検査科

臨床検査精度保証認証施設として

検査科では、「常に患者さんの身になって」をモットーに、正確な検査結果を迅速に報告し、診療支援を行っている部門です。

臨床検査は、採血や採尿など採取された検体を対象とする検体検査と、心電図検査など患者さんに直に接する生理機能検査とがあります。検査科は医師2名、技師48名(部長1名、主任7名、技師40名)、助手1名を擁し、年間に検体検査(生化学・免疫、血液学、輸血、一般)435万件、微生物学検査4.3万検体、病理組織診8,679検体、細胞診7,176検体、生理機能検査8.5万件の検査を行っています。全ての技師は臨床検査技師の国家資格を有し、各種学会等の認定資格も多数取得しています。

診療支援においては、超音波診断装置を活用し、循環器領域(心臓、下肢血管、頚部血管)は年間13,000件以上、透析患者さんのシャントエコー検査は年間3,400件以上を行っています。また、血液製剤管理を含めた輸血業務では学会認定の輸血責任医師を擁し、24時間体制で輸血医療の安全性および効率化に貢献しています。病院感染対策においては、感染制御室と細菌検査室が連携をとり、医療関連感染防止対策活動を行っています。チーム医療として、糖尿病患者さんへの療養指導等を積極的に担当しています。

当検査科技師は、医学の進歩と共に新しい知識・技術習得のため各種学会や研究会等に積極的に参加し、チーム医療の一員として、先端医療を支える臨床検査を模索し、新しい試みに取り組んでいます。

診療方針

当院は 1. がん治療の強化 2. 救急医療の充実 3. 循環器治療の拡充 4. 整形外科治療の発展を中心に地域医療への貢献を目指しています。検査科においても病院の地域貢献の取り組みを勘案し、地域医療や住民サービスの視点に立つ様々な取り組みを方針に掲げて、組織改革につなげています。

1)患者サービスの精神

一日に約400名の患者さんの採血を行う上で、安全を第一に考慮し、『採血禁止肢やアルコールかぶれの有無、抗凝固療法(血液サラサラ)における服薬』などの確認を徹底し行い、さらに、『めまい、失神、気分不良』などの採血に伴う合併症に迅速に対応・処置が可能な体制を整備しています。

課題である採血待ち時間改善対策として、混雑時の技師増員対応、また、化学療法(抗がん剤治療)患者さんへの整理券番号配慮による優先採血を実施することにより、患者サービスに貢献可能となりました。

今後も患者さんへ迅速な検査結果報告がを行い、より良い医療の提供が出来るように努めていきます。

混雑時(9:00~10:00)患者さん待ち時間推移
曜日/年度 2021年度(分) 2022年度(分)
水曜日 39.5分 28.3分
木曜日 29分 21.6分
金曜日 29.4分 17.8分
2022年度 曜日別採血混雑状況
時間帯/曜日 月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
8:15~9:00
9:00~10:00 × ×
10:00~11:00
11:00以降

(✕:30分以上 △:20 ~30分 ○:10 ~20分 ◎:10分以内)

2)検査技術の向上

臨床検査に携わる全ての職員は国家試験である「臨床検査技師」の資格を有していますが、医療技術の進歩や専門化が進み、各専門学会においても高度な技術と信頼できる検査成績を提供できる技師に”〇〇認定検査技師”と呼ばれる資格制度を設置しています。当検査科の技師では32の認定資格(延べ71名)を取得し検査技術向上に努めています。

認定資格名称 資格取得者 認定資格名称 資格取得者
細胞検査士 6 超音波検査士(消化器) 5
細胞検査士(国際) 1 超音波検査士(循環器) 5
一級臨床検査士(血液) 1 超音波検査士(体表) 2
二級臨床検査士(血液) 8 超音波検査士(血管) 3
二級臨床検査士(臨床化学) 1 血管診療技師 3
二級臨床検査士(呼吸生理) 1 脳神経超音波検査士 1
二級臨床検査士(神経生理) 2 日本心エコー図学会認定専門技師 1
二級臨床検査士(循環生理) 1
二級臨床検査士(微生物) 1 日本臨床神経生理学会認定技師(脳波部門) 1
二級臨床検査士(免疫血清) 1
二級臨床検査士(病理) 1 認定病理検査技師 1
認定臨床化学・免疫化学精度保証管理検査技師 1 認定心電図検査技師 1
糖尿病療養指導士 1
認定輸血検査技師 5 緊急臨床検査士 3
認定血液検査技師 4 認定救急検査技師 1
認定骨髄検査技師 2 細胞治療認定管理師 1
認定臨床微生物検査技師 1 その他の資格 3
感染制御認定臨床微生物検査技師 1

3)医療安全の取り組み

1. 輸血関連業務

当院は救急体制の充実を掲げており、2022年度に於ける輸血用血液製剤(赤血球製剤)の使用は10,164単位中、18%が救急部で使用されています。超緊急時に対応する為、救急部と密な連絡体系を構築し、重症患者さんに対する安全な輸血療法の支援を24時間体制で行い、一元管理で対応しています。

