従来から、可能であれば弁置換を行わず弁形成術を行っておりましたが、2021年より僧帽弁手術のみ行う症例については右小開胸による低侵襲心臓手術(Minimal invasive cardiac surgery=MICS)を導入しております。これにより、人工心肺は使用しますが、術後の疼痛の軽減や早期のリハビリなどの効果が期待できるものと考えております。
大動脈弁疾患に関しても、従来行われてきた胸骨正中切開による大動脈弁置換術に加えて、手術方法の選択肢が広がりました。手術リスクの高い患者さんには血管内から経カテーテル的大動脈弁置換術により治療を行うとともに、人工心肺を使用した手術でも僧帽弁手術と同様、可能な症例には右小開胸による大動脈弁置換術(MICS-AVR)を行う方針としています。用いる人工弁についても、縫合の必要がなく心停止時間の短縮が可能なRapid deployment valveを積極的に使用しています。
また心房細動を合併している症例では、これまでもメイズ手術を行ってきましたが、血栓形成、脳梗塞の発症を予防するため、左心耳を確実に閉鎖することが可能な左心耳クリップ(Atriclip)を積極的に使用しております。
虚血性心疾患に対する外科治療
狭心症、心筋梗塞などの冠動脈疾患に対しては循環器内科との十分なディスカッションの後、必要な症例に冠動脈バイパス術を行っています。患者さんの状態を考慮した上で、可能であれば人工心肺を用いない心拍動下冠動脈バイパス術(Off-pump Coronary Artery Bypass Grafting=OPCABG)を、緊急手術、低心機能例など人工心肺を使用したほうが、リスクが低いと判断した際には、無理をせず人工心肺使用下バイパス手術を行います。
また急性心筋梗塞後の機械的合併症である心破裂、心室中隔穿孔、僧帽弁乳頭筋断裂に対する緊急手術にも対応しております。
大動脈疾患に対する外科治療
大動脈疾患に対しては、ハイブリッド手術室の機能を活かして低侵襲なステントグラフト内挿術を積極的に行ってきました。 通常の大動脈瘤に関しては、胸部、腹部とも複数機種のステントグラフト実施医、指導医資格を取得しており、それぞれの動脈瘤の形状に合わせて適切なステントグラフトを使用できるようにしています。
大動脈分枝の距離が近い症例には、図のように分枝再建を併用してステントグラフトを留置しています。また分枝付きのステントグラフトが国内では認可されていませんが、可能な症例には開窓型のステントグラフトを使用し可能な限り血管内治療ができるよう工夫しています。 また、それでも解剖学的な理由で開胸が必要となる患者さんにも開胸手術用のオープンステントグラフトを用いるなどして可能な限り侵襲を軽減しています。
2020年度より大動脈治療のガイドラインが改訂されました。 A型の急性大動脈解離の症例に対しては従来通り、緊急での開胸手術が勧められています。一方、B型の大動脈解離については、合併症のあるものに加え、遠隔期に偽腔や大動脈径の拡大が予想される症例に対してもステントグラフト内挿術が推奨されており、これまでの降圧安静のみの治療より大きく進歩したと考えられています。
当院でもガイドラインを遵守し、救急疾患を含めそれぞれの患者さんに適した治療を行えるよう努めております。 また病状、治療についての質問がある方も、受診していただければ可能な限り説明させていただきます。
● 心臓血管外科学術業績 (PDFファイル)
診療実績
手術統計(全体)(2023年1月~12月)
Cardiovascular Surgery | 症例数 | 手術死亡 | 病院死亡 | 備考 |
---|---|---|---|---|
1. Congenital | 1 | 0 | 0 | 重複1 |
2. Valvular | 57 | 1 | 0 | 死亡(AVR1) |
3. Coronary artery disease | 21 | 0 | 0 | |
4. Vascular(胸腹部以上) | 52 | 6 | 0 | 死亡(破裂緊急6) |
5. Vascular(腹部骨盤) ※ | 60 | 0 | 0 | |
6. Vascular(末梢血管) | 23 | 0 | 0 | |
7. Cardiomyopathy, Myocarditis | 0 | 0 | 0 | |
8. Arrhythmia | 4 | 0 | 0 | 重複4 |
9. Others | 16 | 0 | 0 | |
Total | 229 | 7 | 0 |
※腎動脈下から腸骨動脈まで
Major Cardiovascular Surgery ※※ | 症例数 | 手術死亡 | 病院死亡 | 備考 |
---|---|---|---|---|
1. Congenital | 1 | 0 | 0 | 重複1 |
2. Valvular | 57 | 1 | 0 | 死亡(AVR1) |
3. Coronary artery disease | 21 | 0 | 0 | |
4. Vascular | 52 | 6 | 0 | 死亡(破裂緊急6) |
5. Cardiomyopathy, Myocarditis | 0 | 0 | 0 | |
6. Arrhythmia | 4 | 0 | 0 | 重複4 |
7. Others | 4 | 0 | 0 | |
Total | 134 | 7 | 0 |
※※Major cardiovascular surgeryとは人工心肺使用例 +OPCAB例
+Off pump Fontanおよび胸腹部以上のステントグラフト治療等とする。
別記:Endovascular | 症例数 | 手術死亡 | 病院死亡 | 備考 |
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1. TEVAR | 33 | 3 | 0 | 死亡(破裂緊急3) |
2. EVAR | 55 | 0 | 0 | |
3. TAVI | 30 | 0 | 0 |
スタッフ
北原 睦識(きたはら むつのり)
役職 | 部長 |
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資格等 | 三学会構成心臓血管外科専門医認定機構心臓血管外科専門医・修練指導者 日本外科学会外科専門医 日本ステントグラフト実施基準管理委員会胸部ステントグラフト指導医 日本ステントグラフト実施基準管理委員会腹部ステントグラフト指導医 経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)実施医 医学博士(平成30年 大阪大学) |
樋口 卓也(ひぐち たくや)
役職 | 第二部長 |
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資格等 | 三学会構成心臓血管外科専門医認定機構心臓血管外科専門医・修練指導者 日本外科学会外科専門医 日本循環器学会循環器専門医 日本脈管学会脈管専門医・研修指導医 日本ステントグラフト実施基準管理委員会腹部ステントグラフト指導医 日本ステントグラフト実施基準管理委員会胸部ステントグラフト指導医 医学博士(平成30年 大阪大学) |
中里 太郎(なかざと たろう)
役職 | 医員 |
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資格等 | 三学会構成心臓血管外科専門医認定機構心臓血管外科専門医 日本外科学会外科専門医 日本ステントグラフト実施基準管理委員会腹部ステントグラフト実施医・指導医 日本ステントグラフト実施基準管理委員会胸部ステントグラフト実施医 医学博士(令和4年 大阪大学) |
尾崎 達哉(おざき たつや)
役職 | レジデント |
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資格等 | 緩和ケア研修会修了 |