また、多発性骨髄腫や悪性リンパ腫の患者さんに用いる自家末梢血幹細胞移植(PBSCT)における自家末梢血幹細胞の保管・管理やお腹に針を刺し腹水を抜き細胞・がん細胞・血球成分を取り除きアルブミンなどの有用成分が濃縮された腹水を点滴で戻す治療法(腹水濾過濃縮再静注法(CART))に用いる腹水の保管・管理も行っています。

診療科別血液製剤使用状況

赤血球製剤(RBC)総使用数

2. 患者誤認対応

入院患者さんにおいてはリストバンドを装着しているため、バーコードを読み取り患者情報を取得しています。また、検査時は必ず患者さんから氏名を名乗ってもらい患者確認を実施しています。

4)チーム医療への貢献

1. 感染管理

ICT(Infection Control Team:感染制御チーム)

医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師(微生物検査担当者)などの医療従事者及び事務担当者で構成されたICTでは、医療関連感染を未然に防ぐため、院内研修会の開催、院内ラウンド、地域連携病院とのカンファレンスや相互チェック、サーベランスなどを行うとともに、微生物検査室では抗酸菌塗抹検査やLAMP法による遺伝子検査を行い、院外から持ち込まれる結核などの伝播防止に努めています。また、検査科では、分離菌、薬剤耐性菌検出状況、薬剤感受性データなど院内ラウンドに必要な情報を提供してアウトブレイク防止に貢献しています。

抗酸菌検査件数
抗酸菌検査件数

尼崎市の結核罹患率は、全国平均や兵庫県と比べても高い水準となっています。
抗酸菌検査は年々増加傾向にあります。

AST(Antimicrobial Stewardship Team:抗菌薬適正使用支援チーム)

ICT内に設置されたASTでは、重篤な感染症診断で用いられる血液培養の解析を毎週一回行っています。検査科からは院内ラウンド資料を提供し、抗菌薬適正使用の推進に貢献しています。

血液培養件数 / 血液培養2セット採取率
血液培養件数血液培養2セット採取率

血液培養2セット採取率は毎年90%以上です。

2. 糖尿病療養指導

糖尿病療養指導のコメディカルスタッフとして、検査科からは糖尿病療養指導士を含む5名が参加し、難しい医療用語ではなく患者さんの立場に立ち、糖尿病とうまく付き合って重症化を防ぐために、テーマを工夫しながら説明を行っています。

糖尿病指導活動内容
活動内容 実績
カンファレンス 毎週火曜日
データ説明 年間32名
糖尿病教室 年間0名
糖尿病スクール 毎月0名

(2022年度は糖尿病療法指導活動を縮小、教室およびスクール開催は中止)

3. NST(Nutrition Support Team)

検査科では、週一回カンファレンス及びラウンドに参加し、栄養アセスメントに関わる臨床検査データの提供と説明を行っています。

臨床検査項目としては、患者さんの栄養状態を評価する際に重要な指標となるアルブミンやプレアルブミン、予後予測因子となるリンパ球や亜鉛などを測定しています。これらの値の経時的変化を把握しデータの解析を行うことにより、患者さんに効果的な栄養提供が行えるようになります。

NST活動内容
活動内容 実績
カンファレンス 毎週水曜日
指導患者 年間300名
NST委員会 月1回

5)専門性の高い検査

1. 循環器領域超音波検査(心臓、下肢血管、経食道)

当院では、ABL(心臓カテーテルアブレーション治療)を年間500件、EVT(末梢血管治療)を年間900件と全国でも高い治療件数を誇っており、それに伴い循環器領域だけで年間10,000件を超える超音波検査を行っています。

心臓超音波検査では、心臓弁膜症・虚血性心疾患、感染性心膜炎、心臓腫瘍等の評価、先天性心疾患と内容は多岐に渡っており、また、2019年からは左心耳閉鎖デバイスであるWatchmanデバイスの適応並びに術中術後評価のサポートも行っております。

また、近年高齢化や生活習慣病患者さん、透析患者さんの急増により、動脈硬化や糖尿病による足壊疽の患者さんが増加しています。そういった状態を包括的高度慢性下肢虚血(CLTI:Chronic Lumb-Threatening Ischemia)と呼ばれ、患者さんの予後は1年以内の死亡率25%と悪性疾患に匹敵するほど悪く、死因は下肢の潰瘍ではなく40-60%が狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患が原因と言われています。そのため、早期に全身血管性病変に対し、治療を行い生命予後の延長をはかることが重要です。そのため、CLTIでは他職種と共にチームを組み管理と治療を行う必要があります。下肢動脈超音波検査では、通常の末梢動脈疾患の評価に加え、足創傷周辺の血流評価を行うことにより、治療介入が必要であるか、そのタイミングを評価することにより、CLTIのチーム医療に貢献しています。

超音波検査件数

超音波検査件数

2. 皮膚組織灌流圧(SPP)検査

毛細管レベルの血液が、どれくらいの圧で流れているかを測定します。ABI検査との違いは、任意の場所で測定でき、足の末梢動脈疾患の診断には有用な検査です。

3. 肝硬度測定(肝臓の硬さを調べる)

医師と技師が協同してフィブロスキャンという専用装置を用いて、肝臓の硬さを測定しています。肝生検に代わる検査法と言われており、入院の必要も無く腹部エコー検査と同時に行うことができます。

4. シャント超音波検査

当院では、シャント(バスキュラーアクセスともいう)専門の外来を開設しており、近隣の基幹病院や透析クリニックからシャント作製前の血管評価や維持透析患者さんのシャントトラブルに対する原因精査の紹介を受け、積極的に超音波診断装置(エコー)を活用しています。検査件数も年々増加しており、現在では年間3500件以上の超音波検査を施行しています。

まず、血液透析を導入する前の準備としてシャントの作製が必要になりますが、どのタイプのシャントが、どの部位に作製可能か、の判断材料となる情報を提供しています。ご自身の動脈と静脈を吻合するタイプや人工血管を用いて作製するシャントなど、適切な術式を選択するための情報を提供しています。エコー検査は、痛みを伴うことなく、人体に影響のない安全な検査です。透析導入前の腎不全患者さんにおいては、造影剤が使用できないため、エコー検査が特に有用となります。検査時間は、観察する部位や範囲にもよりますが、平均して10分から15分程度になります。また必要に応じて両腕を検査することもあります。また、術前のみならず、術後の評価においても、エコー検査で血流がどの程度流れているかをチェックしています。

そして、シャントは一度作製すれば、一生涯良好な状態を維持できると思われがちですが、実際は、この先に続く長い透析生活において、さまざまな合併症を伴うことが多数あります。最も多いのが、動脈と静脈が吻合されている部分に狭窄病変が発現する症状です。この病変によって、透析に必要な血流量が確保できなくなり、良質な透析を行うことができなくなります。そのような臨床症状が出現した場合、エコーを使用してシャントを観察することで、血流の程度(血流量や末梢血管抵抗指数など)や狭窄および閉塞病変の範囲の情報を詳細に知ることができます。さらに、シャントの状態が不良である場合は、治療の術前評価として、使用するデバイスの参考になる情報(使用が予想されるバルーンカテーテルの太さなど)も引き出すことができます。このように、適切な時期に、適切な治療を判断できるエコー所見を提供することで、これらの情報が治療手技にも生かされ、より安全で効率よく治療を進めることに寄与しています。

その他、エコーガイド下PTA(経皮的血管形成術)においても、エコーを使用しています。可能な範囲で、造影剤を使用せず、カテーテル治療を行うことで、より人体に影響を与えない方法での治療に取り組んでいます。

これらに従事するエコー技師は、シャント外来専属であり、多くの症例を経験しています。このような環境を活かし、難易度の高い症例に対しても、適切に対応できるよう日々研鑽を積んでいます。

シャントエコー検査件数
シャントエコー検査件数

6)信頼できる検査データを提供するために

精度保証認証施設認定のお知らせ

当院検査科は、平成23年度より創設された社団法人日本臨床衛生検査技師会の臨床検査精度保証認証施設として認定されました。これは当院の臨床検査データの信頼性が極めて高いことを意味しております。

精度保証を行うためには、測定項目全てに標準物質を用いて管理しています。さらに機器のメンテナンスについても毎日行う事で、正確な信頼できる臨床検査データであるかを日々モニターしております。

「認証施設基準」について

診療実績

院内で検査を行なっている検体検査は234項目になります。年間の検査数は、尿・糞便検査8.8万件、血液学的検査66.8万件、生化学的検査368.1万件、免疫学的検査30.1万件です。生理検査は37項目あり超音波検査件数は2.5万件、心電図検査は3.7万件、その他の各検査についても御紹介患者さんの増加、救急患者さんの増加、手術件数の増加等に連動し、年々増加傾向にあります。

将来計画

当院は救急部、ICU、CCU、HCUと重症患者さんを扱う部門があり、生化学、血液検査検体等が検査科に24時間届けられ、60分以内に検査結果の報告を行っています。救急医療へはもちろんのこと、ますます進歩している高度な医療技術へ、検査データとともに付加価値のある情報提供を行っていきたいと思っています。

また、国際標準化機構が定めている臨床検査に関する国際規格の認定を目指しながら、臨床検査の精神である「大量検体」を「早く」そして「正確に」報告することを掲げて整備計画を行っていきます。

 

中央検査部学術業績 (PDFファイル)

スタッフ

橋本 光司(はしもと こうじ)

部長:橋本 光司

役職 部長
資格等

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吉村 道子(よしむら みちこ)

吉村 道子

役職 第二部長
資格等

詳細はこちら

村橋 重樹(むらはし しげき)

村橋 重樹

役職 中央検査部長
(技師長)
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